立憲党の非民主性【森島 賢・正義派の農政論】2021年11月15日
立憲民主党が代表選を今月30日に行うことにした。
先日の総選挙で、立憲の当選者が減った。しかし、有権者が直接に「立憲」と書いて投票した比例区での立憲の得票数は、前回よりも増えた。
多くのマスコミは、当選者数が減ったことだけを取り上げて、立憲は負けた、と敗者を鞭打つように報道した。そして、比例区で得票数を増やしたことには、口をつぐんだ。
その一方で、政府に対する忖度が上手な多くのマスコミは、政府与党の自民は当選者数が減ったのに、勝ったと囃し立てた。
そして、枝野幸男代表は責任を負って辞任した。そのため、後任の代表選を行うことになった。
後任の次の代表は、野党第一党の代表になる人だから、つぎの首相を狙う人である。また、8カ月後の参院選の顔になる人である。
それだけに、この代表選を多くの国民が注目している。どんな議論を行うか。どんな政見の人を選ぶか。そして、どんな方法で選ぶか。
上の図は、立憲の代表選の方法である。
この方法は、民主主義を無視した前近代的な方法である。封建的といっていい。つまり、人間は全て平等、という近代社会の理念を否定し、身分によって、軽重が違うというのである。つまり、身分によって次のように票数を違えている。
国会議員(貴族)は、1人で2票
国政選挙の公認候補予定者(上士)は、1人で1票
党籍がある地方議員(下士)は、9人で1票
一般党員・協力党員(平民)は、700人で1票
これは、近代国家の選挙ではない。
農協は協同組合だから、全ての議決は1人1票で決める。これが大原則である。
立憲が、今後も民主主義を標榜するなら、農協に倣って1人1票制にしたらどうか。
◇
だが、ここで言いたいことは、このことだけではない。貴族を気取っている国会議員の傲慢さを批判することだけが、ここで言いたいことではない。この制度にひそむ現場軽視の政治である。現場で政治の転換を求めている弱者を軽視する政治姿勢である。
ちなみに、自民には76万人の党員・党友がいるが、立憲にはこれに相当する一般党員・協力党員は10万人しかいない。この隔絶した差は、両党の現場重視と現場軽視の差を示している。
◇
立憲が国民の大多数を占める弱者から支持される政党を目指すのなら、現場へ行って、弱者の悲痛な声を直接に聞くことである。弱者がコロナでどれほど災禍を受けているか、災禍を軽減するために、政治に何を要求しているか、その要求を組織して、政治の力に変えるにはどうするか。
立憲は、その要求を満たすために、何をなすべきか。
立憲は、野党の第一党として、他の野党と協力し、弱者の要求を組織し、それを政治の力に変えねばならない。立憲は、そのための政党にならねばならぬ。そして、弱者の支持を得て政権を奪取しなければならぬ。
そうすれば、弱者の支持を得て、他の野党とともに政権を奪取できるだろう。そうして、弱者の要求を満たせるだろう。
◇
立憲は、単独では何もできない。野党第一党の立憲が行うべきことは、野党間の連携である。
それは、中央で決めることではない。まして、労組の中央組織である連合とのボス交渉で決めることではない。地方の現場の労組員などの弱者が決めることである。
労組にも入れない非正規の労働者にも呼びかけたらどうか。
農協にも声をかけたらどうか。農協には1,047万人の組合員がいる。先日の総選挙の比例区での立憲の得票数の1,149万票に匹敵する。家族の有権者を加えれば、この票数をはるかに超える。自民党の得票数の1,991万票も超える。
◇
立憲の代表選での論争で、国民が期待していることは、立憲が現場に入って、弱者とともに、弱者のためにどんなコロナ対策をめざすかである。そして、それを政府に実施させるために、他の野党とどんな協力体制を作るかである。
立憲よ、現場主義に徹せよ。これが多くの国民の要望であり期待である。
(2021.11.15)
(前回 総選挙は中間派の戦略的敗北)
(前々回 「ゆ党」の台頭)
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