【TPP】日欧EPAふまえ関連政策改訂へ 政府2017年7月14日
政府は7月14日、TPP等総合対策本部会合を開き、日欧EPA交渉の大枠合意をふまえた総合的対応の基本方針を決定した。日欧EPAの大枠合意内容の影響などを見極めて政策を整理し、平成27年11年25日に決定した総合的なTPP関連政策大綱をこの秋に改訂する。
政府は日EU・EPA交渉の大枠合意をうけて7月11日、「TPP等総合対策本部」の設置を閣議決定した。14日の会合は3回目で安倍総理、菅官房長官ほか全閣僚が出席し「日EU経済連携協定(EPA)交渉の大枠合意を踏まえた総合的な政策対応に関する基本方針」を決定した。
石原伸晃経済再生担当大臣は「日EU・EPAを真にわが国の経済成長に直結させるため基本方針に基づき、TPPに係わる取り組みもふまえて政策を体系的に整理し総合的な対策の検討をスタートさせていく」と述べ、この秋に「総合的なTPP関連政策大綱」を改訂する方針を示した。
ただ、「農林漁業者には不安を感じている方もいる」として「ポイントはそういう方々に対し、総合的な政策対応で万全の体制をとると伝えることが大事。正確、丁寧な説明を、出て行ってすることが大切だと思う」と述べた。
決定した基本方針でも「今回の合意内容や意義等について国民への説明を丁寧に行う」と強調している。自民党内からは合意内容の説明ととともに、ソフト系チーズの低関税枠の設定と段階的な関税撤廃などの国内農業への影響について試算を示すべきとの意見もある。
これに対して山本農相は同日の記者会見でTPP大筋合意を受けた平成27年秋以降の経過を説明。(1)定性的な影響分の提示=9月、(2)総合的な関連政策大綱の決定=11月、(3)関連政策を盛り込んだうえでの定量的な影響試算提示=12月と進んだことを指摘し、今回も日EU・EPA大枠合意に対する国内農業対策等が決定したのち、「それをふまえた試算」を示すとの考えを話した。
基本方針では、農林水産物の重要品目について「将来にわたって意欲ある農林漁業者が希望を持って経営に取り組めるようにすることにより、確実に再生産が可能となるよう、万全の体質強化対策を講じる」としている。
具体的にはすでに実施されているTPP関連対策については、実績を検証し見直しを検討する。牛・豚マルキンなど経営安定対策は日EU・EPAの大枠合意の内容、TPPの状況をふまえて検討する。
チーズ対策では原料乳の低コスト・高品質化の強化や、製造面でのコスト低減、品質向上とブランド化などを推進する。
パスタ・菓子等は国境措置の整合性確保と国産原料作物の安定供給の観点から対策を検討する。また、輸出環境の整備も図る。
農林水産省も同日、「TPP対策本部」を「TPP等対策本部」に改組した。本部長を大臣、副本部長を副大臣が務める。山本農相は「党とも連携し効果的な対策を検討する」と話したが、合意内容に不安を持つ現場は多い。生産現場の声にいかに応えるかが問われる。
一方、この日の会合では12日~13日にかけて箱根で開かれた「TPP箱根高級事務レベル会合」の概要も報告された。
この会合では5月のハノイ閣僚会合結果をふまえ11か国でTPPを早期に発効させるための方策について具体的検討を行った。
石原大臣よると「ハノイ会合を受けてのキックオフなのでもう少し入り口論に終始するのかと思ったが論点が深まった。TPPの早期発効のための具体的な方式について、11か国の間で共通のイメージが形成されるとともに、今後の作業指針についても共通認識を持つことができ有意義な会合だった」と話し、今後は8月下旬から9月上旬にかけて開催が予定されている豪州会合でさらに議論を深めることになっているという。
基本的には11か国で結束してTPPを早期発効させ、米国の復帰とその他参加希望国にも加盟を広げる方針。11月のAPEC首脳会合に向けて「スピード感を持って議論を前に進めていく共通認識が持てた」と石原大臣は話した。
(写真)記者会見する石原大臣、内閣府
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日