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コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2019.03.08 
【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(122)世界のコメを米国はどう見ているのか?一覧へ

 2年前のコラム(020)「コメ」の需要は「どこで」伸びるか?(2017.02.24)において、当時の米国農務省の長期見通しを紹介した。その後、コメの国際貿易については(093)コメ・米・コメ(2018.08.03)と題して動向を紹介した。本年2月に公表された最新の見通しでは、10年後のコメの貿易量はさらに増加している。

 2019年2月に公表された米国農務省の長期見通しによると、2017/18年度の世界のコメ貿易量は4823万tだが、10年後の2028/29年度には5819万tと、996万t増加する見込みである。以前にも述べた通り、この見通しにはいくつものマクロ経済に関する前提があるが、それでも一定の方向性の把握は可能である。
 年間800万t近いコメ生産量をもつ日本にとって、最も興味深い点は、1)今後、コメ輸入需要がどこで伸びるか、2)それを誰が輸出するか、の2点である。以下、簡単に見ていきたい。
 第1の点は、需要面である。以前と同様、996万tの輸入需要増のうち、西アフリカ(ECOWAS)諸国が349万t(35%)を占める。次いで統計上は年間2万tに満たない小規模な国々や未計上の国々の合計が292万t、ナイジェリアが212万t、「ナイジェリア以外の北アフリカおよび中東諸国」が148万tである。
 米国農務省の資料を10年間の増加数量の多い順に並べると、世の中でよく言われている「ロングテール(長い尾)」そのものになる。それだけでなく、インドネシア、中国、バングラデシュなど現在の大需要国は「尾」が逆に振れていることも興味深い。10年後には世界有数のコメ消費国であるこれら3か国のコメ輸入数量が合計で431万t「減少」する。食生活の変化、国内需給バランスや生産構造の変化など、こちらももう少し深い検討が必要なようだ。

10年後のコメ輸入の増加数量(単位:100万トン)(上のグラフをクリックすると大きなグラフが表示されます)

 

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 第2の点は、供給面である。10年間で996万t伸びるコメの国際貿易で誰がそのマーケットを取るかという点である。輸出数量の増加が多い順に並べると、タイ、ヴェトナム、インド、中国、その他南米(これはアルゼンチン以外、実質的にはブラジルか)、ビルマまでが、年間100万t以上の伸びを示している。
 トップはタイで232万tである。つまり、約4分の1をタイが占める。輸出増加分で年間100万t以上を獲得するビルマまでの合計が790万t、これに米国の60万tとカンボジアの40万tが加われば890万tとなる。

10年後のコメ輸出の増加数量(単位:100万トン)(上のグラフをクリックすると大きなグラフが表示されます)

 

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 勘の良い方は気づかれていると思うが、10年間で約1000万tの新市場が創出されることが見えていながら、その市場に日本はどのくらい参入できるか、これが最大のポイントである。米国農務省の見通しを素直に解釈すれば、日本は輸出国のうち「その他諸国」の12万tに含まれる。
 さて、これら数字にどの程度政治的な恣意性が働いているかは筆者にはわからない。農業経済学者が素直に見通しているとすれば、彼ら、あるいは米国農務省からは、10年後でも日本のコメ輸出は1000万tの新規市場にほとんど食い込めず、"本当のその他"と考えられていることになる。
 コメの新たなマーケットに1%しか輸出できないまま、「日本食が世界で大ブーム」では、他国産のコメで世界中に「おいしい日本食」を提供していることになる。それはそれで一つのアプローチだが、本来ならやはり日本産のコメを何とか新たな需要に食い込ませる方策を考えるべきであろう。農産物輸出の拡大を目指すなら、目の前の金額だけでなく、こうした点をしっかりと踏まえ、10年以上先を見た徹底的かつあらゆる面からの市場確保戦略が必要である。

 

(リード関連記事)
(093)コメ・米・コメ
(020)「コメ」の需要は「どこで」伸びるか?

 

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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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