農薬 シリーズ詳細

シリーズ:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013

2013.06.07 
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[5]大豆の病害虫防除 病害虫の特性や地域の実態に合わせた効率防除を一覧へ

・紫斑病 開花2〜6週間ころに防除
・べと病 密植を避け風通しをよくする
・茎疫病 播種前に薬剤処理をする
・ハスモンヨトウ 幼虫が小さいうちに防除
・シロイチモジマダラメイガ サヤに入りこむ前に防除
・フタスジヒメハムシ 種子処理による防除を
・防除に役立つ新技術 地下水位制御システム「FOEAS」、種子消毒

 依然として水田転作の主要作物として大豆は重要な品目であるが、ここ近年は横ばいからやや減少の傾向が続いている(本文中、グラフ参照)。その要因は、水田を水田として使用できる飼料用米や米粉用米の作付が影響しており、畑地化に伴う苦労する面もあるようである。
 大豆は、排水の悪いほ場で栽培すると根腐れや病害によって被害を受けることが多いため、水田からの転作の場合は、まずはほ場の排水が鍵となる。また、病害虫については、地域毎に発生が異なるため、防除対策は地域での発生状況に合わせて組み立てる必要があるので、指導機関の防除指導や発生状況を十分に確認していただきたい。ここでは、主な大豆病害虫の特徴と防除上の注意点を紹介する。
 なお、防除薬剤の選定にあたっては「適用農薬剤一覧表」を参考に、適用病害虫、使用方法を確認して使用薬剤を選ぶとよい。一覧表には、希釈倍数などの使用方法詳細は省いてあるので、実際の使用場面では、農薬のラベルをよく確認して、正しく使用願いたい。

大豆の主要病害と防除法

紫斑病
◆開花2〜6週間ころに防除

紫斑病 大豆の子実に紫色の斑紋ができる病害で、発生すると品質の直接影響があるため、大豆の主要病害になっている。病原菌は、糸状菌(かび)であり、種子伝染するので、健全種子の使用が防除の第一歩である。発生の無いほ場から取った健全種子を用い、種子処理もきちんと行うことが大切である。なお、ベンゾイミダゾール系薬剤(「トップジンM」や「ベンレート」)を種子処理に使う場合、同薬剤に耐性をもった病原菌が発生している場合があるので、指導機関に確認し、もし耐性菌が発生している場合には、この系統の農薬は散布も含めて使わないようにする。葉には、褐色からやや紫色を帯びた濃褐色の病斑ができ、開花2週間から6週間ころ子実へ感染するので、農薬を散布する場合は、この時期を逃さずに防除する。結実期に気温が20℃くらいで雨が多いと発生しやすいので、このような気候の時は特に注意する。


べと病
◆密植を避け風通しをよくする

 水を好む糸状菌(かび)の仲間が病原菌であり、温暖で多湿な気候の時に発生しやすい。
 葉や子実に発生し、葉では初めに淡い黄白色の円形小斑点となり、だんだん融合して不整形の褐色病斑になる。
 他にも似たような病斑をつくる病害もあるが、べと病の場合は、病斑の裏に白色から灰色の綿毛状のかびが生えているので見分けがつく。子実には、白いかびがマット状に付着することがあり、この場合、特に黒大豆で品質の低下が大きい。被害作物の被害茎葉とともに越冬するので、被害植物は集めて焼却するようにしてほしい。
 また、種子にも寄生するため、発生の無いほ場から取った健全種子を使用する。窒素過多にならないように注意するとともに、できるだけ蜜植を避け、風通しをよくして湿度を下げるとよい。降雨が発病を助長するので、農薬は、できるだけ降雨の前に散布する。

茎疫病
◆播種前に薬剤処理をする

 地際部に水浸状の褐色病斑をつくり、苗立ち不良や、立枯れ、早期枯凋を起こして、収量、品質に大きな影響がある怖い病害で、近年全国で発生が増えている。病原菌は、べと病と同様に水を好む糸状菌(かび)の仲間であり、大雨や長雨後に多く発生する。このため、排水をよくし、高畝で栽培すると病害の発生を少なくできる。
 農薬防除では、発生する場所が、若い時期の茎葉の地際部でもあり、散布薬剤が効きにくい。そこで、近年では、播種前の種子にあらかじめ薬剤を処理しておき、その処理済種子を播種することで病害の発生を抑える薬剤が登場(「クルーザーMAXX」や「ボルテックスFS」など)し、好成績をあげているようである。この方法は、種子に一括して処理するため、ほ場で薬液散布する手間が省くことができ、労力面でもメリットがある方法として注目されている。ただし、発生状況や天候によって残効に差が出るので、病害の発生状況を常に監視し、必要に応じて追加防除を行ってほしい。地域によっては、亜りん酸肥料を使用することで苗立ちがよくなり、健全なダイズが多くなった事例もある。

