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【小松泰信・地方の眼力】たたむべからず2018年4月18日

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【小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 3月30日、国立社会保障・人口問題研究所が「日本の地域別将来推計人口(平成30年推計)」を公表した。この推計は、将来の人口を、都道府県別・市区町村別に求めることを目的としたもので、2015(平成27)年の国勢調査を基に、2045(平成57)年までの30年間について、男女5歳階級別に推計したものである。なお、福島県は原発事故の影響により全県の推計のみ実施。

◆プレスリリースの概要

 研究所のプレスリリースに記された【推計結果のポイント】を"総人口" "65歳以上人口" "0~14歳人口" 別で整序した。
 なお、1)は都道府県の傾向、2)は市区町村の傾向である。
(1)総人口
  1)2030年以降に全都道府県で減少し、45年には東京都を除いたすべての道府県が15年を下回る。
  2)全市区町村の94.4%において、15年を下回る。うち、73.9%が15年に比べて2割以上減少する。4割以上の減少が予想される市区町村も40.9%に及ぶ。
(2)65歳以上人口
  1)東京都、神奈川県、沖縄県は大幅に増加し、45年には15年の1.3倍以上となる。一方、12県が15年を下回る。45年に、65歳以上人口の割合が最も大きいのは秋田県(50.1%)、最も小さいのは東京都(30.7%)。
  2)65歳以上人口の割合が50%以上を占める市区町村数は、15年の0.9%から45年には27.6%となる。
(3)0~14歳以上人口
  1)全都道府県でほぼ一貫して低下する。45年にその割合が最も大きいのは沖縄県(15.3%)、最も小さいのは秋田県(4.7%)。
  2)45年におけるその割合は、95.8%の市区町村において低下する。

 

◆「たたむ」ことを提案する産経新聞

 この推計について取り上げた社説・論説の論点を整理する。
 4月18日現在、全国紙でこの推計を取り上げているのは産経新聞・主張(2日)のみである。
 同紙は、今回の推計が描く厳しい「未来図」に対する強い危機感から、「地域が立ち行かなくなってから検討したのでは間に合わない。社会の作り替えが急がれる」と指摘する。そのために、「当座しのぎの対策では手遅れになる。将来を展望して『地域をたたむ』ことや、その方法について議論を始めなければなるまい」と、かなり踏み込んだ課題を提起している。

 

◆たたむ前に、まずは「東京一極集中」の是正

 地方紙からは、「地域をたたむ」前に、まだやるべきことがある、という姿勢が伝わってくる。
 岩手日報(4月10日)は、45年の推計人口88万人が1918年の人口87万人とほぼ同じであることから、「岩手に住む人の数は、昭和を飛び越えて大正期の水準に戻る。人口急減の衝撃的な推計が示された」と、驚きを露わにする。さらに、「大正期と数は同じでも、社会の姿はまるで違う。当時は若い人が圧倒的に多く、高齢者は少なかった。しかし45年には、4人に1人が75歳を超えるとみられる」として、人口構成の違い、換言すれば生産力の違いを強調する。そして、「地方創生の核心である『東京一極集中の是正』」に本気で取り組むことを国に求めている。
 福島民友(5日)も、「人口減少対策は地方の自治体だけでは成し得ない。政府は大都市圏に若年層が集中、地方の衰退が止まらない現状を直視し、東京一極集中を止めるために抜本的改革に取り組む必要がある」とする。
 中国新聞(1日)は、少し異なる角度から東京一極集中問題に切り込んでいる。「これまで若い世代が多かった首都圏ほど高齢者人口の実数が目立つ。総人口はさほど減らないのに、高齢者人口は増えていく。首都圏では高齢者対策が今から『待ったなし』になることを意味しよう」「東京にとって人口問題は人ごとではなく、五輪に浮かれている暇は本来ない。地方と連携して本腰を入れるべき重要課題にほかならない」と、手厳しい。そして、「先進事例の長所短所を見極めながら、自治体同士の連携を密にして、将来に向き合うこと」を提言する。
 南日本新聞(12日)は、45年に鹿児島県内全43市町村で人口が減少するとともに、7市町村で半減することを岩手日報同様に"衝撃的"と表現している。人口減と少子高齢化が一層進む中で、「住民は横のつながりを深め、『公』だけに頼らない地域づくりを目指す心構えも大切」とする。また、県内高校生の県外就職率の高さに注目し、「人口流出県」からの脱却策を求めている。
 北海道新聞(8日)は、「このままでは地域社会が崩壊する懸念がますます強まる」として、現実を直視したうえで、「住民が地域で安心して暮らし続けられる将来像を描くこと」を提言する。そして、移住者や、イベントやボランティアに通ってくる若者など、外からの視点で新たな地域の魅力を発見し、事業化につなげているケースがあることから、このようなつながりへの積極的な支援を行政に求めている。

 

◆たたんで花実が咲くものか

 地方も手をこまねいていたわけではない。毎日新聞(3月31日)の社会面には、地方の苦闘が紹介されている。
 全国の自治体で減少率が最高(-79.4%)となった奈良県川上村では、流出に歯止めを掛けようと、移動スーパーなど村民が暮らしやすい環境整備に取り組んでいる。都道府県別での人口減少率が3番目に大きい高知県(-31.6%)は、高知市での生活を経て周辺部に移り住む「2段階移住」を提案し移住促進に力を入れている。前回予測よりも減少率が一定程度抑えられた島根県(-23.8%)は、県内に祖父母がいる高校生を県外から呼び込む「孫ターン」という移住促進策などを展開している。
 この記事には、「地方が自発的に課題を洗い出し、腰を据えて取り組むことが重要だ。...各地域が自発的に課題を見つけ、解決に取り組むのが本当の地方創生。使途を定めない一定規模の財政支援が効果的だ」との、片山善博氏(早稲田大学大学院教授)のコメントが添えられている。同感である。
 わが国の人口が1億人を超えたのは今から50年ほど前の1967(昭和42)年。"自分たちの地域は自分たちで創る"という気概で、これから半世紀を掛けてあの頃の地域バランスに戻していく。それぐらいの超長期的視点が不可欠である。
 "地方をたたむ"とは、まさに都市から目線。その目線こそが地域間格差を拡大し、東京一極集中を支えている。たたまれた地方の荒廃した状況が目に浮かばぬか。地方をぞんざいに扱う者に、"美しい国づくり"を語る資格なし。
「地方の眼力」なめんなよ

 

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小松泰信・岡山大学大学院教授のコラム【地方の眼力】

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