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【コラム・キサクな老話】昆虫の行方はいずこに2013年8月27日

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【佐藤 喜作】

 春先に待つのがツバメであった。わが家の作業小屋には3つの巣が作られており、ツバメが来ないと不吉だといわれ心配である、例えば火災の危険があるなどと言われていたものだ。
 しかしわが家だけではなく、ツバメを見かけなくなって30~40年にもなろうか。考えてみると、来なくなったのは当然である。生きるために、そして子育てに大事な昆虫がいなくなったのだ。

 思えば1960年代、家畜診療にオートバイで往診していたころは空中に小虫が浮遊し、目や鼻、口に入るので、メガネとマスクを忘れたら、運転出来ないものであった。
 家蚊(アカイエカ)、縞蚊(シマカ)も多く、蚊帳は必需品で、夕方には住宅に馬房もあるから、蚊燻し(かいぶし)で蚊を追い出すのだが、人間も参ってしまう。藁を焼いてそこに蓬(よもぎ)などの生草を掛けて、箕(みの)などで扇ぎ、煙を充満させ、作業着などで煙と蚊を追い出すのが日課であった。
 今では蚊取線香も不要になった。家蚊より縞蚊が痒みが強かった。外に出るとブユ(ブト蚊)の攻撃にさいなまれる。蚊に刺されると痒さに手が放せない。だから男は頬被りを手拭で、女はハンコタンナで武装する。ゴム手等がなかったから、手甲をつけて農作業である。ブヨはまだ少ないが生きているから、油断するとやられてしまう。
 虻(あぶ)も少なくなった。畜舎の中までは入ってこないが、牛馬が外に出ると何処からともなく飛んでくる。匂いなのか色なのかは解らぬが、この虻を嫌うのが馬で、気違いのように騒ぐ馬もいる。馬は牛よりも皮膚が繊細で薄い傾向がある。だから怯えるのかもしれない。
 虻で解らないのが、人間も狙われるが、とまっているのに、気が付かないことが多いのである。痒みで解り、撃ち殺そうと身構えると逃げられる悔しさ、そして吸われた後から出血するのである。またトラクターにも飛んでくる。特に赤い色には必ずとまる。吸う血もないのに。
 蝿(はえ)も見られなくなった。家蝿や特に腐敗を好む金蠅もいたものだ。途上国ではまだ多く見かけるが、韓国だったと思うが、蠅の蛆(うじ)を蛋白源に利用して、飼料や食糧の足しにする研究を見学したことがある。その時は気持ち悪い感じであったが、この発想も面白し。
 いま尾虫で重大問題が、特に西洋ミツバチの巣箱崩壊と絶滅の傾向である。その原因がネオニコチノイド系の殺虫剤によるのではないかとの論もあるが、このミツバチが農業や自然界に果たす役割は途方もなく大きなもので、植物の受粉役では図抜けたものである。かすかな救いは日本ミツバチが西洋ミツバチよりは健在であることだ。
 ツバメからミツバチまできたが、昆虫の世界をもう一度根底から組み立て直すことも大事なことだと思うこの頃である。

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