【JA全農 水稲直播栽培研究会】 「湛水直播」「乾田直播」の可能性を探る(2)2026年1月22日
JA全農耕種総合対策部が1月21日に開いた「水稲直播栽培研究会」で、農研機構の本部企画戦略本部セグメントII理事室の古畑昌己室長が「水稲直播栽培の現状と課題」をテーマに基調講演を行った。
農研機構の本部企画戦略本部セグメントII理事室の古畑昌己室長
課題は雑草防除
移植栽培に対して、直播栽培はほ場に直接種をまく。播種時にほ場に水がある湛水直播、水がない乾田直播に分かれる。2023年の直播栽培面積は水稲全体の約3%を占め、密苗移植栽培の普及開始に伴い、2019年以降の湛水直播は減少し、乾田直播は増加を続けている。
直播栽培の課題は雑草防除で、湛水直播は入水から短期間に、粒剤やフロアブル、ジャンボ剤を移植栽培と同様に散布できる。一方、乾田直播は入水までの長い乾田期に、液剤散布を適期に行う。適期に防除できないと、防除がうまくいかないケースが多い。
雑草防除の湛水直播と乾田直播の比較
湛水直播は、表面播種による倒伏や鳥害、土中播種は出芽しにくいなどの弱点がある。倒伏対策では、稈長が短く直播適性が高い品種の利用などが挙げられる。鳥害対策では鉄コーティング種子(クボタ、全農が推進)、出芽対策ではカルパー種子やべんがらモリブデン種子、リゾケア種子、催芽種子(無コーティング湛水直播)の資材開発が進んでいる。
鳥害の根本的な対応は難しく、カモやカラスの生息地近くでの栽培を避けるなどの配慮が必要だ。また、食害があるスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)が関東以南でも繁殖しており、有効な殺虫剤(メタアルデヒド粒剤)が出ている。
農研機構(NARO)方式乾田直播
乾田直播では、農研機構(NARO)方式の普及を進めている。2024年に全国で9200haに普及し、特に北海道や東北で進んでいる。2025年は1万haを超える見込みで、5年間で2.5倍に増加する。
移植栽培や湛水直播では、耕盤層に水をためる代かきが必要だが、NARO方式乾田直播は耕盤層が不要で、鎮圧で漏水を防ぐ。作業の省人化により、労働時間は移植体系の38%。適期雑草防除技術で移植並みの収量を確保できる。水稲栽培後の畑作では湿害が少なく、移植栽培後に比べて子実トウモロコシ、大豆、麦などが多収化できる。
除草剤散布は、長い乾田期間に防除(液剤散布)を適期に行うことが重要で、出芽前と出芽後の2回の防除が必要となる。出芽前の1回目の散布適期判断は、農研機構のマニュアルに示された方法で生産者が直接計算したり、農業気象データを用いて予測したりするが、有用情報入手に伴う解析者の負担が大きい。アメダス気象データを用いた「乾田直播出芽予測お知らせ」を農薬メーカーと共同で開発し、2月初旬にリリースする。出芽後の2回目の散布適期判断は、「ノビエ葉齢判定アプリ」をアンドロイド版、iPhone版ともにリリースしている。
指導マニュアルは地域版拡大
NARO方式乾田直播の特徴と普及状況
また、NARO方式乾田直播では、普及指導用マニュアル「標準作業手順書(SOP)」の地域版を作成している。北海道版、東北地方版、九州版を公開済みだ。しかし、本州は広域で、日本海側と太平洋側では気象条件も異なるため、地域の条件に合ったマニュアルが必要となる。2024年までに地方版3編、地域版6編を公開済み。2025年は東北地方で地域版6編を公開予定で、今後は関東以西で複数の地域版を作成する。
NARO方式乾田直播の技術普及は地域差があり、最も進んでいる東北でも、消雪が遅い日本海側は進んでいない。そこで、消雪時期マップなどの視覚情報を示すことで、地域の技術導入の判断がしやすくなる。今後は、北陸や東北などの日本海側で可視化情報を提供していく。
初冬播き栽培、節水型乾田直播を紹介
岩手大学で開発した初冬播き栽培は、作業分散、低コスト、安定生産が可能とされる。前年の初冬に播種し、春の播種と同程度以上の収量が期待できる。種子コーティング、播種深度、土壌鎮圧といった開発技術により、導入農家数は2023年で22生産者、117haとなっている。技術面では、出芽率向上や除草の環境対策などの開発が進められている。
節水型乾田直播栽培は、水管理作業の削減やメタン発生の抑制効果があり、環境負荷低減技術とされているが、雑草の繁茂や減収事例も見られる。農水省は試験結果に基づくマニュアル化や指導が必要と考えており、農水省の「田植え不要のコンソーシアム」ではヤマザキライスの事例などが紹介された。
一般的に、節水型でも十分な生育と収量の確保には水が必要で、雑草の発生リスクは高まる。そのため、農水省は「試験結果に基づくマニュアルや指導が必要」と考えている。また、農水省は、品種ではなく、ほ場への入水など栽培面から「水稲」を判断している。「陸稲栽培」と判断された場合、薬剤使用に制限がかかる可能性がある。同時に、メタンの発生は抑制されるが、一酸化二窒素の発生が高まる可能性や、水生生物が減少する可能性もあり、今後、十分な検証が必要だ。
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