飼料用米 39万t生産見込み 米価水準の回復が課題 食糧部会2015年8月5日
農林水産省は7月31日に食糧部会を開き、最近の需給動向をふまえた米の「基本指針」を諮問、部会は諮問案どおり了承した。部会では飼料用米の生産が39万tとなる見込みなども報告された。
◆民間在庫の削減を
26/27年(26年7月~27年6月末)の主食用米の需要実績は速報値で778万tとなった。 26年産米価は5月末までの相対取引価格が60kg1万2022円と前年産平均より2000円以上低い水準で推移しているが、農水省によると中食や外食では米以外の食材や包装材などが円安等で値上がりし、1商品あたりの米の使用量が減少したことから需要量は減少したと分析している。
需要量が確定したことで6月末の民間在庫量は3月の基本指針で見通した在庫量と同量の230万tとなった。
主食用米の需要量は年間8万t減少すると見通されており、今年7月から来年6月末(27/28年)までの需要見通しは770万tとなっている。
需要量に基づいた27年産米の生産数量目標は751万tで需要量770万tとすると、来年6月末在庫は211万tとなる。ただし、27年産米からは飼料用米の大幅増産などで生産調整面積をより"深掘り"する自主的取り組み参考値として739万tも指針となっている。この生産量なら来年6月末の民間在庫量は199万tとなる見通しだ。
主食用米の米価は6月末の民間在庫水準にほぼ連動したかたちで推移しており在庫水準が200万t以下となると米価が回復する傾向にあることからJAグループも飼料用米などへの転換に取り組んできている。

◆相対取引価格が上昇
食糧部会では7月15日現在の飼料用米などの生産見込みが報告された。それによると飼料用米の作付け面積は7万3000haと昨年より3万9000ha増え、数量は39万tと見込み。また、麦・大豆・WCS(ホールクロップサイレージ)の作付けは昨年より1.4万ha拡大しており、これは主食用換算で7万tとなる。
これまでのところ飼料用米で昨年より21万t増え(26年産飼料用米は18万t)、麦・大豆などの生産拡大による7万t分の転換を合わせて合計で26年産より28万tが主食用以外に転換される見込みとなっている。また、これらの取り組みによって26年産では2万8000ha程度あった過剰作付けも解消される見込みだという。
26年産米価格は前述のように前年産比で60kgあたり2000円以上も低い水準で推移してきたが、ここにきて上昇傾向もみられる。6月の相対取引価格(全銘柄平均)は対前月比で177円、1.5%上昇した。単月の価格上昇率でみると平成18年3以降では2番目に高い上昇率となっている。
また、スポット価格は出回り当初(昨年10月下旬)にくらべ、直近の価格は1%(新潟コシヒカリ一般)~15%(青森つがるロマン)上昇している。米取引関係者の米価水準見通し判断(向こう3か月)は、「高くなる」との見方が3か月連続で続き、6月の調査結果では「56」と過去2年でもっとも高い数字となっている。
◆小売り価格が問題
食糧部会では新たに臨時委員となった金井健JA全中常務が「自主的な需給対策が基本」との考えを示すと同時に、豊作となった場合の対策や小売り店での安売りへの対策の必要性についても「目玉商品として5kg1000円などと売られていると、生産者もそれはないだろうとなる」と訴えた。
農水省は豊作などに備え長期計画的に販売するための対策として、産地で生産者が自主的に積み立てを行い、それに国が支援する(2分の1助成)「米穀周年供給・需要拡大支援事業」があるとして、「産地で早く積立を」と答えた。安売り対策については対策の困難さを示した。
この問題については日本経団連の根本勝則常務も「(生産する側として)心情はまったく同じ。ティッシュペーパーなどは安売りどころか、おまけで配られていることもある」と指摘した。ただし「一方で1000円以上で売れる商品もある。その方向にいくべき」と指摘し付加価値を高めることが重要と話した。
また、米の価格形成については全米販の木村良会長が「今の価格が妥当かどうかはもう少し市場に任せてはどうか。その時々の需給を反映した価格メカニズムが必要。誘導策が続くと長期的に続くのかという問題も出てくる」などと指摘した。
藤井千佐子委員(福岡大非常勤講師)は飼料用米生産に対する米生産者の不安を払しょくすることが大事だと指摘した。これに対して農水省は「米が余っているから取り組むのではなく、畜産農家と消費者が求めているから増産する」と説明、年間1000万tの飼料穀物のうち450万t程度は飼料用米を使いたいとのニーズが畜産農家側にあることを指摘した。
また、「TPP交渉で米の輸入が増えるのではないかのか」との質問に対しては農水省は「国会決議をふまえて交渉している」と答えた。
(写真)7月31日 農水省の7階の講堂
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