「大手米卸が500%増益」 小泉農水大臣発言はミスリード 取引関係者が指摘2025年6月9日
「社名は言わないが、ある大手米卸は、営業利益が前年比500%だ」という小泉農相の発言に、批判が広がっている。米不足を招いた失政の責任転嫁ともとれる論法は、いつまで繰り返されるのか。
●「社名は言わないが」と農相発言
小泉農相は6月5日、衆議院農水委員会で「小売側からも米の流通は複雑怪奇だと、ブラックボックスがあるという指摘が多々寄せられている」とした上で、唐突にこう発言した。
「社名は言わないが、ある大手卸の売上高は前年比120%を超え、営業利益率は前年比500%だ。他の大手は、営業利益率(の対前年比)250%を超えている」
村岡敏英議員(国民民主)の質問への答弁で、同議員は「これは政府の備蓄米だ。税金で買った物に対して、これだけの利益、国民に見てもらわなくちゃいけない」と応じた。
小泉農相は翌6日の記者会見でも「なかなか500%の利益って、どういうことなのだろうなと、普通は思うじゃないですか。そういったことも含めて、一つ一つ解明をしていく」と「流通改革」に意欲を見せた。
●産経新聞は木徳神糧と報じたが
「500%の利益をあげたのはどの会社か」が話題沸騰となる中、産経新聞はネット版(6月6日18時7分アップ)で「木徳神糧が2025年1~3月期連結決算で、コメ事業の営業利益が約4・9倍になったことを念頭に、(小泉農相が)『なかなか500%の利益って』と批判した」と報じた。
そこで、木徳神糧が5月8日に公表した2025年12月期第1四半期決算短信をみると、1年前の四半期には414百万円だった営業利益が直近の四半期(25年1月1日~3月31日)には1853百万円に伸びたことが目を引く。売上高営業利益率は約1.4%から5.0%に伸びた。
●見当たらない「利益5倍」の大手米卸
だが、営業利益の額は約4.48倍であり(1853÷414)、これを500%(5倍)と言うのはいささか無理がある。他に、営業利益率が5倍になった大手米卸も見当たらない。
4.48倍でも大きく増えたことは確かだが、それは24年1~3月の営業利益が小さかったためでもあり、25年1~3月の5.0%という売上高営業利益率も高すぎるとは言い難い。またこの売上と営業利益は取引全体の合計であり、備蓄米の扱いはその一部にすぎない。
●販売環境が大きく変化
木徳神糧の鎌田慶彦社長は、出演したインターネット番組で「もともと米はスーパーの特売のアイテムになってきた。競争も厳しく、価格を極力下げて販売しなければならなかった」と、利益が薄かった1年前までの販売環境を説明。それがまるっきり変わり、「販促経費がいらなくなって利益率が変わり」収益も増えたと説明した(「おむすびチャンネル」5月23日)。
鎌田社長の説明から、米農家が「時給10円」に泣いてきた時期には米卸も適正な利益を取れず、苦労してきたことがうかがえる。その意味で現状は、かかったコストが卸価格に適正に乗せられるようになったとみるべきだろう。
●米卸はこれまでカツカツ
ある取引関係者は「大臣発言は、現場を知らない机上の空論だ。今まで卸さんはカツカツでやってきた状況で、もうけ過ぎのように言うのはミスリードだ。米農家が利益を得られるようにすることこそ重要で、農政の役割だろう」と話す。
重要な記事
最新の記事
-
商系に撤退の動き、集荷競争に変調 米産地JA担当者に聞く(中)【米価高騰 今こそ果たす農協の役割】2025年10月30日 -
再生産可能なコメ政策を 米産地JA担当者の声(下)【米価高騰 今こそ果たす農協の役割】2025年10月30日 -
生産者が将来見通せる政策を 鈴木農相を表敬訪問 山野JA全中会長ら2025年10月30日 -
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】新政権の農政~「朝令暮改」2025年10月30日 -
よく食べた栗の実【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第362回2025年10月30日 -
鳥インフルエンザウイルスの地理的拡散と進化 2024年シーズンの遺伝子を解析 農研機構2025年10月30日 -
第36回岐阜県農業フェスティバルに出店 ステージやイベントで県産農畜産物をPR JA全農岐阜2025年10月30日 -
全国の産地応援 伊藤園と共同開発「ニッポンエール 大分県産完熟かぼすSODA」発売 JA全農2025年10月30日 -
伊藤園と共同開発「ニッポンエール 長野県産りんご三兄弟」 発売 JA全農2025年10月30日 -
【肉とビールと箸休め ドイツ食農紀行】ドイツで食べ物は高いか?安いか?2025年10月30日 -
最新の無人・自動運転トラクターを実演 クボタアグリロボ実演会 in加美を開催 JAグループ宮城2025年10月30日 -
東北6県の魅力発信「全農東北プロジェクト」とコラボ企画実施 JAタウン2025年10月30日 -
「JAタウン公式アプリ」リリースで開発・導入を支援 メグリ2025年10月30日 -
GREEN×EXPO 2027公式ライセンス商品を相次ぎ発売 横浜と大阪で期間限定店開設 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月30日 -
適用拡大情報 殺菌剤「ダイパワー水和剤」 日本曹達2025年10月30日 -
ローズポークを食べてプレゼントを当てよう 11月にキャンペーンを実施 茨城県銘柄豚振興会2025年10月30日 -
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月30日 -
国産の針葉樹100%使用 高耐久の木製杭「エコクレオ防腐杭」がウッドデザイン賞 コメリ2025年10月30日 -
近いがうまい埼玉産「埼玉県地産地消月間」11月に県産農産物を集中PR2025年10月30日 -
「長崎みかん」初売りイベント 大田市場で開催 JA全農ながさき2025年10月30日


































