【小松泰信・地方の眼力】How dare you!2019年12月18日
佐藤正明氏による風刺漫画「コップの中の嵐」には思わず苦笑(東京新聞12月17日付)。地球温暖化対策を訴えるグレタ・トゥーンベリさんが、コップに入った木の枝に結ばれた「先送りCOP25」と書かれた白旗に向かって、彼女を世界に知らしめたあのフレーズで叱りつけている。そう、「How dare you!=よくもそんなことが!!」と。
◆石炭火力発電所の新設ですか
風刺が二重に効いているというべきか、その漫画の横には「九電 石炭火力新設 長崎・松浦CO2対策に逆行」の見出し。12月16日に九州電力が長崎県松浦市に新設した石炭を使う松浦火力発電所2号機を報道陣に公開したことを伝えている。
時も時、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)において、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を多く排出するため問題視され、グテレス国連事務総長が、地球温暖化対策として石炭火力発電所の2020年以降の新設中止を求めているにも関わらずである。もちろん「時代に逆行している」と言う専門家の批判を紹介し、国際的には事実上の「駆け込み稼働」と受け止められかねないことを危惧している。
ちなみに我が国は、世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」が、COP25における発言内容に基づいて地球温暖化対策に消極的な国に贈る「化石賞」を2回受賞している。
1回目は、梶山弘志経済産業相が石炭火力の利用継続を明言したことに対して。
2回目は、小泉進次郎環境相が演説において、脱石炭火力に踏み出すなどといった意欲的な姿勢を示さなかったことに対して。
もちろん、桃井貴子氏(気候行動ネットワーク東京事務所長)は九州電力の姿勢に対して「石炭火力発電所の新規稼働はパリ協定の目標と相いれない」と、コメントを寄せている。
How dare you!
◆強シンゾウか狂シンゾウか安倍晋三
無神経なのか、居直りなのか、国民感情を逆なでしたいのか、場所も場所、ホテルニューオータニの「鶴の間」で安倍晋三首相がご講演。「臨時国会ではこの1カ月、桜を見る会の議論が集中した」「一昨年と昨年はモリカケ(森友学園、加計学園)問題。今年の春は統計の問題。この秋は桜を見る会」「この3年ほどの間、国会では政策論争以外の話に多くの審議時間が割かれ、国民に大変申し訳ない」と陳謝したそうだ。
誰もうわべだけの陳謝を求めていない。安倍氏ご本人を始め安倍族が、速やかかつ懇切丁寧に、事実、真実を語らないから政策論争には入れないわけ。まぁ、ヤジだけが得意な政治家に政策論争なんかできっこないですがね。
さらに、麻生太郎氏をはじめ安倍族が首相の自民党総裁4選に言及していることを問われ、「大変光栄だが、全く考えていない」と改めて否定した。ただ、憲法改正が衆院解散・総選挙の大義になるかについては、「具体的に申し上げる段階にはない」と述べる一方で、「信を問うべき時が来たと判断すれば、ちゅうちょなく決断をする」と改めて語ったそうだ。
How dare you!
