小さなJAでも特色ある事業で安定成長を続ける JAみっかびの実践事例とスマート農業を報告 新世紀JA研究会(3)2025年2月12日
新世紀JA研究会と静岡県のJAみっかびは2月6日、静岡県浜松市で「新世紀JA研究会」の第32回全国セミナーを行った。「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力」をテーマに、JAみっかびの経営実践とスマート農業の報告を行った。初日の最後に大会アピールを採択し、7日はJAみっかびの柑橘選果場と隣接する特産物直売所を視察した。
産地持続化に向けた三ケ日町柑橘出荷組合(通称マルエム)の取り組みを伊藤篤JAみっかび営農柑橘部長が説明した。同組合は任意組織で「最大の強みは日本一のミカン生産量と完全計画出荷体制」という。農地の基盤整備や選果場整備、販売戦略、スマート農業などの推進の主体となっている。
組合員数や栽培面積は減少を続け、販売金額も伸び悩んでいる。農家の経営状況も「出荷量、販売金額は右肩上がりだが、コストアップで実感はもうかっていない」。そこで、安定的な利益確保と省力化に取り組んでいる。温暖化対策では「片面交互結実法」(着果面と不着果面を年ごとに交互に繰り返すこと)、労働力確保では「外国人材の活用を模索している」。直販強化では、ミカンの消費を拡大するマーケティングの強化に向けて、選果場を一般の消費者も見学できるミュージアム的な要素を取り入れた体験型施設に改装し、傷のあるミカンをエシカル(倫理的な)商品として組み合わせた提案も行っている。
DXでスマート農業を推進
選果場にAI選果システムを提供している、シブヤ精機の二宮和則開発本部本部長は、AIの進化とスマート農業の展望を語った。同社は全国のJAに選果機だけでなく「AIセンサーや情報システムまでトータルに提供」しており、JAみっかびには最新の「ディープラーニングを用いた青果物の外観選別システム(AI外観センサー)」が導入されている。
選果においては選果場での作業人員だけでなく、出荷前の負担が大きい「家庭選別を半減し、品質の維持と選別作業員を減らしたい」という要望を受け、AI外観センサーを入れた。光学的な青果物の糖度や機能性成分の分析などに加え、外観品質からキズや腐敗の状態まで検出、病傷害果の判別まで行える。得られたデータは「共選施設だからこそビッグデータとして収集できる。選果場がデータセンターとして機能することで、農作業の現場だけではなく、農業全体のスマート農業化を推進できる」と語った。
最後は、JAみっかびのECを支援するアグリスマイル(東京)の中道貴也代表取締役が「農業の未来をつくる」をテーマに、DX(デジタルトランスフォーメーション)による農業分野での新たな収益向上策を語った。
DXは「システム会社が提供して終わりではなく、保守運用の継続のため、常に人と資金のコストがかかる」。成功のカギは発注側のJAや企業とシステム会社「双方の信頼関係」だ。JAみっかびとの間でも、ECのスマートフォン用ユーザー画面が「注文用紙に近い操作感がないと使いにくく普及しない」という助言を生かして製作。オンラインならではの「希釈液量の自動計算や農薬の確認などの機能」も搭載した。
一般的に、自社のEC(ネット通販)サイト導入後も思ったより売り上げが伸びないことが多い。売り上げを伸ばすためには、メディアの発信を強める認知度向上、インスタグラムの活用などブランディング、検索連動型広告への投資などSEO(検索エンジン最適化)戦略が不可欠であると指摘した。こうして得られたデータを解析することで「農業経営は農業者の感覚から事実へと転換し、生産者の収益を最大化するための成功する意思決定」に向かう。
JAみっかびでのECが大きく成長している実績から「EC事業単独ではなく、産地の販売戦略に資する事業」として進める必要性を語った。同社が提供するシステム「KAISEKI」はそのための「産地戦略」と「営農指導」を提供している。JAみっかびでとは、こうしたデータ活用を24年から農水省「産地構造転換パイロット事業」として本格的に着手。27年度からの運用開始を目指している。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日