夏休み特別企画「びん牛乳の今と未来」小学生親子が、猛暑の酪農現場で体験学習2025年9月10日
西日本を中心に全国16の生協で構成されるグリーンコープ共同体は8月23日、体験型学習イベント「びん牛乳の今と未来」を開催。親と小学生の子ども22人が猛暑のなか、酪農の現場を体験した。

当日は快晴で、大分県中津市耶馬渓町の最高気温は36度に達した。農場の牛舎では大型扇風機が回り続け、牛の体調管理が行われるなか、参加した小学生と家族22人は搾乳を行った。暑さのなかで作業を進める子どもたちに対し、農場の責任者・伊原忍さんは「なぜ扇風機が欠かせないのか」「飼槽を清掃することが牛の健康にどうつながるのか」と説明し、参加者は実際に作業を体験しながら、現場の工夫とその背景を学んだ。
続いて行われた子牛へのミルクやり、親牛への餌やりでは、親子や兄弟が声を掛け合いながら作業を進め、親が手を添えてミルクの入ったバケツを支え、子牛の口へ飲み口を近づけて飲ませた。子どもからは「最初はこわかったけど、エサをいっぱい食べてくれて楽しかった」と感想があり、保護者は「普段飲む牛乳が違って見える」との声も寄せられた。
循環型社会を学ぶ工場体験
牧場体験の後はグリーンコープミルクのびん牛乳工場へ移動。リユースびんの投入や、出来上がった牛乳をクレート(運搬用ケース)ごと冷蔵庫に保管する作業を体験した。「びんを洗って繰り返し使うことが環境負荷の低減につながる」「最後の工程を担う責任感が品質を守る」といった解説があり、参加者は作業と学びを結びつけて理解を深めた。
今回の企画の背景には、日本の酪農を取り巻く厳しい状況がある。帝国データバンクによると、2023年度の酪農業者の約4割が赤字経営。飼料高騰や電気代・人件費の上昇に対し、牛乳価格の引き上げが追いつかず、経営を断念する生産者も少なくない。特に乳用牛の配合飼料は2020年比で1.4倍まで高騰した。
一方で、びん入り牛乳は学校給食や宅配で長く親しまれてきたが、大手メーカーによる販売終了が相次いでいる。明治や森永乳業、小岩井乳業などがびん商品の終売を発表し、びん牛乳の存続自体が危機にある。
びんの回収・洗浄・乾燥といったリユースには大規模な設備と人件費が必要だが、環境負荷の低さや「味を損ねない品質保持」などびんならではのメリットは、他に代えがたい価値がある。
グリーンコープはこうした状況を背景に、「共生・循環型酪農プロジェクト」を推進。安心・安全・安価でおいしいびん牛乳を安定供給する体制を整えている。
来春には、耶馬渓町に1000頭規模の乳牛を飼育する「耶馬渓ファーム」が開業予定で、餌、牧場、工場、流通が一体となった循環型農業の体制が整う。
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