【今川直人・農協の核心】マーケット・インの象徴としての協調出店2025年1月20日
物流・商流の主体は単協
全農の「2030年に向けた全体戦略」の「農業振興」に次ぐ第二は、「食農バリューチェーンの構築」である。令和6年度計画では、「ア.物流体制・インフラの整備 イ.多様な販売チャネルによる国産農畜産物の消費拡大 ウ.地域原料の発掘および国産原材料を使用した商品開発 エ.実需者への営業強化による販売拡大 オ.適正な価格形成および生産者所得の安定・向上」がその具体策である。2点指摘したい。
第一は単協機能の充実によって全農の補完機能がより有効に発揮されることである。上記具体策の第一・第四項の物流と商流の強化はとくに単協の機能強化・自己完結が強く求められる課題である。組織整備・連合組織の簡素化は、多くの機能が単位組織に移行する形で進むことが望ましい。単協の機能強化が全農の補完機能を高次に押し上げる。連合会の意義は組合員の農協利用率を高めることにある。
国産重視
第二点は商品政策、すなわち具体策第二・第三項の国産重視の視点である。2017年食品表示基準改正に伴う表示義務の経過措置期間が2022年3月末で終了し、加工食品の原料原産地表示義務が拡充された。しかし、食品衛生法に適合して国内で流通している食品は輸入食品も国産品も安全性は同じ、と言うのが政府の立場である。原料原産地表示も「商品選択に利用している消費者が多いことに鑑み」と言う説明である。
全国Aコープ協同機構は「端境期や国内で生産できない一部品目を除いて、『生鮮野菜・牛・豚・鶏・ひき肉』は国産のみ」(国産こだわり宣言)とする商品政策を掲げている。この宣言は野菜について「生鮮」に限定し端境期や熱帯産品を例外とする最低限の柔軟さを持っているが、ひき肉までも明示して国産への拘りに徹している。
協調出店の意義
機構では「生産者直売コーナーの100%設置」を基本方針とし、2009年以降、国産農畜産物を求める消費者の要望の高まりおよびこれに呼応する同業他社の動向に対応し、かつファーマーズマーケットとAコープとの協調を図るため「直売所併設型店舗」の出店を進めてきた。可能な暖地産品等の導入も提起している(本紙2010年9月7日付け)。
Aコープ、ファーマーズマーケットの整備はJAグループの農畜産物・食品販売事業にとって歴史的・象徴的な意義を持っている。まず、店舗が農畜産物・食品販売の拠点として定着してきたことである。次に最短の流通経路の形成である。一般家庭向けの最短経路であった集荷業者・集荷団体→大型小売店舗→消費者が、集荷団体(農協)→消費者とさらに短縮される。農協改革の大きな課題であるマーケット・インの実践でもある。第三は経営上のメリットである。直売は農協の業務が目に見えることもあって組合員の理解が得やすく、メディアの昔ながらの思い込みの「高い手数料」も聞くことなく、負担に応じて10~20%の手数料が設定される。。
農畜産物・食品市場は激しい競争が続く。これまで一部に見られた直売事業におけるグループ内の競合が協調に転じている。関係者のモラル向上は想像に難くない。
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