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コラム:農協の現場から

【普天間朝重・JAおきなわ代表理事専務】

2018.08.30 
外国人労働人材受け入れ制度の活用と可能性一覧へ

期待大きいベトナム

 

 少子高齢化に伴う人口減少や景気回復から現在、労働力不足が深刻化している。全国的に有効求人倍率が上昇しているが、本県においても17年度1.13倍と5年連続で過去最高値を更新。新規求人数が約12万人で8年連続で増加する一方、求職者数は約7万人で6年連続で減少。このことは農業分野にも影響しており、植え付け作業や収穫作業に多くの人手を要する一定規模以上の農家では人手の確保に苦慮している。また、総合事業という守備範囲の広いJAでも集荷場や農産物直売所、加工施設などにおいて現況は事業の継続性の観点からより深刻だ。
 その対策としてJAおきなわでは平成29年度から外国人受入研修制度を活用してベトナムから研修生の受け入れを行っている。さらに今年度からは国家戦略特区を活用した外国人労働者派遣事業も展開する予定である。今後の派遣事業拡大に向けて、去る8月7~11日ベトナムを訪問した。

 

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 JAおきなわの現在の研修制度を活用した外国人受入実績は、29年度が45名で、30年度も60名を予定しており、研修期間が3年間なので今後、最大で150名程度の回転になるものと見込んでいる。受け入れ農家は団体も含めて50か所となっており、勤労状況は良好で、農家の評価も高い。コスト的には賃金は日本人と同様ということもあり、最低賃金が保障されていることから、農家にとってコスト低減という要素は薄いものの、何にしても人手を確保するという観点から大いに助かっている。

 

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 課題もある。農家には繁閑期があるが、農作業がない時期にも給料を払い続けなければならないという点で従来の農繁期のみのパート労働とは異なる。農家をまたいでの就労も不可である。また、研修生においても送り出し機関に対して高額の手数料を支払わなければならず、これを銀行からの借入金に頼っている。
 この手数料についてベトナムでは日本円で最低36万円という金額が法律で定められており、実際には概ね60万円前後が相場となっているようである。ベトナムの平均的な賃金が月収1万5000円から2万円ほどであり、農家の場合1万円程度というから60万円というと2~3年分の年収を支払ったうえで沖縄に来ることになる。これが一部で問題になっている研修生の失踪の主因との指摘もある。

 

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 本県ではこうした課題解決に向けて本年度から国家戦略特区を活用した農業支援外国人受け入れ事業を行う予定である。この事業は外国人を研修生ではなくまさに労働者として受け入れることから(「農業経営を行う者を支援する活動」と定義されている)、運搬・陳列・販売などの作業も可能となっており、研修制度に比べてより広範な活動が可能となっている。
 このことは従来の研修制度ではできなかったJAの事業での活用も可能となっていることから、JAで受け入れて集荷場や加工場、直売所などでの活用を主(2分の1以上)にしながら必要に応じて農家の作業支援にも活用できるなど用途は多様だ。
 体制としては従来の研修制度がJAおきなわが受け入れ機関であるのに対し、JAでも活用するという観点から受け入れ機関は県中央会を主体とする「沖縄県農業労働人材確保支援協議会(仮称)」と「労働人材確保支援センター」を立ち上げて実施することにしており、研修制度の所管部署であるJAおきなわの「担い手サポートセンター」とワンフロア化して対応する方向で進めている。
 この取り組みを実現するとなると今後、研修制度で想定していた受け入れ人数を大きく上回ることになり、従来の送り出し機関だけでは対応が困難なことも予想されることから、新たな送り出し機関の発掘が必要となる。今回のベトナム訪問の目的もそこにある。すなわち、(1)新たな送り出し機関の発掘、(2)そのための(現状のハノイだけでなく)新たな都市の開拓、(3)そこの行政機関の協力取り付け、である。

 

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 まず中部地区にあるフエ省。同省には8県あり、そのうちの一つクアンディエン県(人口8万5000人)の人民委員会を訪問。同委員会では労働関係で日本から訪問してきたのはJAおきなわが初めてであり感激したとして、人材派遣について積極的に協力するとの約束を取り付けた。
 同県ではホアン・チャオ高校にも出向き、校長と会談を行ったが、同校は生徒の多くが農家であり、40%程度の生徒が海外、特に日本での就職を希望しており、JAおきなわの派遣事業に協力したいとのことだった。その後フエ農林大学にも出向いたが、そこではすでに岡山大学との人材交流(インターンシップ制度)を行っており、さらに大学の敷地内に民間の海外労働者派遣会社を誘致するなど、生徒の海外就労への関心が高いことから今後、大学側からJAおきなわとも連携していきたいとの意向が示された。
 翌日はハノイに移り、現在締結している派遣会社を訪ね、今後の研修制度に基づく派遣への協力を求めるとともに、新たに展開する国家戦略特区を活用した労働者派遣事業についても意見交換を行い、協力を取り付けた。
 その翌日には新たな送り出し機関として候補に挙がっている企業を訪ね、同様の説明を行い協力を取り付けたが、同社では課題である派遣料の軽減についても踏み込んだ議論を行い、理解をいただいた。その後、ベトナム政府の海外労働管理局を訪問し、沖縄での取り組みを応援する立場で今後、正式な依頼文書の提示を求められたが、手続きについては直接メールでのやり取りも可能との同意を取り付け、作業を進めることにした。

 

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 こうした一連の取り組みは、ベトナムにある「沖縄ベトナム友好協会(沖縄文化経済交流センター)」の協力を得て実施したものであり、感謝したい。
 今回のベトナム訪問を通じて感じたことは、(1)非常に親日的であること、(2)ゆえに日本での就労に対する期待が大きいこと、(3)政府も協力的であること、などである。そういうことからすると今後、研修制度にせよ労働派遣にせよ、現地での協力が相当程度得られるものと確信した。これが現在の農業分野での労働力不足解消の一助になればと考えている。

 

(普天間朝重・JAおきなわ代表理事専務の記事)
政府の農協改革で農家は幸福になれるのか?(17.05.16)
トランプ大統領の登場と農協改革のゆくえ(17.03.21)
農協合併を考える(17.01.31)
信共分離を考える(16.12.13)
全農改革を考える(16.11.22)
農協に3つの危機(16.10.25)

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