【近藤康男・TPPから見える風景】日欧EPAはTPPよりマシだろか??2017年8月31日
TPPに比べて、「日欧EPAはまだマシということはないだろうか?」という言葉をTPP反対運動の中でも、時に聞かない訳ではない。食の安全、投資家対国家間紛争処理、動物福祉等々。一方EUの反対運動からは、「結局グロ-バル企業の意図が反映されたもの」という声が聞こえて来る。
8月29日に、筆者も参加している「TPPプラスを許さない!全国共同行動」が呼びかけて、学習会、同日続いて外務・農水・内閣府から7名の出席を得て日欧EPAの説明と意見交換会があった。7月10日に続く2回目の取り組みだ。
この学習会の報告者の一人として「公共調達」「国有企業」「規制の協力」についての分析を報告した。他に2人が「食の安全」「農林水産品の市場アクセス」について報告をした。
◆日欧EPAは 一見マシのようだが結局は更に悪い、協定だ
日欧EPAは未だ決着している訳ではない。上述の分析も、EU・日本が公表したファクトシ-ト、EUが公表した現時点での協定条文草案、あるいはリークされた条文から分析したものだ。そしてカバ-している分野もごく一部という限界はあるが、そこから何が見えたのだろうか?
分析を終えた後見えたのは、乱暴に言えば、マシな部分はあるが、せいぜい"マシという程度"でしかなく、TPPとの比較で譲歩した部分も多く、かつ譲歩は具体的かつ直接的ということだ。加えて、いくつかの"EUらしさ"の見られる部分に対して日本側はTPP合意に準拠した立場に固執して、"EUらしさをブロック"してしまっている。
例えば食の安全・安心に係る「衛生植物検疫SPS」、「貿易の技術的障害TBT」や「予防原則」。
この部分は、"EUらしさをブロック"と言っていいのだろう。TPPの7章の「衛生植物検疫措置」でWTOの「SPSの適用に関する協定」、8章の「貿易の技術的障害」でWTOの「貿易の技術的障害に関する協定」に準拠する内容は、日欧EPAでも位置付けがされている。しかし日本が予防原則を強化しようとしているのか、あるいはGMO表示をEU並みにするのかという突っ込みには、それぞれの立場でのWTO解釈の立場を相互に認めると言う説明だ。つまり、実質的にはEUはEUの規制を堅時する一方、日本はTPPの「輸出優先あるいは米国優先」とも言える立場を堅持すると理解出来る政府見解しか聞くことが出来なかった。
少し逸れるが、投資家対国家間紛争ではEUはそこそこマシな常設・2審制・法曹資格を持つ仲裁人などからなる仲裁裁判所を提案する一方、日本はTPPのISDS方式にしがみついていて、協定の合意のネックとなっている。
◆TPP以上の譲歩が目立つ日欧EPA
分析した分野で譲歩が目立つのは、畜産・酪農製品を含む農林水産品の関税問題と公共調達(TPPでは政府調達)だ。
影響の大きい乳製品、麦類、砂糖のみ例示するが、TPP以上の譲歩をしていると言わざるを得ない。

「公共調達」章も譲歩の目立つ分野だが、多少マシとも言える?「国有企業」章と共に次回のコラムで検討してみたい。この2分野と「規制の協力」章の3分野は、経済連携協定においていずれも地域に最も影響をする分野であり、TPPなどを最も代表する分野であると考えている。
(日欧EPA関連記事)
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