農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[8]水稲害虫の上手な防ぎ方2013年7月3日
・主な水稲害虫最近は中・後期防除を重視
・初期の害虫ウイルス病を媒介するヒメトビウンカに注意
・中・後期の害虫斑点米引き起こすカメムシ類
・田んぼが違えば発生害虫が違うことも
     今年の梅雨は、地域で雨の降り様も異なり、西日本ではなかなか田植えすらできないほど少雨な地域もあった。改めて農業が天候に左右されるリスクの大きい産業であることが思い知らされたが、毎年想定外の気候になるのは勘弁してもらいたいものである。
 近年は気候変動の影響もあってか、年ごとに多発生する害虫が異なることが多くなっており、想定外の発生により防除関係者が慌てる場面がたびたび起こっている。害虫は、気候の変動に合わせ、自分にとって丁度良い頃合いになった時に発生するので、従来とは異なった時期にピークが来ることが多い。このような場合、できるだけ多くの害虫に効果のある殺虫剤を予防的に使っておくといいのだが、どんな優れた農薬でも残効には限界があるので、やはり発生状況にニラミを効かせながら防除を組み立てる必要があるようだ。
 今回は、水稲害虫の上手な防除について取材し、整理してみた。
地域ごとに発生害虫の
種類・時期を把握して
散布適期見逃さず確実に
適切な害虫対策で高品質な米作り
主な水稲害虫
最近は中・後期防除を重視
 イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、ヒメトビウンカなど水稲の生育初期に発生する害虫は、近年普及が進んでいる育苗箱処理剤でしっかり防除できるので、最近ではあまり問題となることはなくなった。一部地域では、薬剤抵抗性害虫の発生によって育苗箱処理剤の効果が低下してしまったが事例もあるが、大部分の田んぼでは、上手に防除できているようだ。
 これに対して、中期や後期に発生する、カメムシをはじめとしたイナゴやニカメイチュウ、ツマグロヨコバイ、トビイロウンカ、コブノメイガ、フタオビコヤガ等が問題となっている。これらの害虫についても、効果のある育苗箱処理があり、発生が少ない場合など育苗箱処理剤のみで効率よく防除できる例もあるが、害虫の発生が薬剤の残効期間を超えて発生が続く場合などでは、効果が不足し、追加防除が必要となる場合が多くなっている。このため、地域での害虫の種類や発生状況を常に把握しておき、速やかに対処できるように準備しておくことが何より重要である。
(写真は上から、イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ)
初期の害虫
ウイルス病を媒介するヒメトビウンカに注意
 イネミズゾウムシは、雑木林や堤防、畦畔などの雑草の株元で冬を過ごした越冬成虫は周辺のイネ科雑草を食べ、田植が始まると水田に侵入してくる。
 イネドロオイムシは、幼虫がドロの塊を背負っていることからこの名前がついた。寒冷地中心の害虫であるが、近年では暖地でも山間部を中心に発生している。
 この2つの害虫の被害はよく似ており、成虫と幼虫のどちらもイネの葉を食べて白くボロボロにする。どちらの害虫も幼虫の方が食欲旺盛で被害が大きくなる。
ヒメトビウンカはイネ科雑草で越冬
 ヒメトビウンカは、大き目の幼虫で越冬し、最初はイネ科雑草やムギ類をすみかとしているが、田植えが始まると広範囲の水田に飛来する。
 ヒメトビウンカは、稲縞葉枯病や黒条萎縮病などのウイルス病を媒介するので、害虫の吸汁による被害よりも、ウイルス病の被害の方が大きい。このため、保毒虫率などの情報には常に注意が必要だ。
(写真は上から、ヒメトビウンカ、トビイロウンカ)
中・後期の害虫
斑点米引き起こすカメムシ類
◆種類が多いカメムシ類
 中・後期に発生する害虫で最も防除が必要なのがカメムシ類である。
