【リレー談話室・JAの現場から】ふるさと守る農業2015年6月23日
兎追いし かの山 小鮒釣りし かの川 夢は今もめぐりて 忘れがたき故郷♪♪
童謡「ふるさと」を聞くと、私は、なんともいえぬ切ない気持ちになる。日本人なら、多くの方がそうではないだろうか。緑あふれる田園風景、川のせせらぎ、鳥のさえずり...。この日本の原風景と言える「ふるさと」を守ってきたのは、そこに生きる農家をはじめとする地域の方々である。
今、国は農業の成長産業化という旗印のもと、企業の農業参入や大規模農家への農地集積などを進めようとしている。確かにそれは必要なことではあるし、JAとしても企業的農家や担い手農家を支援していくことに異論はない。しかし、それら収益追求を第一義とする農業政策だけでは、「ふるさと」の風景を守ることはできない。
地方で、自然や景観を守っているのは、担い手農家はもちろんだが、高齢農家や兼業農家などの多様な人々である。地域全体の協同活動、集落単位の出役、個々の農家の農地管理が相まって、辛うじて維持できているのだ。
政府は兼業農家が成長産業化の障害であるかのような議論をしているが、そのように、条件不利地を損得抜きで管理できているのは兼業農家の力が大である。給与収入などの農外収入があるからこそ、損をしても先祖から受け継いだ農地をしっかりと管理し、周りの方々との協同活動に従事できているのだ。
企業的農業経営で農地集積を進め、その経営は収益性が高まり、国全体としての農業の成長はあるだろう。しかし、このまま極端な形で進められれば、きっと日本各地のふるさとの風景は崩壊する。現に、地方では子ども世代が都会に出て、耕作放棄地が増加しつつあり、集落共同作業も年々厳しくなっている。
わがJAは、全国でも一番元気と言われる福岡市に立地しているが、やはり農村地域では同様のことが起きている。あと10年経過したら、どうなっていくのか、大きな危機感を持っており、JAとしてなにができるのか思案しているところである。
一方、全国のJAは担い手農家や若き農業者の所得向上のため、営農指導や販売拡大に従前から努めており、農協改革で議論されていること自体ナンセンスである。当JAも31億円ほどに低下していた販売高を都市化が進むなかでも40億円まで回復させたのは、まさにその証左である。
さらに、JAは地域住民の拠り所として、民間企業が収益性に乏しいとして見向きもしない事業・活動を展開しているが、准組合員規制、ひいては信用共済分離などを強行されたら、地域がズタズタになるのは必至である。
JAは金融や販売・購買などの事業を総合的に行うからこそ、そして地域住民の利用があるからこそ経営が成り立つのであって、農業部門だけのJAでは赤字になるのは目に見えており、「営農指導は行政にお任せします」となるだろう。
これからもJAは農家・地域住民に寄り添いながら、農業・食料・ふるさと・地域を守り、まさに地方創生の中心でありつづけなければならない。
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