JAの強みを活かし 独自人材派遣会社を【JA全国機関中核人材育成研修会(平成30年度)】(4)2018年12月3日
担い手対応、教育、労働力で提案
Cグループ発表
農業特化型人材派遣会社の設立
持続的な農業の発展に寄与すべく、安定した人材確保のために
農業労働力の不足が深刻になっているが、特に雇用就農者の離職率が高い傾向にある。その原因には、一般の企業に比べて規則や制度面での遅れが見られ、休日も少ない。この原因を分析すると、(1)労働環境の不備、(2)育成ビジョンの欠如、(3)需給のミスマッチ、(4)雇用就農者の経験不足、(5)採用難が課題として挙げられる。
これらの課題解決法として、農業経営体の労務管理を軽減する、雇用者と雇用就農希望者の橋渡しを行うコーディネーターを育成する、研修を充実する、などが考えられるが、そのためJAグループによる人材派遣会社の設立を提案する。
仮に人材派遣会社「株式会社JA農業支援隊」とする。その会社のサービスは、第1にJAグループのネットワークとノウハウを活かして、就農希望者を全国から集め、農業のプロをめざす人材の育成・管理を行う。そのため全国を7地区に分け、それぞれ事業所を置く。事業者はエリア内にある連合会やJAと連携し、応募者と農業法人のマッチングを担当する。
◆就農希望者の研修も
第2に就農教育研修制度を設ける。農業法人は、単なる労働力ではなく、一定の知識や経験のあるスタッフを求めていることへの対応などである。このため、人材会社は、コーディネーター、研修、経理・事務部門からなり、職員は各連やJAからの出向とする。また、連合会だけでは、JAの当事者意識が希薄になる恐れがあるため、JA・県域・全国連の共同出資で、全国連50%、県域、JAそれぞれ25%とする。
具体的なスケジュールは、JAとして初めての人材派遣事業になるため、全国で一斉にスタートするのはリスクが大きい。このため初年度は体制整備とし、2、3年目に関東地方で試験的に実施し、その状況をみて全国展開する。
人材のターゲットは、次世代の農業を担う20~40代とし、主にインターネットを活用した広報を展開する。ランディングページ(ホームページ)の作成、インターネット媒体でのリスティング広告(検索連動型広告)、YouTube広告、Instagram広告の活用などを勧める。また全国新規就農相談センターとも協力を強める。
提案する人材派遣会社の特徴としては、派遣者の資格の有無や就農経験によってレベル1~5に細分化し、レベルに応じた時給を設定する。これによって、派遣先の農業法人は経験・スキルをもった人材を常に求めるのではなく、コストと能力を天秤にかけて判断し、必要であれば教育・育成の一翼を担ってもらう。
JAは農業法人やその経営状況、経営者の特徴をよく知っており、適切な派遣者を紹介することができる。またJAは、必要な場合には新規就農希望者に宿泊施設のあっせんができる。さらに地元JAの退職者、農業高校の元教諭などを人材派遣会社のコーディネーターにすることで、農業法人の特徴や就農希望者の適性を正確に把握でき、よりスムーズなマッチングが可能になるなど、JAならではの特徴・強みを活かすことができる。
こうした取り組みで、農業法人・就農者のいずれも大きなメリットがある。農業法人は募集・採用にかける時間と労力を省くことができ、これを事業拡大に繋ぐことができる。また、派遣者との合意ができれば、直接雇用することも可能になり、それによって本当に欲しい人材だけを確保できる。
◆長期的に生産拡大へ
一方、就農者は、それぞれ就農の意思、農業のスキルの違いに応じて、就農でき、就職難の人や脱サラしたい人、将来独立したい人など、多くの人に門戸開放することになる。派遣事業で収益を上げることは難しいかも知れないが、将来的な農業従事者の増加による還元、つまりJAグループのめざす農業生産の拡大、地域の活性化への貢献につながる。
(関連記事)
・チーム研究の成果発表 JAの将来担う職員養成へ【JA全国機関中核人材育成研修会(平成30年度)】(1)(18.12.03)
・JA事業拡大に向け TAC体制の強化を【JA全国機関中核人材育成研修会(平成30年度)】(2)(18.12.03)
・協同学ぶ場づくりを 全国連職員も現場へ【JA全国機関中核人材育成研修会(平成30年度)】(3)(18.12.03)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日