【クローズアップ】数字で見る米② 低すぎた米価、生産費賄えず2024年10月22日
「令和の米騒動」で俄然注目が高まった米問題。「喉元過ぎれば」にならないためには、現状と課題の正確な理解が必要だ。JA全農米穀部が10月17日に開いた「米の生産・流通に係る記者説明会」でのレクをもとに、ポイントをまとめた。
基幹的農業従事者の減少や作付面積の減少の背景にあるのが、2023年産米まで米づくりが採算割れしてきたという深刻な現実だ。
●上昇に転じた生産コスト
まずはコストからみよう。
米の生産コストは、水田の大規模担い手への集積が進んだことで低下傾向にあった。2006年に1万6824円だった60キロあたり生産費は、2021年には1万4758円になった。特に下がったのは労働費などで、水田の集積で60キロあたりにかかる人手が減ったとみられる。
それが2022年~23年にかけ、肥料・農薬を含む物財費が高騰し、労働費もじわじわ上がった。23年の60キロあたり生産費は1万6118円だった。今後、物財費は高止まり、労働費は上昇が予想される。地球温暖化を背景に、自然災害、病虫害が相次いでいるのもコストアップ要因だ。
●販売価格は低下傾向
他方、米の販売価格は長期的に低下傾向にあった。1990年産は60キロ2万1600円だったが、2023年産米の相対取引価格は1万5306円だった。底だった2014年の1万1967円よりは持ち直したものの、生産費より低い。
生産者が受け取れる額は相対取引価格から流通経費を差し引いたものであり、約2000円程度とされる。23年の相対取引価格から2000円差し引くと、生産費との差額は約2800円だった。その分、米づくりは「赤字」だったことになる。
●実質、1俵1万円割れの年も
JA全農 折原敬一会長は本紙インタビューで「(20年前から)米価は低迷し、場合によっては1俵1万円を割るようなこともあったのではないかと思います。そのような状況では、安心して米作りをやっていけるのか」と語った(「地域を守り命を守る使命を重視」10月10日掲載)。折原会長が言うように、2014年産米の相対取引価格から2000円を引くと、農家の手取りは1万円を割り込んでいた。
●15ヘクタール以上は「黒字」の年多いが
15ヘクタール以上の経営体では生産コストが低く抑えられているため、多くの年で販売価格が生産コストを上回り「黒字」だった。だが、15ヘクタール以上の経営体が水稲生産にしめるシェアは人数で2%未満、面積で4分の1程度にすぎない。
米づくりの持続可能性のためには、15ヘクタール未満の農家を含め採算が合うか、採算割れが不可避なら「赤字」を埋める所得補償が検討される必要がある。

JA全農の資料をもとに編集部作成 なお、販売価格は農水省発表の相対取引価格から流通経費約2000円
〈保管料・運賃、安全安心に係るサンプル検査費用等〉を引いて全農が推定したもの
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