格安米粉で無菌パック「生米粉麺」が登場2018年1月23日
10年程前、米粉麺にチャレンジしたいという大規模稲作生産者と一緒にインスタント麺の製造機械を作っている機械メーカーを訪ねたことがあった。その機械メーカーも米粉麺に関心があったのか経営トップが対応、会議室でこのメーカーが製造したインスタント麺製造機械で麺を製造している大手インスタント麺食品メーカーの製造風景をビデオで紹介してもらった。
その際、経営トップが「この機械で1分間に2000食の麺を製造しています」と説明したところ、稲作経営者は「1分じゃないでしょう。1時間2000食じゃないですか」と何度も聞き返した。装置産業化したインスタント麺の世界は稲作生産者には理解し難い規模だった。
なぜ、この稲作生産者が米粉麺にこだわったのかというと、一つは小麦粉の代替需要として麺分野に米粉が入り込む余地があるのではないかと言った点と、当時、米粉製粉業者の中に「麺を作るのに最適な米粉を開発した」ところがあったからである。10年を経てこの稲作生産者は試行錯誤の末、コメを原料にした米粉麺を商品化し、現在、首都圏のイトーヨーカドー18店舗の他、シェルガーデン、東急ストアといった高質食品スーパーでも自社製品を販売できるようになった。商品の主力はフリッジ、マカロニ、スパゲティ、リングイネといったパスタ類で、中にはパスタとトマトソースなどがセットになったものもある。商品の表示正面に「グルテンフリー(GLUTENFREE)」と大書されている。売り場は低糖質、塩分控えめ、グルテンフリー食品を一堂に集めた健康食品専用の売り棚で、量販店ではこうした商品に「大きな波が来る」と判断、専用コーナーを設けた。
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欧米のグルテンフリーの基準は20ppm以下でFDA(米国食品医薬品局)、EU(欧州委員会)が定めている。これに対して日本は日本産米粉をアピールしたいためか「ノングルテン」という表示で、なんと1ppm以下と言う基準を定めた。1ppm以下と言うのがどの程度厳しい基準かと言うと、たとえていうなら1tの玄米に1粒の小麦が混入していてもアウトという基準である。農水省がこの基準を打ち出した当時、加工食品対策室長にそんな厳しい基準を定めて大丈夫かと聞いたところ室長からは「精米工程で色彩選別機で小麦をはじくから大丈夫だ」という答えが返ってきた。新しく設立された日本米粉協会では「ノングルテン」表示を普及させるためにロゴマークを策定、第三者認証も行うことにしている。

小麦アレルギーの人向けに米粉を提供しようとしているのは日本の専売特許ではない。アメリカでは以前から米粉を小麦アレルギー人向けに販売している。カリフォルニアの有機米生産者ランドバーグ家は有機米を原料にした米粉を製造している。ランドバーグ家の有機米作付面積はなんと4000haである。日本の有機米生産者にとっては目眩がしそうな規模だが、健康志向の消費者に訴えるなら有機米で作った米粉の方がウケるに違いない。実際、ランドバーグ家が製造しているコメ加工食品では、米粉だけではなく有機玄米をパフ化して製造したせんべい状のライスパティが人気になっているという。有機農産物、オーガニック市場が拡大し続けているアメリカでは有機米も人気で、一般米の2倍近いトン1000ドルを超えるまでになっているが、それでも日本の一般米より安いので、日本の商社の中にはSBSでアメリカの有機米を輸入、オーガニック清酒を製造している清酒会社に納入しているところもある。この清酒はどこに行くかと言うとアメリカである。
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装置産業化しているのはインスタント麺作りだけにとどまるとは限らない、大泉一貫宮城大学名誉教授は2030年には北海道の稲作は現在の生産者戸数の10分の1の1000人で生産するようになり、「装置産業化」すると予想している。
ある食品メーカーが米粉で作った生麺を「無菌パック」状態にして常温で販売できる試作品を完成させた。これを可能にしたのは既存の米粉製粉技術の製造コストに比べ4分の1のキロ50円で製造する技術を開発した企業があったからである。ただし、原料のコメの価格はキロ30円で、これをプラスしてkg80円で食品メーカーに納入出来るという価格設定がなされている。米粉用米助成金なくして、この価格で納入するにはコメ作りを装置産業化するしかない。
(関連記事)
・ノングルテン米粉製品認証機関を公募(18.01.05)
・需要に応じたコメ生産に向け全国組織が発足(17.12.22)
・米粉新時代へ 団体が始動(17.05.26)
・日本米粉協会 5月25日に設立総会(17.05.22)
・グルテンフリー 100%米粉パンで米消費拡大目指す 農研機構・広島大(17.02.02)
・米粉に用途別基準 来年度から-農水省(17.02.02)
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