農・林・漁復権の戦い 1年9か月の軌跡
- 著者
- 鹿野道彦
- 発行所
- 財界研究所
- 発行日
- 2013年6月
- 定価
- 1680円+税
- 評者
- 原田康 / 農業協同組合新聞論説委員
政治家でしかも元大臣の書いた本を取り上げる書評者の見識を疑う、は承知であるがそれでもこの本は一読の価値がある。
農林行政トップの緊迫感伝わる
時代背景が、自民党から民主党へ、再び自民党への政権交代の時期であった。2011年3月11日の大災害、とくに原発事故。TPPでは参加の政治的な判断を求められた。このようななかで農林水産行政の最高責任者がどのような判断、行動をとったかは歴史的な資料でもある。
主要な論点をまとめると次のようになる。○農業における女性の地位を評価して政策に反映をする具体策を作った。
○3.11の原発事故では“原子力ムラ”は「原発で事故は起きない」という前提であったため、事故を想定した対策はタブーだった。放射能に汚染されたコメ、野菜、果実、牛肉、海産物、林産物の出荷制限をするための基準値から決めるという実態であった。さらに、行政の災害支援は国ー県ー市町村のタテ線で、県から国への要請から始まることになっていた。しかし、県や市町村の役所は壊滅状態。国も全ての省庁が関係するため、待ったなしの緊急事態にどのように対応するか、トップの判断、行動力が問われる事態であった。
○TPPは日本が参加表明をするかの政治判断が求められた時期で「参加を前提にした協議には入らない」ということを決めた鹿野大臣、官邸の緊迫したやり取りが書かれている。
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