【熊野孝文・米マーケット情報】消費税軽減率対象やインボイス制度がコメ業界のホットな話題に2019年2月26日
今月15日に行われた米穀業者の席上取引の席上で「持ち込みと置場では税率が違って来るんだよ」という発言があった。コメは軽減税率の対象になっているはずなので、その発言を聞いた時には「どうして?」と思ったが、農水省が農業者向けに配布した「消費税の軽減税率制度」の説明パンフレットには「送料は農産物価格に含まれている場合は8%、農産物と別に請求する場合は10%」と記されている。
今年10月に10%に値上げされる消費税。よく引き合いに出される店内飲食か持ち帰りかによって税率が変わるように、なかなか理解しがたい軽減税率制度で、具体的な内容が分かるにつれ米穀業界でも困惑が広がっている。
今更ながらの感もあるが、そもそも軽減税率の対象になる品目は「飲食料品(酒類及び外食を除く)」と「定期購読の契約が締結され週2回以上発行されている新聞」。週1回の発行では軽減税率の対象にならない。なんとも釈然としないが、それは置いておいて、コメは「コメ、酒米」は軽減税率の対象になるが「飼料用米、種もみ」は標準税率が適用される。 飼料用米、種もみに軽減税率が適用されないのは「人が食べたり飲んだりするものではない」からだが、では加工用米はどうなのかというと用途が清酒向けや米菓、味噌の原料であれば軽減税率が適用されるが、工業用糊原料に仕向ける場合は適用されない。「まず、加工用米の生産者や取り扱う業者は用途を明確にする必要がある」というのが農水省の見解。
では、飼料用米の生産で一括管理と区分管理している例では、一括管理している圃場でその地区の平年単収基準以上の収量が見込め、その分を主食用に販売した場合はどうなのか? そうした制度上の区分の事例までは88頁にもなる消費税の軽減税率制度のQ&Aにも出ていないので、その扱いについては個別に相談するしかない。
米穀業者が困惑しているのはこれだけではなく、最も疑問を感じているのが2023年10月から導入されるインボイス制度(適格請求書等保存制度)。原則としてインボイスの保存が仕入控除の要件になり、請求書に発行事業者の登録番号を記載するようになるため、売上千万円未満の免税事業者も仕入先が消費税控除可能な請求書を発行するためには課税事業者への登録が必要になる。
ところが農協や公設市場に出荷した場合は、登録番号がない農家であっても農協や市場は仕入控除ができる特例ができた。
なぜこうした特例ができたのかについて(1)現在、卸売市場、農協等を通じた流通形態では、どの生産者の農産物かを把握せずに流通させる仕組みとなっているため、課税事業者から出荷された農産物と免税事業者から出荷された農産物の区分は困難、(2)このため、課税事業者である生産者が卸売市場、農協等を通じて販売する農産物に係る適格請求書等を発行することは困難、(3)従って、卸売市場、農協等が販売の委託を請けて行う(農協等については、無条件委託方式・共同計算方式によるものに限る)農林水産品の譲渡等については、適格請求書等の発行義務を免除し、当該卸売市場、農協等から交付を受けた書類(及び帳簿)の保存で仕入控除を可能とする―との理由をあげている。
今後、売上額が千万円未満の免税事業者(農家も含む)も仕入先が消費税控除可能な請求書を発行するためには、課税事業者への登録が必要になる。(登録すると小規模農家も申告義務が発生する)。ところが、小規模農家(売上高千万円以下)が「農協や公設市場に出荷した場合、登録番号がない農家であっても農協や市場は仕入控除できる特例」ができたということになる。これに対して民間業者は登録番号のない農家へ支払った消費税は控除できなくなる。
この問題について米穀業界団体の会合で、実際にそうした小規模農家からコメを仕入れ販売した場合の具体的な価格を示し、特例措置が設けられた農協は共同計算で委託集荷・販売するのに比べ、特例がない民間業者は60㎏当たり1000円強劣る集荷価格しか提示できないようになるとし「大問題だ」という見方で、さらに「税の下での平等を謳ってあるにも関わらず、どのような経緯で農協特例が出来たのか分からない」とし、このままインボイス制度が導入されると民間業者は競争力を無くしてしまうという強い危機感が示された。まさに民間の集荷業者のみならず周辺農家らもコメを集めて出荷している農業法人にとっても仕入先を選択する流通業者にとっても大問題で、この問題が一躍コメ業界のホットな話題になっている。
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