生産資材:現場で役立つ基礎知識
【現場で役立つ基礎知識】全農土づくりセミナー総合討論から 水稲の高温対策へ基本は根張り重視(2)2025年4月3日
今年も啓蟄(けいちつ)が過ぎ、いよいよ春耕の季節がやってきた。近年は地球温暖化の影響か農作物の高温障害なども心配される。本格化する農作業前に「現場で役立つ基礎知識」として高温に強い稲を作るための土づくりセミナーを通した実践的な管理を探る。
有識者が実践農家に具体的事例などを交え講演会を実施
司会 金田先生の講演で、根を深く張らせることで環境ストレスに強い稲になるとのことでした。根を深く張らせるための一番のポイントは?
金田 一番は土性にあった耕し方が重要です。土壌中に酸素を多く供給できるような耕うん、代かきをする必要があると思います。ご自身の土壌を見て、触って、観察することが大事です。
司会 檜田さんの土壌の管理はどうされていますか?
檜田 3~5年に1回、パワーディスクで反転耕起します。通常の耕うんは2~3月に1回、4月に1回行います。代かきはロータリーで1回、ハローで1回です。
金田 かんがい水からも酸素が供給されますので、ある程度の透水性は必要で、反転耕起をされているのが効いているのかもしれないですね。
司会 「とよめき」のほ場の水持ちはいかがですか?
檜田 水持ちは良い方で、中干しまではそれほど頻繁に給水しないでも持ちます。
司会 事前にいただいた質問で、農家の方からは「なかなか土づくりの効果は見えにくい」JAの方からは「土づくりの重要性を説明しにくい」というコメントが多かったです。土づくりの効果を見える化するにはどうすればよいでしょうか?
金田 新潟県の試験場で開発された「銀メッキシート」は非常に有効だと思います。今までは水田でガスが湧いているのを観察するだけでしたが、銀メッキシートは写真で(土壌還元の様子を)残しておいて、収穫後の反省会で結果と突き合わせると実感します。銀メッキシートは6月下旬にほ場に埋設して、7月上旬に取り出します。この時、みんなで見て、根も掘り出して写真を撮影します。やはり見て、体で感じることが重要だと思います。
司会 農家の檜田さんが土づくりの効果を実感する時はありますか? すでに、多収日本一を取っている時点で実感されているのかもしれませんが。
檜田 正直なところ、なかなか分かりません。三田は牛ふん堆肥が手に入りやすく、田んぼにまくわけですが、施用初年目は逆にガスが湧いてしまったりします。ようやく3年くらい経って、この田んぼよく取れてきたな、と感じたりします。
司会 チャットでの質問を続けたいと思いますが、金田先生がおっしゃっていた「現場力を高める」という点ですが、若手の農家にはなかなか難しいので、サポートしてくれるシステムやツールがないかというご質問です。
金田 今、スマート農業ということでドローンや人工衛星といって、どうしても目線が上にいきがちですが、下の目線も重要です。そして、県、JA、研究者そして農家の横の連携、自県だけでなく他県との連携も大事なので、そこは全国組織の全農が頑張ってほしいです。
司会 「にじのきらめき」の倒伏耐性の話がありましたが、これは草丈が低いからなのか、稈(かん)が太いからなのか、または直根伸長など根系が関係しているのでしょうか?
石丸 根に関しては調べていないのでコメントできないのですが、茎に関してはやはり短稈であることが最も大きい要因だと思います。
檜田 今年、「にじのきらめき」を作って感じたことですが、わら自体は柔らかいのですが、太くて中の中空が大きいので倒れにくいのかなと思いました。「とよめき」は硬いのですけど。
司会 関連して、本日は土づくりの研究会ということで、金田先生も根の重要性を指摘されていました。作物からみて、高温耐性のある品種は根に特徴がある、養水分の吸収が旺盛であるとか根の伸長が良いとか、そういった形質は持っているのでしょうか?
石丸 地下部の高温登熟に対する影響というのはまだ、あまり分かっていません。
金田 「ふさおとめ」という高温耐性のある品種がありますが、「あきたこまち」と比較すると根は深く張りますし吸水力や活性が高いです。もしかしたら「にじのきらめき」などもそういった特性があるのかもしれません。
司会 そういった品種のポテンシャルを引き出すためにも土づくりによる根の健全化が重要ということですね。
一同 その通りです。
司会 加えて、冒頭に金田先生からあった通り、ケイ酸質肥料をまくにしても、それをしっかり吸収できる根をつくる必要があるという示唆をいただいたと思います。最後に、本日の感想や、全農や土づくり推進協議会に対する期待など一言ずついただけますか。
金田 現場の状況はそれぞれ違いますので、今まで以上に関係者が情報を共有・連携しながら、自分の「現場力」を磨くことが重要だと思いました。
石丸 気候変動に立ち向かうために何が必要か?とよく聞かれるのですが、それは「多様性」を確保することだと思います。一つの技術で克服することは困難で、いろいろな技術のつながりで克服していくことが重要かと。人のつながりも、研究者、農家、流通・加工業者、さらには消費者もつながれば良いと思いますが、皆がつながって米作りを考えることが重要だと思います。
檜田 土づくりも大事だと思いますが、それ以上に大事なのが仲間づくりだと思います。困ったときに相談できる仲間づくりが大事だと思います。
司会 技術の連携、人・組織の連携が重要ということで、キーワードは「連携」ということでまとめたいと思います。
司会 檜田さんの方から先生方にお聞きになりたいことはありますか?
檜田 JAさんから提案があって「にじのきらめき」という品種を今年から作っています。今年のほ場は風通しの良いほ場でしたがいもち病が出ました。原因がわからず困っています。
石丸 「にじのきらめき」はとりわけいもち病に強い特性ではありません。コシヒカリでも倒れるようなほ場ということですので、地理的な要因ではないかと思います。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日