愛媛県のみかん栽培収量向上へ スマート農業の実装検証を開始 IIJ2023年9月20日
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は、愛媛県の「令和5 年度愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト」に採択され、ICTを活用してみかん栽培の品質・収量の向上を推進するスマート農業実装プロジェクトを8月に開始した。実装検証では、温州みかん産地の愛媛県 真穴柑橘共同選果部会(真穴共選)と共同で、真穴共選のみかん畑240ヘクタール全体をカバーする LoRaWANネットワークを構築。このネットワークを通じて、畑に設置するセンサーで計測した土壌水分量データをクラウド上に集め、みかん栽培における品質および収量向上に効果的な値を分析・可視化することで、最適な栽培モデルの確立を目指す。
同社は、ネットワークやクラウド、セキュリティサービスなど各種自社サービスを活用し、製造業、農業、ホーム・見守りなどの分野で様々なIoT サービスやソリューションを提供。特に農業分野では、2017年から静岡県で実施した水稲栽培のスマート農業技術に関する実証事業をはじめ、そこで得られたLoRaWANの技術的知見やノウハウを活かして、全国の自治体で農業IoT の取り組みを積極的に推進している。
今回のプロジェクトは、8月から2024年2月までの実装検証期間、愛媛県八幡浜市真穴地区をフィールドにおいて、①低コストでみかん栽培の高度化を実現し、収量および収益向上に寄与、②果樹栽培におけるスマート農業ノウハウを獲得し、愛媛県全体、さらには他地域の果樹栽培にも横展開できるモデルを構築する、の2点を目的に実施する。
内容としては、真穴地区にLoRaWAN無線インフラを構築し、対象地区全域でセンシングが行えるネットワークを整備する。また、地形や土質などを見極めた上で、土壌水分センサー120個を園地に設置。各センサーのデータは、LoRaWANの基地局経由でクラウド上に収集し、アプリケーションで可視化・分析する。さらに、生育状態の分析を行うため、温湿度、雨量等を測定する、気象センサーを設置し、分析データに基づいた最適な灌水制御モデルを構築。収量の安定化を目指す。
果樹の収穫量が減少する主な原因となる土壌の過乾燥による落葉の発生を防ぐには、灌水により土壌の水分を適切に管理することが必要だが、現在は灌水の判断は生産者個人の経験や感覚に依存している。また、地区全体で土壌水分量を計測できるインフラがないため、乾燥地を優先してスプリンクラー灌水を行うことも難しい。
一方、真穴共選ではマルドリ方式(マルチ点滴灌水同時施肥法)を用いて、平均収量の2倍以上の収穫を実現している生産者がおり、これらの「匠の技術」を可視化することで地区全体の生産性向上を目指すというプロジェクトも進められている。
同システムを導入することで土壌水分量を可視化し、糖度をキープしながら収量を安定化させるための最適な灌水タイミングを把握することができ、減産のリスク回避が可能になる。一方、水分量を自身の積み重ねた経験・感覚で適切に管理し、安定した生産性を維持するベテラン生産者の"知恵"をデータ化して、地域で共有することで、スキル継承の一助とすることが可能になる。
さらに、LoRaWANには様々なセンサーを接続できるため、同プロジェクトでは土壌水分センサーの他、気象センサー、罠センサーを設置し、生育状況の把握、鳥獣害対策の罠監視などの実装検証も行う。
これらのセンサーや機器類の設置にあたっては愛媛県内の事業者と連携することで、現地の保守やサポートをより円滑に行うための体制を構築していく。
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