【クローズアップ・全組合員調査中間集計】組合員の評価と意志 明確に 比嘉政浩JA全中専務に聞く2019年9月18日
JAの役職員が取り組んできた「JAの自己改革に関する組合員調査」について、JA全中は8月に中間集計をまとめた。46都道府県、319万人から回答が得られ、9割以上がJAの総合事業は継続すべきと回答している。中間集計結果の評価と今後の取り組み方針についてJA全中の比嘉政浩専務理事に聞いた。
-「JAの自己改革に関する組合員調査」(以下、全組合員調査)は、中間集計段階(5月末まで)で、46都道府県・587JAにて、約481万人の組合員に対して調査を実施し、319万を超える回答を得ました。どう評価しますか。
これだけ多数の訪問・面談件数を実現していただいたことに心から感謝いたしております。調査の実施とあわせ、組合員の皆さんと膝詰めで意見交換する対話運動を提起してきましたが、それを各JAが実践され、これだけの成果を挙げられたことに敬意を表します。こうして意見交換の場を持ったことは、必ずやJAの運営に生かされ、JA自己改革を進めていく一助になっていくと思います。
調査自体は全国統一の内容ですが、対話を通じてあげられた組合員からの個々の要望に各JAが応えることで、JAの事業や活動の見直しにつなげることができる。そのことの意義は大きいと思っています。
今回の取り組みでは、自己改革の「見える化」に取り組んだことも重要で、漠然とした評価ではなく、何が評価されて、どこにまだ課題があるのかということが明確になったと思います。
◆JA営農関連事業約8割が「満足」
【図1 営農関連事業への期待度・満足度】
-JAの営農関連事業についての期待度(「期待している」「やや期待している」の合計)は全体として7~8割、満足度(「満足している」「やや満足している」の合計)も約6割と評価されています。そのなかでも認定農業者は、すべての事業で正組合員全体を上回る期待度となっています。これをどう見ますか。
調査結果については、いまだ中間集計段階であり、最終的な評価は時期尚早ですが、現段階の数字をもとにお話しします。まず期待度については、高い期待をいただいていることに感謝したいと思います。認定農業者をはじめ大規模な農業経営体が地域農業を支える傾向が強くなっているなかで、各JAが、このことに意識を強く持って、個別の事業提案など、担い手経営体とのコミュニケーションを強めてきた成果だと思います。
-認定農業者の回答は、JAの必要性や総合事業の継続に関する設問でも、正組合員・准組合員よりも肯定的な傾向となっています。
農業を主たる職業とされている方がJAの必要性、あるいは総合事業の必要性を強く実感されておられるのであれば、大変にありがたいと思っています。産地としての戦略を含め、地域で結集することについて、JAのポテンシャルに期待が高いということではないでしょうか。
◆9割が准組の利用制限「しないほうがよい」
【図2 准組合員がJA事業の利用を制限されることについて】
-准組合員の事業利用規制に関する設問では、正・准組合員の約9割が「制限しないほうがよい」と回答しています。
全組合員調査には2つの目的があります。1つめは、自己改革への評価などに関する組合員の声を的確に把握すること、2つめは、組合員との関係強化に取り組むことです。2つめの目的に関し、意義が大きかったことは前述の通りですが、1つめの目的についても、中間集計結果は大きな役割を発揮しています。
4月24日に開催した食料・農業・地域政策確立集会では、自民党の二階幹事長から、准組合員の事業利用規制について、「全組合員への調査をされているが、最終的に組合員の声・判断で決めればよい」とのご発言があり、このことについては参院選の与党公約でも盛り込まれました。また野村農林部会長からも、「全組合員調査結果に期待している」とのご発言がありました。吉川農相(当時)も、6月7日の会見で、准組合員の事業利用規制に関する検討にあたり、与党の決議を踏まえる旨のご発言をされていますし、中間集計結果公表後の8月15日の会見では、中間集計結果に関する見解として、「組合員が自己改革を評価していることに対し、一定の評価をする」とご発言されています。
調査結果は、中間集計ではありますが、現在のところ、准組合員の事業利用規制に関して、正・准組合員の約9割が反対しています。組合員の意思は明解に示されていると考えています。
また総合事業の継続に関しても、全組合員調査の調査結果の中間集計では、正・准組合員の約9割が継続すべきと回答しています。一方、各JAにおける信用事業運営体制のあり方検討の結果をとりまとめましたが、613JAのうち、5JAを除き、608JAで総合事業を継続すると判断しています。この各JAの判断も、組合員の意向に沿った判断といえます。
◆JAグループの底力を示す調査
-調査には今年末まで取り組むJAもあります。改めてこの取り組みの意義と今後の方針についてお話ください。
現場は大変な努力をされていると思いますが、中間集計結果を見ると、やはりそれだけの成果、効果が得られる取り組みであると感じています。
また、この全組合員調査は、実際に訪問・調査をする現場の負担も非常に大きいものであることはもちろん、相当規模の経費もかかっており、全国3連にご協力をいただいて実施しています。そうした負担のなか、中間集計で約320万人から回答を得ていますが、民間の調査では他に例のないスケールのものであり、JAグループの底力を示すものと思います。
こうしたことをふまえ、引き続き調査を実施するJAにおかれましては、ぜひご尽力をお願いしたいと思います。
また、組合員との対話は、本来、継続して取り組むべきものです。今回は、調査を契機とした対話運動を提起しましたが、今後の対話運動についても、改めて取り組み方針を提起したいと考えています。
このほか、中期的な課題になりますが、大澤農林水産審議官が経営局長であった際に、JAcomのインタビューのなかで、准組合員の位置づけに関して問題提起をされ、JAグループ自らの提案を待ちたいと話されました。我々としても、それに応える提案をしなければならないと思っています。ただ、准組合員の位置づけは、JAの目的や事業のあり方と密接に関連します。准組合員の定義だけを提起するのではなく、実態もふくめ、しっかりと組織で議論をしなければなりません。これは、准組合員の事業利用規制だけに対応するものではなく、いわゆる農協法改正5年後条項(農協法附則第51条第2項の農協法全体見直し条項)に対応するものです。今後のJAのあり方にもつながる内容であり、腰を据えて時間をかけた協議をJAの皆様にお願いしていきたいと考えています。
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