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反政府デモとコメ政策 タイの農業事情を学ぶ2014年1月6日

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JAグループの青年農業者研修報告(3)

 JA全青協とJA全中が主催した「青年農業者のリーダー育成・交流研修」の研修団は、12月4?5日にタイで研修を行った。同国では反政府運動が活発化していたが、5日は86歳になるプミポン国王の誕生日だったことからデモ活動は休止された。それでもバンコクには夜間外出禁止令が出されたため、研修団はバンコク市内での宿泊を急遽取りやめ北へ60kmのアユタヤに2泊することになった。実は、この反政府デモの要因には同国のコメ政策もあるという。今回はタイでの研修先のひとつ、T・J・Cケミカル(注)の西尾誠副社長の講義をもとに紹介する。

◆都市と農村、格差が拡大

nous1401060301.jpg 人口6700万人のタイ。GDPのうち農業部門が占める割合は1980年代までは50%を超えていたが、急速な工業化でその割合は低下、2011年には11.7%となっている。ただし総就業人口3870万人のうち農業就業人口は1575万人と依然41%も占めている(2010年)。製造業やサービス業などの発展がタイの経済規模を拡大させたことが分かるが、それによって都市と農村部の格差は拡大した。
 北部・東北部の世帯あたりの収入は首都バンコクの3割程度となっている(09年)。また、バンコクでは高等教育を受けた人口が3割近くにまで増えているが、北部・東北部では1割に満たない。逆に「初等教育未満」層がいずれも40%超ともっとも多く、教育格差も広がっている。
 タクシン前首相とその妹である現在のインラック首相はタイ北部の出身だ。そのため農村部や低所得層に手厚い政策を実行してきた。
 そのひとつが全国の小学生一人ひとりにタブレットを配布する政策である。教科書を買えない子どもたちをなくすため、1人3000バーツ(約1万円、1バーツ≒3.5円)を支給した。これによって貧しい家庭の子どももタブレットに教材をダウンロードして授業が受けられるようになり、今後は中学生にも配布する計画だという。
 また、最低賃金を1日200バーツから300バーツに全国一律に引き上げるという低所得者対策も行った。

(写真)
T・J・Cケミカルで行われた研修会のようす

◆米の買取り、政府が実施

 こうした政策に加えタクシン氏を引き継いだインラック現首相は、農家支援拡充策を政権公約に掲げて選挙に勝利した。その具体策が政権交代後の2011年10月から導入された「籾米担保融資制度」である。
 農家が米(籾米)を政府に預け政府から融資を受ける制度だが、基準融資価格は市場価格の1.5倍とした。このため農家は市場で売るよりも、政府から融資を受けて返済しないほうが得になり、事実上、政府による“米の高値買い取り制度”になってしまった。
 米の市場価格は1t1万バーツ。西尾副社長によると生産コストが同8000?9000バーツで利益は同1000?2000バーツだという。1戸あたり平均生産量が約9tだから利益は9000?1万8000バーツ。日本円にして2万?5万円に過ぎない。
 これに対して籾米担保融資制度では1t1万5000バーツが融資基準価格。だから農家の利益は日本円にして14?16万円と、市場で売るより3?7倍となる。
 タイでは米の生産額は農業部門GDPの約1割を占めるに過ぎない。しかし、稲作作付け面積が国土の約2割、農地面積の5割を占め、稲作に携わっている人口は農業者の7割、総人口でも5割を占めるという。生産額は少なくても政治的には重要な部門といえる。
 もちろんこの制度は農家には好評で2011/12年には生産された米の6割を超える1400万tが政府に納入されたという。

◆在庫肥大で高まる批判

 しかし、高値で買い取ったため輸出競争力を失い政府在庫は肥大化した。2012年のタイの米輸出量は前年比37%も減少した。 しかもタイ政府の買い取り制度を当てにしてラオスやミャンマーなど周辺国からの米が流入し、タイ政府は密輸米を300万tも政府在庫として抱えているともいわれる。 さらに山ほどある政府在庫米から品質のいい米を横流しするといった不正取引や、保管場所の不足による腐敗なども問題となってきた。政府は国内で安値で販売しているが、逆ざや販売のため財政赤字が3000億円にもなるという。このため融資基準価格を昨年10月からは1万3000バーツへと引き下げを図ったが、農家の反対運動で撤回、今年4月からは引き下げることにしているが、農家は依然として反対している。 一方、米の精米業者からも不満が出ている。それまでは農協組織の弱いタイでは中間商人が農家から米を買い付けて地方精米所を経て卸業者や輸出業者に売っていたのだが、政府の買い入れが拡大したため既得権益を奪われ民業圧迫だ、との批判だ。
 タイは世界最大の米輸出国だったが、2012年にはインド(1038万t)、ベトナム(772万t)を下回り3位に転落した。輸出量を伸ばそうと輸出価格を安値にすれば、米国あたりがWTO(世界貿易機関)にダンピング輸出だと提訴するとの懸念もある。
 今回、タイで起きている反政府運動はタクシン?インラック政権がとってきた、このようなコメ政策をはじめとする農家・低所得者重視政策を失政だと批判する財界や官僚、都市部のサラリーマン層が中心となっているのである。
 また、同国のコメ政策の動向は国際的にも注目されている。農水省が毎月発表している「海外食料需給レポート」の昨年12月発表ではトピックスとしてタイのコメ政策を取り上げている。そこではIMF(国際通貨基金)がタイ政府に巨額の損失を被る可能性が高いとして籾担保融資制度の見直しを勧告したことが紹介されている。

◆社会と農業、視野を広げ

アユタヤの水田地帯を視察する研修団 研修団はアユタヤの広大というほかない水田地帯をバスで移動、途中でほ場も視察した。灌漑が普及している地域のため12月にもかかわらず、整地作業や播種の光景も見られた。
 だが、タイの輸出額2300億ドルのうち農水産物は25%でその4分の1は天然ゴムが占める。一方で自動車の生産台数はロシアを抜き世界9位に成長。輸出額の10%を占める産業になっている。
 すでに報道されているようにインラック首相は議会を解散し選挙を行う方針だ。だが、反政府派は選挙のボイコット行動に出ている。同国の動向が注目されるが、今後はその背景を知ったうえでタイ発のニュースを見聞きすることができるようになったのも、現地研修の成果だといえるだろう。

(写真)
アユタヤの水田地帯を視察する研修団

(注)T・J・Cケミカル(株)
 同社は1970年に日本とタイの協同組合間連携の一環として設立された合弁会社。本社はバンコク。タイ農協連合会が51%出資、全農グループとクミアイ化学が49%を出資している。事業内容は農薬と肥料、米の種子の製造と販売。今回、研修団はスパンブリ県にある同社研究所を訪問し同社のタイ農業事情や同社の研究開発の一部を学んだ。


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