【リレー談話室・JAの現場から】気候変動と農産物価格への影響発信を2018年12月18日
「災害級の暑さ」や「数十年に一度の豪雨」という言葉が連発され、猛暑がつい先日まで続いていたかと思えば、12月とは思えない暖かい日もあるなど、これまでの四季とは違った気候変動を体感している。
特に今年は、夏から秋にかけて野菜・果物の高値や生育不良がマスコミを賑わせた。あまりの高値で、切り売りしても消費者から買い控えされたキャベツ・白菜・大根などの店頭価格は、ここ最近、高温多雨傾向による育ちすぎも重なり、「値ごろ感」を通り越して1個数十円台の「客寄せパンダ」と化し、「保証基準額の算定の基となる平均」を下回る品目も増えている。こうした状態に、多くの消費者は気候変動による農作物の影響は解消されたと思っている。
今のところ「野菜の需給・価格動向レポート」やそれに類する情報を見る限り、ほとんどの主要野菜について、消費動向に影響を及ぼすほど(買い控えを起こさせるほど)の需給逼迫(高値)見通しではないため、流通・消費側は安心しているだろう。こうした一種の「平和ボケ」状態だからこそ、農業側(農業者や農協)の積極的な情報発信やアピールが必要なのではないか。
「寝た子を起こすな」と批判されるかもしれないが、秋までの天候不順や気象災害による産地の被害や疲弊、暖冬多雨傾向で寒暖差が大きいこの冬の気候が持つ潜在的リスクによって、必ずしも、この「平和ボケ」が続かない可能性もあること、来春以降も気候変動で今年のような需給逼迫(その逆もある)が起き得ることなど、あえて農業側から「これまでとは違った発信」があってもいいのではないか。おそらく、「そんなことより消費宣伝!」とのお叱りが飛ぶと思うが、いくら消費宣伝をしても、少子高齢化による人口減少社会の中、口や胃袋のサイズと数は小さくなっても大きくなることはない。
そこで、この夏の天候不順と農作物への影響について、マスコミ、特にラジオやテレビがどう伝えたのかを思い起こしていただきたい。流通は「入荷が無い」と話し、消費者は「高値」を訴えることが中心で、農業側から「出荷したくてもできない」などと窮する声はどれだけあっただろうか。専門紙を含む新聞などの文字メディアでは、多少、農業側の声を取り上げていた記憶はあるが、ラジオやテレビでライブ感のあるアピールがなければ消費者の認知には繋がりにくい。
気象の専門家によると、この冬は平年と比較して、南岸低気圧により太平洋側で雪や雨が多くなる可能性が高いという。つまり冬野菜産地への気象リスクについて警鐘が鳴らされているのだ。毎年、春のドカ雪による栽培施設の損壊、収穫不能や物流遮断による需給逼迫が起きるたび、世間は「入荷量不足や高値への苦情」に席巻されてしまうが、農業側からは「消費者は分かってくれない」との嘆きはあっても、「消費者に分かってもらうための行動」はほとんど見えてこない。
間もなくTPP11の発効を迎え、それを追いかけ追い越すように、アメリカは二国間協定の締結を迫ってきているが、農業分野の特別扱いを求めても外圧に勝てる見込みはないだろう。圧倒的な供給力と価格競争力で、輸入農産物はさらに市場の一角を占めることになろう。しかし、国産志向の消費者は必ず存在し続け、「量より質」を求められる時代の中、一度、輸入品になびいた消費者の国産回帰もあり得る。いずれにせよ国産・輸入のどちらを選ぶか、その選択権は消費者にあるため、しょせん勝ち目の薄い価格競争よりも「本邦農業のファン」をどれだけ増やせるかが大きなカギになる。
今年の気候変動が農業に大きな被害を与えたのは事実だ。その一方、農業側(産地)と消費者(消費地)の間には地勢的なこと、意識や知識の隔たりなどさまざまな意味で「距離」がある中、「天気」という共有できるチャンネルがあることを教えてくれた。農産物を売る以上「消費者あっての産地・生産者」である。農協の組織・店舗の合理化や資材価格の見直しも重要だが、農業をとりまく環境の厳しさに打ち勝つためにも、猛暑の記憶がさめないうちに、消費者との対話に結びつくような「思考改革」も必要だ。
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