すべての遺伝子組み換え食品の表示を生活クラブが意見書提出 2018年2月19日
遺伝子組み換え食品表示検討会(消費者庁)はこの3月末までのとりまとめを目指しているが、「すべての遺伝子組み換え食品を義務表示の対象とすべき」だと主張している生活クラブ生協連は、遺伝子組み換え表示制度をめぐる現在の動きに大きな懸念を持ち、消費者庁と検討会座長・委員あてに意見書を提出したと2月14日に公表した。
生活クラブは「検討会の現在の議論は、遺伝子組み換えの義務表示の対象を拡大しないまま、『遺伝子組み換えではない』と表示するための条件は遺伝子組み換え不検出とする方向ですすんでいる」と、現在の状況に懸念を抱き、「すべての遺伝子組み換え食品を義務表示の対象とすべき」との意見書を提出したという。
意見書の全文は以下の通り。
「遺伝子組み換え食品表示に関する生活クラブ連合会意見」
●はじめに
消費者庁が主催する遺伝子組み換え食品表示検討会が、2017年4月より開催され、2017年度内のとりまとめが目指されています。 現在すすんでいる議論に対して、生活クラブ連合会は大いに懸念をもっており、次のように意見を表明します。
●すべての食品を義務表示の対象とすべきです。
現在は、遺伝子組み換えされたDNAやそれによって発現したタンパク質が最終製品から科学的に検出できる食品のみを表示義務の対象としているため、食用油、果糖、ブドウ糖、液糖など遺伝子組み換え由来の原料が加工食品などに幅広く使用されているにもかかわらず、消費者の知る権利が阻害されています。
今後の表示制度は、科学的検証が可能な場合のみを義務対象とするのではなく、トレーサビリティ(社会的検証)を根拠とすべきです。社会的検証は、2017年4月26日に開催された第1回遺伝子組換え表示制度に関する検討会で消費者庁から示された資料「遺伝組換え表示に係る分別生産流通管理等の実態調査の概要」にあるように、事業者によってすでに実践されているものです。また、すでに施行されているすべての加工食品の原料原産地表示の義務化においても、社会的検証は国が定めた方法とされています。
遺伝子組換え表示制度検討会の中では、社会的検証にもとづく制度はモラルハザードにつながるという意見が複数の委員から聞かれました。悪質な偽装表示は、これまで内部告発によって常に明るみに出ており、内部告発を助ける制度も確立しています。偽装表示が見つかった場合の罰則を設けることで解決できる問題と考えます。
また、今後上市が想定されるゲノム編集などの新たな遺伝子改変技術も、表示義務の対象とすべきです。
●「意図せざる混入率」見直しにあたっては、可能であればより低いレベルを検討すべきです。
意図せざる混入率の引き下げの可能性について検討すべきです。それにあたっては、「遺伝組換え表示に係る分別生産流通管理等の実態調査」の結果を踏まえ、すでにIPハンドリングを実践している事業者の混入率のデータを精査して、可能であればより低いレベルとすべきです。
●「遺伝子組み換えでない」表示をするための要件は、「混入率がゼロあるいはゼロに近い」という厳しいものとするのではなく、意図せざる混入率の上限までの混入がある場合も、「遺伝子組み換えでない」表示を認めるべきです。
「遺伝子組み換えでない」と表示する場合の混入率は、ゼロあるいはゼロに近い厳しいものとすべき、という意見が多くの委員から出されています。上述の資料「遺伝組換え表示に係る分別生産流通管理等の実態調査の概要」からもわかるように、IPハンドリングを適切に行なったとしても、残念ながら意図せざる混入はある程度避けられません。混入率の上限をゼロあるいはゼロに近いものとするならば、市場から「遺伝子組み換えでない」という表示が姿を消す可能性が高い一方で、意図せざる混入によって「遺伝子組み換え」と表示される食品が現れます。
遺伝子組み換え由来の原料100%の食品とIPハンドリングを行なって数%しか含まない食品のいずれもが「遺伝子組み換え」と表示されることになれば、志ある事業者によて維持されているIPハンドリングは商流から駆逐される結果を招き、遺伝子組み換え食品をできるだけ避けたいと考える消費者にとっては、選択の機会が奪われることになります。
そのような状況を避けるために、適切にIPハンドリングがされている原料を使った食品についても、「遺伝子組み換えでない」表示がこれまでどおり認められるような制度を要望します。
(関連記事)
・ナタネなどで交雑はなし 平成28年度調査結果(18.02.08)
・日本農業に警鐘「日本のお米が消える」(18.01.31)
・日EU・EPAの合意、合意内容は??(17.12.21)
・生産性向上の研究開発に投資【スバーシュ マーカド(Subhash Markad) BASFジャパン(株)農薬事業部執行役員 事業部長】(17.12.19)
・「金のいぶき」と「花粉米」、2つの機能性米(17.12.11)
・種子法廃止「附帯決議」は気休めにもならない(17.10.05)
重要な記事
最新の記事
-
不測事態の食料確保、スマート農業法など3法案 衆院で審議スタート2024年4月25日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2024年4月25日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 鳥取県2024年4月25日
-
【注意報】ウメ、モモ、などに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 和歌山県2024年4月25日
-
【特殊報】キュウリに「キュウリ黄化病」府内で初めて確認 京都府2024年4月25日
-
電動3輪スクーター「EVデリバリー」JA豊橋に導入 ブレイズ2024年4月25日
-
ほ場作業の約9割を自動化するオートコンバイン「YH6135,A7135,A」発売 ヤンマー2024年4月25日
-
むらぐるみの共同労働【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第288回2024年4月25日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「農村は国の本」~焚書として消された丸本彰造著『食糧戰爭』が復刻された2024年4月25日
-
【JA人事】JA水戸(茨城県)新組合長に園部優氏(4月21日)2024年4月25日
-
【人事異動】フジタ(4月1日付)2024年4月25日
-
米麦水分計PB-Rを新発売 ケツト化学2024年4月25日
-
全国の小学校・児童館に横断旗を寄贈「7才の交通安全プロジェクト」こくみん共済 coop2024年4月25日
-
自然とふれあう農業体験 伊勢崎市で27日に開催 パルシステム群馬2024年4月25日
-
野菜の鮮度保持袋で物流2024年問題解決へ「JAGRI KYUSHU」に出展 ベルグリーンワイズ2024年4月25日
-
粉末化でフードロス解決に挑戦 オンラインセミナー開催 アグリフューチャージャパン2024年4月25日
-
長期保存食「からだを想う野菜スープ」シリーズ新発売 アルファー食品2024年4月25日
-
生産者と寄附者が直接つながる「ポケマルふるさと納税」が特許取得 雨風太陽2024年4月25日
-
焼けた香りや音に満足感「パンの食習慣」アンケート実施 パルシステム2024年4月25日
-
埼玉県産いちごの魅力を伝える「いちごソング」が完成2024年4月25日