【近藤康男・TPPから見える風景】途上国の経済政策を制約するか?TPP2017年10月26日
前回も書いたが、10月~11月は正にメガEPA交渉が目白押しだ。
日欧EPA、日米経済対話、RCEP、TPP11が10月に、11月には10~11日のAPEC首脳会合に並行してTPP11、RCEPの首脳会合が予定されている。そして首脳会合が予定されているTPP11とRCEPは年内合意が先送りになりそうな情勢だ。13日に都内で行われた日欧EPA首席級交渉会合では投資紛争処理を巡って対立は解消されていない。
「TPPプラスを許さない!全国共同行動」では、11月6日に政府による説明会・意見交換の院内集会、APECに向けた抗議行動を予定しており、次回に報告したい。
◆日本政府、新鉱業法でインドネシアをWTOに提訴??
最初に知ったのは14年前半の日経新聞の、インドネシア、次いでベトナムで新鉱業法が制定され、製品に加工して輸出することは認めるが、鉱石での輸出が禁止される、という記事だった。17年3月6日付け共同通信のネット配信では、「フィリピンの環境天然資源省は3日、国内の金属川下産業の発展を促すため、政府が未加工の金属鉱石の輸出禁止を検討していることを明らかにした。国内に加工施設が増えれば、国産鉱石に付加価値が付くと同時に雇用拡大にもつながるためだ」という記事がある。JOGMEC(独法)石油天然ガス・金属鉱物資源機構の「世界の鉱業の趨勢2016」ではTPP参加国のベトナムでも「鉱物法」で未加工の鉱物資源の輸出禁止措置が強化されているとのことだ。ただ、一次資料に当たれないので、詳細は承知していない。
そして、14年2月2日付日経には、「日本政府がニッケル鉱石輸出をインドネシアの『新鉱業法』が禁止し、国内産業育成のため国内精錬を義務付けることについて、WTO協定違反とし提訴する。輸入に頼る中国もニッケル生産が打撃を受けている」という記事が掲載されている。
◆"先進各国"が産業育成のため辿った道を後発国には認めないのか!
一次資源の価格の多くは国際相場により決まり変動を免れない。国民経済の中に製造業を位置付けることは、付加価値部分を取り込むことであり雇用にもつながる。健全な国民経済育成を可能にする有力な政策だ。しかも多くの資源国は製品輸入への依存からの脱却を始めたばかりだ。主権国家にとっては当然のことだろう。
しかし、TPPに代表される多くの協定は、グローバルな企業が利益と権能を拡大するために企業の関与の機会を設け(TPP26章透明性)、国境を越えて共通の条件で活動できる環境を整えている(TPP25章規制の整合性)。そして、利益を阻害された時の砦として特権的な仲裁法廷がある(TPP9章投資・ISDS)。
"新鉱業(鉱物)法"制定の記事を目にした時にまず思ったのは、果たして外国企業の投資を受け入れていた場合にISDSの対象にならないのか? という懸念だった。
◆TPP加盟国ではないが案の定...
今年に入って、「インドネシアで世界最大級の銅鉱山を運営する米鉱業大手フリーポート・マクモラン社が地元政府と対立、国内精錬業の育成を目指して1月に導入した新規制を「契約違反」と批判して、労働者の解雇に着手している。国際仲裁の申請も検討している。~略」(17年02月21日付け日経)、「世界最大級のグラスベルグ銅鉱山の採掘権を巡る交渉でインドネシア政府と米鉱業大手フリーポート・マクモランが基本合意に達し、同社の採掘権を20年間延長する替わりに鉱山を運営する小会社の株式の過半をインドネシア側に売却することとなった。
インドネシアは17年1月、国内の精錬業育成のため、未加工の銅輸出を禁止、採掘権の延長には将来的に鉱山運営会社の株式の過半をインドネシア側に譲渡することなどを求めた。同社は『契約と違う』と強く反発していた~略」(17年09月07日付け日経)
しかし、これで終った訳ではない、米国ペンス副大統領が反発し介入を示唆している。
ベトナムがTPPの投資章の附属書Ⅰ及びⅡで「新鉱物法」に係る留保措置を記載しているようには見えない。また、投資章の12条で挙げた4つの非適合措置には輸出禁止は含まれていないようだが、専門的で、十分には読み込めていない。しかし、インドネシアの事例からは、締結済みの契約に反するのであれば、提訴される可能性は充分だ。
(関連記事)
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