【リレー談話室・JAの現場から】歴史守り農を築く2015年9月3日
市内人口約147万人。東京都に隣接する地の利から、今なお人口が増加している政令指定都市川崎。地形はうなぎの寝床のように細長く、市内の様相は臨海部、都市部、里山の風景を持つ地に大別される。
今は工業地帯と化した臨海部では、江戸時代、のり漁が盛んに行われ「江戸前海苔」として出荷されていた。漁期以外では野菜栽培が営まれるなど、半漁半農が人々の暮らしであった。昭和30年代に入り、経済成長が進むにつれて埋め立てが進み、漁業権放棄を余儀なくされ、畑は工場へと変わっていった。
臨海部から離れた多摩川沿いでは果樹栽培が活況で、その広がりは川に沿って市全体へと広がった。その果樹のひとつに現在、市を代表する農産物の梨がある。発端となった長十郎梨は瞬く間に大衆に受け入れられ、もぎとり観光農園が一世を風靡した地域もあった。
東京に隣接するが故に経済成長の波は他地区にも広がり、多くの田畑が宅地化された。現在、市総面積に占める農地面積は約3.3%。販売農家戸数約700戸。年間農産物売上金額は24億円ほどで、都市農業の姿そのものだ。
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しかし、生産者は長年、何代にもわたって引き継がれてきた技術を駆使し、幾人もが農水大臣賞を受賞するなど、川崎農業を健在ならしめている。販路も市場出荷中心からJAファーマーズマーケットや量販店、飲食店への出荷、個人・グループ直売で地域の人たちに供給している。生産過程において苦労はあるが、「消費者との距離が近い」という地の利を生かした販売は功を奏している。
また、新鮮な農畜産物の供給のみならず、歴史ある農産物の保存にも力を入れている。そのひとつが日本最古の甘柿と言われている「禅寺丸柿」だ。樹が発見された麻生区王禅寺の地を中心に農家にとって欠かすことのできない、生活を支えた農産物だ。どこの家にも樹が植えられ、秋には小さくまん丸な柿が村を彩った。
市場でも重用されたが、嗜好の変化とともに富有、次郎柿が主流となり、市場から姿を消した。20年前、同地域の農家は保存会を設立し、ワイン醸造・販売でのPR活動や市内公共施設への植樹など、維持・普及に努めている。
さらに、畑を一般に公開し、地域住民や飲食店と連携したフェス開催や、積極的に農業体験を受け入れる農家もあり、農地が自然と地域に存在しているとの意識付けを行っている。
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今般、都市農業振興基本法が施行されたが、具体的な内容はなく、理念ともいえる範疇だ。農協改革議論による「農家所得向上」の論議も激化している今日、都市という環境のなか、歴史ある農産物を守り、高い技術を継承し、地域一体となった取り組みは大きな意義を持つ。
JAでも生産者と消費者がふれあう場、農業情報発信拠点であるファーマーズマーケットの展開を積極的に進め、今年10月27日には2号店目となる店舗をオープンさせる。連日の賑わいは地場産農畜産物への関心の高さをうかがわせ、農家の生産意欲、所得向上を牽引している。食農教育事業でも次代を担う世代や市民へ「農」と「食」への関心を高める取り組みとして、さらに強化していく必要があると考えている。
JAセレサ川崎創立の理念である「地域と共生する都市農業」「地域と共生するJAバンク」。この両輪を役職員、組合員、地域住民とともに育て、強固なものにしていくことこそが役職員の責務だと痛感している。
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