イモ掘り、イモ拾いモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第338回2025年5月1日

ジャガイモの掘り取り、その日が学校の休日なら子どもも一日中手伝わされたものだった。
イモに傷をつけないように注意しながら、イモを植えてある畝(うね)の下を大人が鍬(くわ)で深く起こす、こうして柔らかくした土の中から家族総出でイモを手で掘り取るのだが、けっこうきつい仕事だったからである。
ましてや栽培面積の大きい北海道、子どもたちも総動員でイモ掘りを手伝ったことだろう。たしかにそうだった。学校行事としても子どもたちは手伝ったという。それを聞いたのは、1950年代後半に釧路周辺の小学校の先生となり、そのままそこで退職まで勤め上げた私の中学・高校時代(生まれ故郷の山形時代)の同級生の女性からだった。私が網走で勤めることになったのを聞いてご主人といっしょに訪ねてきてくれ、車でいろいろ周辺の案内をしてくれた。そのとき、こんな話をしてくれたのである。
北海道ではジャガイモの収穫時期がいわゆる農繁期なので、当然のことながら子どもたちも手伝う。小学校も学校行事として収穫の手伝いをさせる。ところが、それを「イモ掘り」の手伝いとは言わない、「イモ拾い」という。穫り残してたまたま畑に落ちているイモを「落ち穂拾い」のように拾うのを手伝うだけなのだろうか。「イモ掘り」ならわかるが、その程度の作業なら学校を休んでまで手伝うほどのことはないではないか。そう思いながら子どもたちについて畑に行った。そこで初めてわかった。「イモ掘り」は馬の仕事だったのだ。馬が曳く掘り取り機でイモの植えてある畝を下から掘り起こす。するとイモが土の中から顔を出す。それを拾うのだからやはり「イモ拾い」なのである。なるほどと思ったのだが、東北人としては感覚が合わず、ついつい笑ってしまったと彼女はいう。
もちろん、落ち穂拾い的なイモ拾いもかつてはやったようである。取り残したらもったいないから当然のことであろう。
ところで、馬が曳く掘り取り機は何と呼んでいたのだろうか。そもそも「イモ拾い」は本当に私の記憶通りでいいのか。農大定年後ちょっと不安になって網走管内育ちで農大オホーツクキャンパス元事務部長のFMさんにメールして聞いてみた。そしたらFMさんの子ども時代(1950年代)の「イモ拾い」のイメージが目の前に浮かぶような返事が返ってきた。非常に貴重な証言なので原文のまま引用させてもらうことにする。
「イモ掘りの機械は確か、通称『ガラガラ』とか言ってたようでした。ジャガイモの収穫作業に竹製の『イモカゴ』を持たされて『イモ拾い』を何度もさせられました。
馬二頭引きのガラガラで一畝(うね)づつ掘り起こすンです。馬の歩く速度に合わせて五、六本の鍬のようなものがガラガラ回り、イモを土ともども二間(4㍍弱・筆者註)ほどの幅にモウレツな勢いで飛ばすンです。
通り過ぎた直後に大人も子どももイモカゴを持って、次ぎに回って来るまでにそれこそモウレツな勢いでイモを拾い集めるのです。
一頭引きですと、馬も疲れてタマに休むのでイモ拾いも楽でした。二頭引きですと馬は休まないし、足も速くなるので、拾う作業は汗だく。子どもだったせいもあるけど。
イモカゴは重いし、手袋なんて無く、手は泥だらけ。靴はゴム制の短靴。靴下なんて洒落たもの履いてないので、靴のなかは汗でヌルヌル、何回も脱げたものです。それこそ手も足も泥だらけ。
イモ拾いは農作業のなかでも人手が多くいることから農家にとって『一大事業』だったようです。作業が終わって『ぼたもち』をご馳走になるのがとても楽しみでした」
いうまでもなく今は機械化され、イモの収穫はポテトハーベスターで掘り取りから収集まで一気になされる。だからイモ拾いの作業はいらなくなり、子どもが手伝う余地はなくなってきた。とはいっても、機械からこぼれたり、掘り残したりしたイモがあるはずであり、その落ち穂拾い的イモ拾いはあるのではなかろうか。だってもったいない、あれだけの面積なら拾うとけっこうな量になるはずだからである。
しかし、今はあまりやっていないようだ。それがわかったのは学生の農業実習のときだった。
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