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2016.12.21 
今年の研究成果10大トピックス 飼料用米に適した「オオナリ」など一覧へ

農林水産技術会議

 農林水産技術会議事務局は、農業技術クラブの加盟会員による投票を得て、刈刃の開店を即座に止める機構の開発や飼料米に適した水稲新品種「オオナリ」の開発など「2016年農林水産研究成果10大トピックス」を選定した。

 これはこの1年間に新聞記事となった民間、大学、公立試験研究機関及び国立研究開発法人の農林水産研究成果のうち、内容に優れるとともに社会的関心が高いと考えられる成果10課題を農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など29社加盟)の加盟会員による投票を得て選定するもので、平成6年から実施されている。
 今年は該当する1181件の研究論文から事務局が56件に絞り、投票され選定された。

「2016年農林水産研究成果10大トピックス」に設定された10件とその概要は以下の通り。

【TOPIC1:刈刃の回転を即座に止める機構の開発-刈払機の刈刃との接触事故低減に期待】
 農研機構は、刈払機の作業中に転倒したり、刈刃が障害物や地面に当たった反動で跳ね返ったりした場合に回り続ける刈刃による事故を低減させるため、市販機への後付も考慮した刈刃停止機構を開発。刈刃に直接ブレーキパッドを接触させて制動することで、停止まで20秒以上要していた回転時間を約3秒に短縮でき、事故低減が期待される。

【TOPIC2:飼料用米に適した水稲新品種「オオナリ」を開発-10アール1トンの超多収に期待】
 農研機構は、飼料用米に適した水稲新品種「オオナリ」を開発。多収品種「タカナリ」の籾が落ちてしまうという脱粒性を改善することで、収穫期の損失が減少。粗玄米収量は、育成段階の多肥栽培で940kg/10aに達しており、これまででもっとも高いレベルの収量性を持っている。「オオナリ」の普及により、飼料用米の生産コストの削減が期待される。

【TOPIC3:光で天敵を集め、害虫を減らす技術を開発-化学農薬が効かないアザミウマの防除に期待】
 農研機構、筑波大学、(株)シグレイは共同で、特定の波長を作物に照射し、アザミウマの天敵であるハナカメムシを作物上へ誘引・定着させる技術を開発。紫色LEDを1日3時間作物に照射することで、天敵が最大10倍まで増加し、害虫を効率的に捕食させ防除することが可能となった。本技術による農薬散布の削減や薬剤抵抗性害虫の防除への効果が期待される。

【TOPIC4:コウモリを真似た超音波でガの飛来を阻害する技術を開発-環境に優しい物理的害虫防除が可能】
 農研機構は、農業害虫である「ガ」が嫌がる超音波のパルスの長さを明らかにした。ガをよく捕食するコウモリが発する超音波パルスを模した合成音を聞かせることで、ノメイガの農作物への飛来を減らすことができる。この方法により、ガの産卵を高効率に阻害することで化学殺虫剤の散布回数を削減し、環境負荷の少ない害虫防除技術の開発が期待される。

【TOPIC5:トマトの青枯病にアミノ酸が効くことを発見-新しい青枯病防除剤の開発に期待】
農研機構は、トマトの重要病害である青枯病の防除にヒスチジンやアルギニン、リシン等のアミノ酸が有効であることを発見。ヒスチジン等のアミノ酸に青枯病の原因である青枯病菌を直接殺菌する効果はないものの、植物の病害抵抗性を高め、発病を抑える効果があることを確認。作物の病害抵抗力を利用した青枯病防除剤の素材として期待される。

【TOPIC6:養豚農家で使える受精卵移植技術の実証に成功-伝染病侵入の危険が少ない種豚導入に期待】
 佐賀県畜産試験場は、農研機構動物衛生研究部門など5研究機関と共同で、一般養豚場に輸送した凍結保存受精卵を、開腹手術をせずに母豚に移植し子豚を生産することに成功。この技術の普及によって、受精卵での種豚導入が可能となる。種豚の移動が不要となるため、伝染病侵入リスクの低減や輸送の経費削減や省力化が期待される。

【TOPIC7:日本初のデュラム小麦品種「セトデュール」を育成-国産セモリナ粉で本格的なパスタを提供】
 農研機構は、日本初のデュラム小麦品種「セトデュール」を育成した。黄色みのあるセモリナ粉が取れ、スパゲッティではデュラム小麦特有の食感を示す。100%国産のデュラムセモリナを使用したパスタ製品の提供が可能となり、小麦栽培の拡大や地産地消、6次産業化への貢献が期待される。

【TOPIC8:野菜の品種開発を加速する新しいDNAマーカー育種技術を開発-開発期間3年でトマト新品種の育成を実現】
 タキイ種苗(株)は、高度なDNAマーカー選抜技術を駆使し、野菜の品種開発を大きく加速する新しい育種技術を開発。トマトでは複数の新しい耐病性を持ち農業形質にも優れた新品種開発が従来の半分以下の期間(3年程度)で可能であることを実証。多くの野菜品目で、新しい形質をもつ優良品種の高速育成が期待される。

【TOPIC9:ベータ-クリプトキサンチンで生活習慣病の発症リスクの低下を実証-ウンシュウミカンの消費拡大に期待】
 農研機構は、浜松医科大学、浜松市と合同で、ベータ-クリプトキサンチンを多く含むウンシュウミカンの摂取により、生活習慣病の発症リスクが低下することを明らかにした。既に表示が認められている骨の健康に役立つ機能に加え、新たな機能性表示に繋がり、ウンシュウミカンの更なる消費拡大が期待される。

【TOPIC10:自家受粉が可能なニホンナシ新品種「なるみ」を育成-人工受粉の省力化が可能】
 農研機構は、自分の花粉で受精し人工受粉が不要なニホンナシ新品種「なるみ」を育成。一般にナシは自分と同じ品種の花粉では実ができないが、「なるみ」は自分の花粉でも結実可能で、全国のニホンナシ産地で栽培可能であり、花粉調製が不要で人工受粉の省力化が可能な品種として普及が期待される。

 いずれも実用化されたりすぐ現場で使えそうな優れた技術だといえるが、投票結果によるランキングに関わりなく、本紙が注目したいのは、10a1tの収穫が期待できる飼料用米に適した「オオナリ」と、野菜の品種開発を加速する「DNAマーカー育種技術」そして養豚農家でも使える「受精卵移植技術」だ。
 「オオナリ」は、水田の利活用を進めるために、本格的に飼料米に取り組もうとする生産者にとって、生産コストを削減でき、収穫量を増大できることは魅力的ではないだろうか。
 「DNAマーカー育種技術」は、新品種開発が3年程度とこれまでの半分以下で可能となる技術で、耐病性品種や新たな機能性を持つ品種など、新しい形質をもつ優良品種の開発が期待できる。
 養豚の「受精卵移植技術」は、開腹手術をせずに母豚に凍結保存受精卵を移植し子豚を生産できる技術で、種豚移動が不要で、伝染病侵入リスク低減などで経費削減、省力化が可能となる。豚肉は、日欧EPA協定で注目されているが、米国の養豚業界も今後行われると予測されている日米二国間協定の目玉にしたいと考えているという。日本の養豚を守っていくうえでも大事な技術ではなかろうか。
 なお、各成果の詳細は「農林水産研究成果10大トピックス」のページでみることができる。

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