◆共同通信世論調査結果の要点
共同通信社が全国の有権者を対象に12月14、15日に行った世論調査(対象者2005人、回答率50.9%)は大変興味深い結果を示している。その要点は次のように整理される。
(1)「桜を見る会」問題
▽さまざまな疑惑が指摘されているが安倍晋三首相の説明について;「十分説明している」11.5%、「説明は不十分」83.5%。
▽招待者名簿に関して、「バックアップデータは行政文書に該当しない」とする菅義偉官房長官の説明について;「納得できる」13.6%、「納得できない」77.9%。
(2)日本経済の先行きに関する不安感と安倍内閣が優先すべき課題
▽日本経済の先行きについて;「不安」41.0%、「ある程度不安」46.9%、「あまり不安ではない」8.6%、「不安ではない」1.9%。大別すると、「不安」87.9%、「不安ではない」10.5%。
▽安倍内閣が優先すべき課題(「その他」などを除き10の選択肢。二つまで回答可);「年金・医療・介護」41.4%、「景気や雇用など経済政策」33.0%、「子育て・少子化対策」27.5%、が上位3項目。「憲法改正」は、5.2%で10位。
(3)憲法改正と安倍首相の総裁4選
▽安倍首相の下での憲法改正について;「賛成」31.7%、「反対」54.4%。
▽総裁4選について;「賛成」28.7%、「反対」61.5%。
(4)安倍内閣の支持と支持政党
▽安倍内閣について;「支持」42.7%、「不支持」43.0%。
▽支持する政党;「自民党」36.0%、「立憲民主党」10.8%。「公明党」(4.7%)と「日本維新の会」(3.3%)を加えた与党系は44.0%。野党(立憲、国民、共産、社民、れいわ)は、20.6%。「支持する政党なし」31.8%。
(5)中東への海上自衛隊の派遣
▽派遣について;「賛成」33.7%、「反対」51.5%。
◆世論調査結果が教える、慣れのゆきさき
(1)8割が「桜を見る会」問題ついて納得していない。諦めることなく追及し続けねばならない。
(2)9割が日本経済の先行きに不安を覚えている。上位3項目がそれを明示している。少子高齢化時代において、高齢者も子育て世代も「不安」に駆られている。
(3)3割程度しか憲法改正と安倍首相の総裁4選を賛成していない。その「不安」の解消にこそ注力すべき時に、「憲法改正」に血道を上げる姿は、国民不在の政治そのものである。
(4)にもかかわらず、4割強が安倍内閣を支持し、与党系を支持している。もう見慣れた結果だが、慣れこそが怖い。
(5)慣れている間に決まろうとしているのが、中東への海上自衛隊派遣。3割強もの人が「賛成」していることに怖さを感じる。
How dare you! 納得できず、不安に駆られることばかりの情況だからこそ言い続ける。
「地方の眼力」なめんなよ
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
情報提供やDXで厚生連医療を支える 医薬品メーカーは"節度"ある利潤を 日本文化厚生連・東公敏理事長2025年12月23日 -
数字で読む「令和の米騒動」(上) 混乱招いた流通悪者論 集荷後半に"異変"2025年12月23日 -
数字で読む「令和の米騒動」2025 (下) 始まった損切り 小売りにも値下げの動き2025年12月23日 -
【肉とビールと箸休め ドイツ食農紀行】(4)クリスマスマーケットとホットワイン2025年12月23日 -
神明が先物市場の価格使った契約を生産者に呼びかける【熊野孝文・米マーケット情報】2025年12月23日 -
米のコスト指標作成へ 米穀機構に委員会設置2025年12月23日 -
「令和7年産新米」最大12.5%値下げ アイリスグループ2025年12月23日 -
業務用米の特徴を紹介 播種前・書面契約のリスク管理 東京で業務用米セミナー&交流会2025年12月23日 -
甘み増す旬野菜「和歌山県産冬野菜フェア」直営店舗で開催 JA全農2025年12月23日 -
ノウフク・アワードで「チャレンジ賞」障害者の社会参画や地域農業に貢献 JA全農2025年12月23日 -
「石川佳純47都道府県サンクスツアーin鳥取」4年かけて遂に完走 JA全農2025年12月23日 -
「水戸ホーリーホックJ2優勝&J1昇格キャンペーン」開催中 JAタウン2025年12月23日 -
「トゥンクトゥンク」と「きぼうの種」を宇宙で初披露 年越しイベントを生配 2027年国際園芸博覧会協会2025年12月23日 -
米国ニューヨーク市に人工光型植物工場のマーケティング拠点を開設 クボタ2025年12月23日 -
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年12月23日 -
鳥インフル ハンガリーからの生きた家きん、家きん肉等の一時輸入停止措置を解除 農水省2025年12月23日 -
鹿児島県南大隅町と包括連携協定を締結 町内事業者と働き手をサポート タイミー2025年12月23日 -
まるまるひがしにほん「東日本酒博覧会~年越し酒~」開催 さいたま市2025年12月23日 -
利用者・行政・協同組合が連携 焼売やナゲットで食料支援 パルシステム神奈川2025年12月23日 -
本格スイーツの味わい「安納芋プリン スイートポテト仕立て」期間限定で発売 協同乳業2025年12月23日


































