コウモリの超音波でガの飛来抑制2016年9月5日
農研機構・果樹茶業研究部門は、農業害虫の「ガ」をキクガシラコウモリを模した超音波で飛来を6分の1に抑えることができると明らかにした。超音波が届くビニールハウスなどでの利用を検討しており、数年以内に製品化する予定。
農作物を加害するガの多くは耳を持ち、捕食者のコウモリの超音波に忌避行動を起こす。担当の主任研究員はコウモリに着目したことについて「ガの耳の進化はコウモリが地球上に出現した以降であることがわかっており、超音波を忌避することも知られていた。またアメリカでは農業害虫の防除にコウモリが有用であることが報告されていることも理由の一つ」という。
実験ではモモやクリを加害するモモノゴマダラノメイガを用いた。このガのメスは果実に卵を産み、孵化した幼虫が食害を起こすため、コウモリの超音波でメスの飛来を防除し、次世代の防除を行う。
ガを捕食するコウモリの、短い超音波パルス(モモジロコウモリを模倣)と長い超音波パルス(キクガシラコウモリを模倣)の2種類を聞かせた。
メス成虫の飛来は、何もしない状態で64%。短い超音波パルスで28%、長い超音波パルスのときが10%だった。コウモリの違いで飛来率に差があることについて同研究員は、超音波パルスと無音区間の長さの違いが起因すると話し、「少なくともノメイガ類に関していえば、どちらのタイプのコウモリが、より多くのノメイガ類を捕食するかが鍵となるのでは」と指摘した。 超音波のパルスの長さを適切に設定することでガの飛来を効果的に抑制できることがわかった。ノメイガ類だけでなく、他のガも超音波への忌避行動をとるため、適用が期待される。
ただし、超音波は遠くまで通りにくい性質があるため、果樹園のような野外で十分な効果を得るには、多くの超音波発生装置を設置しなければならず実用的ではない。そこで、少ない超音波発生装置で効果が得られる施設栽培でのガなどを対象として、超音波のパルスの長さを探索している。
この手法に適した超音波発生装置の開発を(株)倉元製作所、東北学院大学と連携して勧めており、数年以内に製品化する予定となっている。
(写真)ガの飛来を見る、飛来率。農研機構果樹茶業研究部門の提供
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