ジェラートの町 毎年フェア開き職人技継承 ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2023年12月16日
ヴェネツィアから北へ110キロ、イタリア・アルプスのコルチナダンペッツォやドロミティの入り口の、人口5000人ほどの小さな町ロンガローネは世界のジェラート職人の中心と言われており、1959年から毎年ジェラートフェアが開かれています。
言い伝えによるとむかしこの町には鉄鉱石の鉱山があり、釘を作ってヴェネツィアの造船所に売っていたが、19世紀半ばになると木造船が作られなくなり工場は閉鎖、村人は職を失った。
そんな時に村の教会の神父がジェラートと砂糖のシロップの作り方を村人たちに教え、覚えた人達がドイツやフランスなど北ヨーロッパに出稼ぎに行き、手作りのジェラートを売って歩き、需要が減る秋には故郷に戻ってきたそうです。
これが第2次世界大戦後まで続き、1959年に皆で相談してジェラートフェアを始めました。その頃にはジェラート作りに必要な機械や冷蔵庫など店の備品のメーカーも増え、ジェラート作りの職人が集まるフェアに出展すれば一軒一軒セールスをして歩く必要がないと多くの会社が出店するようになりました。
山に囲まれた見本市会場
今年はイタリアを始め、世界18ヶ国のメーカーが出店、南米のブラジル、ペルーからも参加しています。
フェアには一般の客は入れず、入場はジェラートに関係のある人だけ。日本を含む世界37ヶ国から1万人近い人が訪れました。
会場で展示された手作りジェラートの機械
展示されているのはジェラートを作り機械だけでなく、ジェラート展示用の冷蔵庫やエスプレッソの機械。アペリティフを手渡すロボットもあります。
コップを客に出すロボット
しかし主役は何といっても世界のトップクラスのジェラート作りの職人です。
会場ではジェラートコンクールが行われ、色々な国の職人が腕を競い、日本からは3人が参加しました。
競技会場でジェラートを作る日本のジェラート職人さんたち
静岡でお菓子とジェラートの店を経営している牧野義弘さんは静岡のお茶の大使も務めています。フェアでは挽いた玉露の葉の入ったジェラートにチョコレートをかけたものをプレゼン。
柴野幸介さんは柚子とパイナップルのジェラート。日本とヨーロッパの味を共存させました。
北海道出身で沖縄にも店を持つ高田聡さんは、ピスタチオとカニの殻の粉末を和えたジェラートでイタリアの味と日本の海の味の調和をはかっていました。
1959年の第1回ジェラートフェアのポスターと最高責任者のピッチニーニさん
ロンガローネ・ジェラートフェアの最高責任者、家では畳に布団をひいて寝ているほどの大の日本ファンであるアレッサンドロ・ピッチニーニさんは「1959年に始まったジェラート国際フェアは1981年まではロンガローネだけでしたが、今ではイタリア国内だけでなく、世界中色々なところで開催されています。しかし殆どは食品フェアの一部、大量生産のジェラートメーカーが参加しているもので、純粋な手作りジェラートのフェアはここだけです。勿論手作りといっても、現在は機械を使っていますが、それはあくまでも手の代わりをするもので、材料の選択や下準備はすべてジェラート職人が自分で行います。私たちのフェアには本物しか参加していません」と自慢しています。
むかしながらの街頭でジェラートを売る車
競技の会場ではジェラート職人さんたちが他の職人が作ったジェラートの味見をし、質問や感想を述べ、競技会というよりも親睦会のようでした。
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