その他の病害

 以上の他、葉焼病や黒根腐病、白絹病、菌核病、斑点細菌病などがあるが、これらの病害が発生する地域では、まずは病害の特性・地域毎の実態をよく把握した上で、指導機関の指導従って防除願いたい。 大豆の病害防除剤一覧

(表をクリックするとPDFファイルにリンクします。)

ハスモンヨトウ
◆幼虫が小さいうちに防除

ハスモンヨトウ 大きな被害を起こす大害虫で、ダイズの生育中期に大発生する。葉裏に卵塊を産みつけ、孵化した幼虫が集団で葉を食べて白く透けた白化葉となる。その後、幼虫は他の葉に移り、食害を続けて被害が大きくなる。幼虫は、成長すると40mm前後の体長となって、背中と体側に淡黄色、気門線の下には太い黄白線があるのが特徴である。
 8月頃から発生するが、地域によって発生時期や発生量が変動するため、その時期になったらほ場での発生状況に気を配り、発生が確認されたら、速やかに農薬散布を実施する。
 幼虫が大きくなると農薬が効きにくくなるので、小さい幼虫が固まっている白化葉が目立つようになった時期とその7〜10日後に農薬散布すると効率よく防除できる。

シロイチモジマダラメイガ
◆サヤに入りこむ前に防除

シロイチモジマダラメイガ 年に3〜4回は発生し、サヤ害虫として最も被害が大きい。サヤに産み付けられた卵から孵化した幼虫がサヤに食入して子実を食べ荒らす。サヤで成長し、サヤからサヤへと移動して、サヤ全部を食いつくされてしまうことも多い。蛹になる前にサヤに穴を開けて出てくる。このような生態のため、いったんサヤに入られてしまうと、防除が難しくなるため、サヤに入りこむ前に防除することが重要である。
 このため、産卵やサヤへの食入が多いサヤの肥大初期〜中期に徹底防除する。別の害虫のマメシンクイガも同様の生態を示し、この害虫は、サヤの肥大中期〜後期に防除するとよい。

フタスジヒメハムシ
◆種子処理による防除を

フタスジヒメハムシ 成虫は、ダイズのサヤの表面をナメるように食害し、茎葉や花にも加害する。
 特に、サヤの食害により子実に黒斑ができ、被害が大きくなる。
 幼虫は、ダイズの成長の源である根粒を食い荒らすため、ダイズの生育が抑制される。幼虫の段階での防除が重要なので、種子処理による防除か、粒剤の播種溝に施用する。

その他の害虫

 害虫も、地域によって発生する種類や時期が違うので、指導機関が出す防除指針などを参考にしながら、地域の発生状況に合わせて防除を組み立てていただきたい。

大豆害虫防除剤一覧

(表をクリックするとPDFファイルにリンクします。)

防除に役立つ新技術

地下水位制御システム「FOEAS」

 病害の項でもふれたが、病害も湿度が高い状態で発生が多くなり、水田転作でのダイズ栽培では、湿害に悩むことが多い。これまでは、この対策に決め手がなかったが、水田転作の湿害対策に貢献できる地下水位制御システム「FOEAS」が開発され、全国で利用が進んでいる。このシステムは、(独)農研機構と(株)パディ研究所が共同開発したシステムであり、従来の暗渠排水に地下水位を制御できる機能を加えたもの。
 地下水位を自在にコントロールし、乾燥時には地下灌漑、大雨時には自動排水することで、ほ場の水分を適正に保つことができる画期的なシステムである。先進導入産地での収量の拡大と安定に結び付いた事例も多く、高く評価されている。

種子処理による病害虫防除

 ダイズの種子に薬剤を塗りつけて乾燥させ、その薬剤でコーティング種子を播種し、発芽直後から発生する病害虫を防除しようというもの。
 この種子処理を使えば、ほ場での防除作業が大幅に軽減でき、労力面、効果の面でもメリットがある技術である。この処理ができる新規剤が登場しているが、その中でも「クルーザーMAXX」は、1剤で病害(茎疫病)と害虫(フタスジヒメハムシ、アブラムシ、ネキリムシ)を同時防除できる薬剤として評価されている。

大豆の作付面積推移

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