農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】原点に立ち農林水産業と地域・環境に貢献 農林中金・奥和登理事長に聞く(1)2022年10月12日
「国消国産」を広めるには国民理解、国民運動が大切だと、農林中金の奥和登理事長。JAグループの一員として農林水産業の原点に立ち返って金融面でのサポートに力を入れると話す。来年の100周年も見据えてめざす姿を聞いた。(聞き手は作山巧・明治大学教授)
農林中金 奥和登理事長
分断される世界見据えて
作山 農業者にとって生産資材価格の高騰の影響がかなり深刻になっています。日本の農林水産業に与える影響についてはどのように捉えていますか。
奥 もともと担い手不足や農地の減少などで構造的に生産力が弱っているところに、第一波として気候変動が襲ってきました。大雨や台風で本当に毎年のように被害にあっており、生産者からすると強烈なボディブローのようなパンチを浴びていると思います。その次の波がまさにコロナ禍です。人口が減少しているところに加えて、コロナ禍で相当需要が減り、単価も下がっています。
今回はそれに加えて、肥料、飼料、燃料という「3料高」で生産コストが上がりました。一方で、需要が減ったために単価は低い。つまり、入口と出口で大変苦労されているということだと思います。
私の心象風景的には、もともと強くなかった国内生産力という母屋に、根雪が二重三重と積もっているという印象です。なかなかこの根雪が溶けそうにないなか、母屋が潰れないようにどうするかだと思います。この30年続いたグローバリゼーションのなかで続いてきた、より安いものをより早く手に入れられるというトレンドは終わる可能性が高く、世界の分断が進めば、肥料・飼料・燃料の調達は非常に厳しくなっていくと思います。その意味ではこの第三波で積もった根雪は、なかなか溶けないのではないかと思っています。
コロナ禍にともなう需要減の部分は、この先、インバウンドを含めて変化があるかも知れませんし、輸出によって需要を拡大することはあるかもしれません。しかし、気候変動については、これは本当に長い取り組みになると思います。
国民運動と農業所得向上をサポート
作山 確かに厳しい状況ですが、一方で一般国民も含めてかなり危機感を持ち、食料自給や国消国産に関心が高まっていると思います。そのなかで農林中金として食料自給や国消国産にどう対応されるのでしょうか。
奥 ややもすると、生産者側から国産を食べるべきだというお仕着せや要請ということにもなりかねないため、国民理解、国民運動が大切だと思っています。全中はもちろん運動を先導しますし、全農は国産農畜産物を提供する主人公だと思います。そして、全農と農林中金は全購連時代から100年もの間、共に歩みを進めており、農産物というモノと金融は切っても切り離せない関係です。農林中金は、JAグループの一員として、農林水産業の原点に立ち返って金融面のサポートに取り組んでいきたいと思います。
それから肥料や飼料については、国民のみなさんからするとまだまだリアリティが少ないと思います。農産物を作るいちばん最初のところでいえば、肥料はほぼ100%海外に頼っているわけですし、飼料も海外のトウモロコシが中心だということになると、自分たちが食べている大元はほとんど海外に依存していることになります。それをこの機会にしっかり理解してもらうということだと思います。
作山 同時に農業生産基盤の維持・強化への貢献も農林中金には期待されると思います。その点で力を入れていることをお聞かせください。
奥 政策としてやっていただかなければならないことは多々ありますが、やはり国内農業が抱えている問題の根幹は農業者の所得が低いことではないかと思います。所得が低いから後継者がいない。後継者がいないから耕作放棄地が増える、ということになるのではないかということです。
したがって、非常に難しい課題ですが、少なくとも我々が取引をしている農業経営体の所得をいかに上げていくかということから、金融はどうあるべきかを考えていくということが重要です。
それは単に融資だけではなく、出資や、販売先とつなげるというビジネスマッチング、農業経営の改善に向けたコンサル力の発揮も求められます。また、川上だけで捉えると市場規模は10兆円にしかなりませんが、食べる人のことまで捉えれば100兆円近くになるわけですから、バリューチェーン全体で考えて川下の利益を少しでも川上に持っていくという努力をしていくべきではないかということです。
農業者の所得については、1年ほどかけてどういう数字を追いかけていくのかを議論し、実際に取引先の農業法人などとも話し合いをしました。そのなかで大体固まったのが、農業者の営業利益と減価償却費、そして人件費です。それらが我々が付加価値をご提供したことで昨年とくらべて増えているかどうか。それをまずは追いかけてみようということです。
対象については、まずは農林中金がコンサルティングをしている農業法人の取引先を中心に始めようとしていますが、その次には投資先、融資先、将来的には地域のJAと取引のある農業者全体に輪を広げていければと考えています。
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