業務用向けの米づくり推進を-米マッチングフェア2019年2月15日
米の業務用途への安定取引に向けた「米マッチングフェア2018」(主催:全国農業再生推進機構、グレイン・エス・ピー)が2月6~7日、東京都内で開催された。JAや生産法人など約30社が出展して米づくりなどをPRするとともに、米をめぐる情勢などについてのセミナーも行われた。

セミナーではJA全中農政部水田・畑作農業対策課の加藤純課長が水田農業をめぐる情勢を説明した。
(写真)米マッチングフェア2018で開いたセミナー
日本の米生産コストは60kgあたり1万4584円(平成28年産、全算入生産費))となっている。3~5ha層では同1万3368円、5~10ha層では同1万1241円と規模拡大で生産コストは低下するが、15ha以上でも同1万901円にとどまり、規模拡大によるコスト削減効果は逓減していく。
政府は2023年までに担い手の米生産コストを同約9600円とすることや、そのために全農地の8割を担い手に集積することを目標にしている。具体策としては農地中間管理事業などによる分散錯圃の解消や、農地の大区画化のほか、直播栽培、作期の異なる品種の組み合わせ、多収性品種の導入、低コスト仕様の農業機械の導入など生産資材費の低減も課題となっている。
こうした取り組みを進めるなかで、需要に応じた米生産も進める必要がある。
国が示す需要見通しは人口減少を加味して31年産から、これまでの年間8万t減を10万t減と見込み、31/32年の需要量を726万tとした。それに基づき、生産量は需要量と同じ726万tから民間在庫の適正水準(180万t)となる718万tの幅を持って設定することになっている。
30年産は全国作況が「98」となったこともあり、主食用米全体の需給は均衡している。産地では高価格帯中心の一般家庭用米を生産する意向が強いが、買い手側には3割を占める低価格帯中心の業務用などにも対応した米生産へのニーズがあり、ミスマッチが生じている。
これを解消するには業務用米をはじめ、加工用米、飼料用米、輸入用米などを含めて用途に応じた米生産を進めることが必要だ。用途が異なれば価格帯も異なるが、国の交付金も用途別に異なる。加藤課長は米1俵あたりの価格ではなく「10aあたりの所得」で経営を考える必要性を強調した。
産地での具体的な取り組みについては、JAえちご上越の石山忠雄常務理事が「需要に応じた品ぞろえによるJAえちご上越の生産・販売戦略」を話した。同JAでは取引先との意見交換に積極的に取り組み「ニーズとつかみ売り切る米づくり」を進めている。
多収で早生種の業務用米「つきあかり」の作付け拡大や、晩生種「みずほの輝き」など需要に応じるとともに収入を確保できる作期の分散も進め、コシヒカリの作付けは53%程度まで低下した。コシヒカリでも地域の特徴を生かした棚田米、特栽米などこだわり米として38商品も販売している。
低コスト生産対策として直播や密苗の導入、ドローン防除などにも取り組む。石山常務は「米の品ぞろえを豊富にし販売先を決めてから作付する取り組みを進めていく」と話した。
また、福島県の水田農業の方針について同県水田農業産地づくり対策等推進会議事務局長の川崎史郎参与が話した。福島県全体の業務用比率は65%程度で県外向け販売の80%程度は業務用に使用されていると推定されるという。31年産では生産数量=面積の目安を設定するとともに、制度別・用途別・銘柄別の作付計画の策定、事前契約拡大の取り組みの促進で業務用など需要に応じた生産を推進していく。具体的にはコシヒカリの比率を下げ、栽培しやすく収量も多い「天のつぶ」などを拡大する方針。
ただ、課題として需給環境と生産現場の認識にまだギャップがあることや、1俵あたり単価から10aあたり収入への意識転換が不十分なことなどを指摘し、正確な需要情報を生産者にタイムリーに提供し、事前契約による需要の確保などをめざすなどと話した。
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