小さなJAでも特色ある事業で安定成長を続ける JAみっかびの実践事例とスマート農業を報告 新世紀JA研究会(1)2025年2月12日
新世紀JA研究会と静岡県のJAみっかびは2月6日、静岡県浜松市で「新世紀JA研究会」の第32回全国セミナーを行った。「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力」をテーマに、JAみっかびの経営実践とスマート農業の報告を行った。初日の最後に大会アピールを採択し、7日はJAみっかびの柑橘選果場と隣接する特産物直売所を視察した。
24年に竣工した新特販課流通センター
新世紀JA研究会の井口義朗代表(JAみっかび組合長)が開会あいさつに続いてJAみっかびの概況を報告した。管区の静岡県浜松市の三ケ日町は人口1万3280人でJAの組合員数は2607人(正組合員1498人、准組合員1109人)、JA職員はパートタイマーを含めて155人(ミカン収穫時は臨時従業員40人程度を追加)と「ほんとうに小さなJA」と話した。管内の耕作面積は94%が柑橘園地で、23年の販売品取扱高約97億円のうちミカンが77.4%を占め「24年は105億円程度になる見通し」という。
JAみっかびの管内(地図)
1951年に「貯払い停止という実質の倒産」を経て再建を進めた。91年以降は浜松地区での農協合併を検討したが「合併を見送り、単独JAとして歩んできた」。経営は「平均経済活動量と組合員数、利用率をかけ合わせた事業分量」という考え方で基盤を強化。「ミカンを中心としたブランド力を生かした販売戦略、直販の強化」を重点に農業所得の向上と利益の確保に取り組んでいる。
信用・共済・購買・販売の4事業の事業総利益は16億円前後で推移している。特色は指導事業の一部にあてる賦課金を組合員から徴収し「利益を出して余剰分を『事業分量配当金』として組合員に還元」していること。23年度は「賦課金が指導費用約3000万円の半分にあたる約1600万円、事業分量配当金は約1億円」を還元している。
最大の伝統イベント「農協祭」であいさつする井口組合長
職員と組合員、地域との信頼関係を強めるため、伝統イベントの農協祭や「JAの係長会が計画、実行して次世代と交流する」サマーフェスティバル、地元小学校での食育活動にも取り組んでいる。総代会後には「全組合員を対象にした農協支部座談会」も行い、出された組合員の意見を運営に生かしている。
91年には国内最大規模の柑橘選果場を作ってAIセンサーやロボットを導入、省力化・効率化を進めてきた。24年には「直売の売り上げが8億円を超え、物流の多様化に対応する」ために農産物流通センターも完成するなど「小さくとも特色のある組織を主体に運営している」と結んだ。
10年後の姿と直販事業
実践の具体策はJAの部長職など現場担当者が説明した。縣裕一総務部長は「10年後の目指す姿」として設定した「儲かる地域農業をマネジメントする協同組合」をテーマに、農業生産の維持・拡大と経営環境に対応した事業・経営の転換を語った。
全国のミカン収穫量はピーク時(1975年)から8割以上も減少しているのに対して、JAみっかびは3万t前後の収穫量を維持している。これをコア・コンピタンス(競争優位の中核的能力)に設定した。一方「柑橘出荷組合員数は減少を続け、年齢構成は70歳代以上が急増」している。
こうした環境の変化を受け、久米孝征理事金融共済部長は単独JAとして存続するための事業戦略として「販売チャネルの多様化による農業所得向上」を掲げ、特に直販事業に力を入れてきたことを説明した。EC(ネット販売)の販売実績は公式サイトを開設した21年との比較で、24年は3.3倍(予測値)へと急拡大を続けている。課題であった発送体制強化のため、24年に選果場に隣接した「新特販課流通センター」も完成している。
組合員への還元策の事業分量配当金は23年は総額約1億円を還元し「特販事業も初めて配当(柑橘の荷受数量1キロあたり1円)」し、今後も継続する考えを示した。
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