 出穂直後?固熟期前の柔らかい籾に吸汁針を刺して、汁を吸い、その刺した痕に菌が入るなどして斑点米を引き起こす。
 斑点米は、等級を下げる要因であるうえ、その基準が厳しいため防除が欠かせない。
 それに単にカメムシといっても種類が多く、近年の斑点米の原因カメムシとしては、小型のアカヒゲホソミドリカスミカメやアカスジカスミカメ、大型のクモヘリカメムシやトゲシラホシカメムシが主なものである。
 小型のものは、育苗箱処理剤や本田の粒剤処理でも防除が可能な場合もあるが、大型のものは育苗箱処理剤での防除は難しく、散布剤による防除が必要となる。
(写真はトゲシラホシカメムシ)
◆抵抗性トビイロウンカの飛来
ウンカ類ではトビイロウンカが被害の大きい重要害虫である。偏西風の変化が影響してか、近年は飛来時期が大きくずれたりする上、主要防除剤であるネオニコチノイド剤の抵抗性を持った害虫も飛来するようになっているので、薬剤選択の際には、ネオニコチノイド以外の成分を選択するなど注意が必要だ。
年ごとに違う蛾の発生程度
ガの仲間(チョウ目害虫)では、ニカメイチュウ、コブノメイガ、フタオビコヤガが主要害虫である。近年では、一部地域でフタオビコヤガが大発生して問題になるなど、年ごとに発生程度が変わることが多くなっている。可能なかぎり、広範囲に効果のある薬剤による防除を組み立てたい。
◆上手な薬剤の選び方
 近年の環境問題や薬剤使用回数制限の問題などから、病害と同じように害虫の場合も育苗箱処理剤を中心に据えることにより効率よく防除できるようになった。
 有効成分にも長期に効果が持続するものが多くなったので、それらの中から、害虫の発生状況に合わせて薬剤を選択すればよい。
(写真は、コブノメイガ)
◆初期害虫のみの地域では
 例えば、害虫の発生が初期害虫のみの地域の場合は、ベンフラカルブ(オンコル)剤やカルボスルファン(ガゼットなど)剤、カルタップ塩酸塩(パダン)剤を選べばよい。
 初期害虫に加え、トビイロウンカを抑えたい場合は、残効の長いネオニコチノイド(アドマイヤー、ダントツ、スタークル、アクタラ)剤を選べばよい。
 これにチョウ目害虫も問題になるようであれば、フィプロニル(プリンス)剤やクロラントラニリプロール(フェルテラ)を含む薬剤を選ぶ。
◆小型と大型では防除が異なるカメムシ類
 ただ、厄介なのはカメムシ類だ。育苗箱処理でカメムシにまで効果を示す薬剤は、いずれもネオニコチノイド系薬剤のジノテフラン(スタークル)剤、クロチアニジン(ダントツ剤)、チアメトキサム高濃度(アクタラ)である。
 これらの育苗箱処理で効果が発揮されるのは、どちらかというと小型カメムシ中心で、大型カメムシへの効果は期待が薄いとのこと。
 このため、大型カメムシが問題となる地域では、育苗箱処理で大型カメムシ以外を防除し、大型カメムシには専用の防除が必要となる。
 大型カメムシ用の薬剤としては、エチプロール(キラップ)剤やエトフェンプロックス(トレボン)剤、MEP(スミチオン)剤に定評がある。
◆田んぼが違えば発生害虫が違うことも
 このように、様々な場面に対応できるだけの数の薬剤が普及しているが、似たような薬剤がたくさんあって、その選択には苦労する場面も多いだろう。そういった場合は、よく地域での害虫の発生状況を把握した上で、試験結果や先行事例などをよく吟味し、その地域で実績のある薬剤や新規剤を中心に選択するようにするとよいだろう。ただし、その場合は抵抗性害虫の状況などを指導機関から入れておくことも忘れないでいただきたい。
 ただ、困ったことに、同じ町内であっても田んぼが違えば害虫の発生が違うこともあるので、個々の農家からも発生情報を仕入れておくようにしてもらいたいものである。
育苗箱処理を中心に
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