春肥 高度化成10%引き上げ 円安で原料価格高止まり続く JA全農2022年10月31日
JA全農は10月31日、2022(令和4)肥料年度春肥(11月~5月)価格の決定内容を公表した。
JA全農によると海外肥料原料市況は、円安を主な要因として原料の調達費が上昇したことから、春肥価格のうち、りん安と加里は秋肥対比で13%~31%の値上げとした。
一方、穀物相場の下落や端境期での需給緩和で尿素の国際市況は大きく軟化し、円安を加味しても値下げとなり、同▲9%とした。
ただ、国産の尿素や硫安については、原材料の天然ガスやアンモニア価格が上昇していることからメーカーと値上げで決着した。製造諸経費についても重油の値上がりを反映し一部で値上げとした。
春肥価格のうち、価格指標となる高度化成肥料(15-15-15)は10%の値上げとした。前回(秋肥)では55%の値上げと「過去に経験のない大幅な値上げ」となったが、今回もさらに引き上げとなった。JA全農は「海外市況の若干の軟化はあるものの、大幅な円安進行にともなってむしろ高止まりの状態が依然として続いている」という。円は10月21日に32年ぶりの151円台となった。米国の金融引き締め政策は当面継続される予想で日本との金利差の拡大でドル高円安基調で推移することが見込まれる。
同時に、肥料原料の国際市況は今後、高値圏での推移も見込まれている。
今回、尿素は国際市況が下落したが、中国政府による輸出制限の継続と、インド・ブラジルが今後は需要期となることと原材料価格の上昇を背景として上昇すると見込まれている。
りん安も中国の輸出制限の一層の厳格化の動きや、中国での電気自動車の普及によるバッテリー向けの工業用りん酸液の需要が増加し、原料となるりん鉱石の価格が高騰していることから、高値圏での推移が見込まれている。
塩化加里はロシアのウクライナ侵攻で市況が急騰した後、南米向けは市況水準が調整されたものの、東南アジアでは高止まりが続いており、円ベースでは円安の進行で上昇している。ロシアとベラルーシからの供給が滞るなか、インド、ブラジルなど大消費国が需要期に入ることから、高値圏で推移することが見込まれている。
JA全農は「必要なものを必要な時期に届けることができるよう原料と製品の安定確保に努めていくことを第一義に施肥コスト抑制のための手立ても進めていきたい」としており、▽肥料原料の安定確保、▽銘柄集約と農家予約の積み上げ強化、▽土壌診断に基づく適正施肥と堆肥など国内地域資源の利活用促進を進める。
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