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【地域を診る】能登半島地震から1年半 地域の農林漁業と医療・福祉を軸にした地域再生の必要性 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年7月17日

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今、地域に何が起きているのかを探るシリーズ。京都橘大学学長の岡田知弘氏が解説する。今回は「能登半島地震から1年半」として、医療・福祉体制の崩壊と人口流出の悪循環に警鐘を鳴らす。

京都橘大学学長 岡田知弘氏

京都橘大学学長 岡田知弘氏

2024年元日の能登半島地震から1年半余りが経過した。応急仮設住宅の建設が完了し、住家などの公費解体もある程度進んでいるように見える。しかし、被災者のくらしの再建状況を見ると、心配な数字が並んでいる。

珠洲市、輪島市の人口は、被災後13~12%減少し、小中学生の数は3割近く減少したままである。その多くが、金沢市をはじめとする加賀地方への移動によると見られる。他方で、震災による死亡者数は石川県内で605人に達しているが、その62%にあたる377人が被災後の避難生活、仮設住宅暮らしのなかで亡くなっている災害関連死者数である(本年6月30日時点、石川県発表資料)。地震後の「政策災害」ともいえる事態が、今も続いているのである。

その要因を探る手掛かりになる新聞報道がある。ひとつは「日本経済新聞」夕刊が報じた「能登の高齢者医療費増加」と題する取材記事である(7月2日)。珠洲市では、震災後、高齢者の医療費が35%も増加しているという。応急仮設住宅に入っても、将来の展望が見えず、長期間閉じこもってしまうことによる生活不活発病が広がっており、これが関連死を増やす要因のひとつとなっている。さらに、体調を崩して病院や診療所に行きたくとも、バスやタクシーがなくなって動けないため「医療離脱」現象が生まれているという。さらに、病院や診療所では、診療報酬引き下げによって経営が困難となりスタッフが不足している。

もうひとつは、「京都新聞」夕刊が6月30日に報道した記事である。「奥能登4市町 介護施設職員3割減」という見出しである。地震で損壊した介護施設の復旧ができず、閉鎖したり、規模を縮小し、所得機会を求めた介護職員が被災地から流出しており、その結果として入居している高齢者の人口も減少するという悪循環が広がっているという。それは訪問介護サービスにおいても同様であろう。

病院、診療所、介護施設や障がい者施設、保育園、こども園などの福祉職場で働く人たちの多くは女性である。その仕事が長期にわたって確保できないならば、こどもを連れて、他所に移り、仕事と生活を再建する道を選ぶのは必然的な方向であり、学齢人口の3割減という数字とも実態的には連動しているといえよう。

さらに、高齢化が進んだ能登被災地の市町においては、病院や福祉施設で働く人たちが、就業者のなかでも極めて多い。いくつかの自治体では、最大の雇用の場であり、その所得は世帯収入においても重要な所得源であり、世帯において農林漁業を支える重要な兼業機会となっているのである。農業の担い手は専業農家だけではない。

病院や福祉施設は、本来、心身を痛めた住民が健康を回復するための重要な役割を果たしている。とりわけ被災地においては、災害によって弱った心身をケアし、回復させるために、地域社会にとって無くてはならない存在である。

この役割は、被災地のみならず、大都市、農村を問わず、どの地域においても見いだせるものである。むしろ、未被災地においても、今後の地域づくりをすすめていくうえで多くの教訓を示してくれているといえる。

加えて、地域経済に占める病院や福祉施設の役割に目を移すと、平時においても地域内の他産業との関係性が強いといえる。施設の建設や修理、設備の点検作業もあれば、日々の業務用の物品やサービスの購入、さらに農林水産業や食品加工業が供給する給食食材の購入、人やモノを運ぶためのタクシーや運送業者等に加え、多くのスタッフが近隣に定住し消費活動を行っている。その波及効果は大きい。長期間居住すれば社会維持効果も高まる。

2016年の熊本地震の際に、熊本県はいち早くグループ補助金制度をつくり、その対象として狭義の中小企業だけではなく、病院や診療所、福祉法人、そして農業法人も加えた。それらが、地域を担う重要な産業であり、地域再生にとっては一体的な再建を図る必要があるという見地からである。ところが、二地域居住を押し出した石川県の復興プランや国の復興策には、このような視点はなく、事業再建支援は個別経営体を主たる対象としており、小規模な病院、診療所、福祉施設、農林漁家の再建策としては使い勝手がよくないものとなっている。むしろ、「選択と集中」によって統廃合を推進しているように見える。このような政策を根本的に転換することこそ求められている。

地域再生における医療、福祉の役割を、1980年代に見抜いていたのが、長野県にある厚生連佐久総合病院の若月俊一院長(当時)であった。若月さんは、地域のなかに医療があるとし、農業をはじめとする地域産業と連携した保健・医療・福祉を軸とした自律的な地域自治共同体づくりを、メディコ・ポリス構想として提起したのである。

これは、協同組合の理念と厚生連医療運動の歴史的蓄積、職員スタッフによる地域社会や自治体との連携があってはじめて創造されたものだ。まさに先見の明であり、全国各地で広がってほしい取り組みである。

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