【JA全農 水稲直播栽培研究会】直播は水田農業の中核技術に 梅本雅氏(3)2026年1月23日
1月21日に開いたJA全農の水稲直播栽培研究会ではJA全農テクニカルアドバイザーでファーム・マネジメント・サポート代表取締役の梅本雅氏が「稲作経営の展開と水稲直播栽培の意義」と題して基調講演を行った。
梅本雅氏
労働力確保 難しい現実
わが国の基幹的農業従事者の平均年齢は68歳に達している。水稲の移植作業では苗箱の補充などに補助者が必要だが、補助者も同様に高齢化しその確保が困難になっている。
移植栽培を続ける限り、苗の取り扱いをどうするかという問題は続いていく。ロボット田植機を導入しても稲補充は必要で田植えの無人化は困難。一方、基幹的農業従事者のうち、かつては半分以上が女性だったが、現在は36%まで減ってきている。自営農業に従事する世帯員は減少しているが、そのなかでも従事日数の少ない人が大きく減少しており、すなわち補助労働力が減っている。

集落営農組織は品目横断対策の導入で2006年以降大きく増加したが、その数は横ばいから減少傾向を示している。そのなかで法人化率は高まっており、従業員など特定のオペレーターが作業を行う「担い手型」の集落営農が増えている。つまり、集落営農でも補助者を確保していくことが難しくなっていることを示している。
稲作の労働時間は減少傾向となっているが、作業別の労働時間では春作業の割合が44%と大きく、省力化を進めるうえで主要なターゲットとなる。こういうなかで女性の補助労働時間が減っているということになる。
このような労働力の減少から農地の貸し出し希望が増加し、それらの農地を借りて大きく規模拡大する経営が生まれている。2025年センサスでは20ha以上層の面積割合は初めて5割以上に達した。その大規模経営では雇用型の法人経営を中心に急速に面積拡大が進んでいる。
2015年から20年にかけては5ha以上層が増加したが、20年から25年では増えているのが15ha以上層で5~10ha層は減少した。稲作では規模拡大に向かう経営層が限られてきていることを示している。
中山間地でも大規模経営
これは平地だけの話ではなく、中山間地域でもみられ50ha以上層の面積割合は平地と同様に10%近くを占める。つまり、中山間地域でも大規模経営への対応が求められている。
こういう状況のなかで水田農業の方向を考えると、稲作も畑作と同様に機械作業を中心とするワンマンオペレーションによる体制への転換していく必要があり、水稲直播栽培はその作業体制を構築していくうえで必須の技術といえる。
水田輪作体系が必要
また、雇用型の経営展開が期待されるが、他産業との人材獲得競争が厳しくなるなかで従業員を確保していくには、賃金や労働環境の整備は必須だ。常時雇用者を確保し給与水準を向上させていくには、年間を通した労働投下量の拡大と、労働投下当たりの耕作面積の拡大など、生産効率の一層の向上によって1人当たり売上高を増やすことが必要になる。そのためには水田輪作体系の構築が有効でその技術として水稲直播栽培がある。
移植栽培の労働時間10a当たり9.57時間に対し、乾田直播栽培は6.83時間と少ない。代かき、田植えといった春作業がない。

水稲直播栽培の推進方策としては補助労働力の確保が困難という課題を抱える水稲中心の大規模家族経営(経営面積20~40ha)と中山間水田地帯の集落営農組織がターゲットになる。普及方策としては人力作業の解消とワンマンオペレーション化の意義を伝えるほか、出芽日や雑草発生の予測、大区画化に対応した地力ムラの解消のためスマート農業技術を活用した栽培の安定化も課題となる。
また、農地流動化が進む平坦水田地帯で水田輪作体系の構築に取り組む大規模水田作法人もターゲットとなる。乾田直播を念頭に移植→乾田直播→麦→大豆といった水田輪作体系を構築するとともに、直播栽培の導入に合わせて農地の面的集積や大区画化なども検討する必要がある。また、作期を分散させる観点から極早生から晩成品種を組み合わせるなど、経営全体をどう構築するかも課題となる。
補助労働力確保の困難性や、規模拡大の急速な進展を踏まえると水稲直播栽培の導入は不可避。愛知県や福井県などでは普及面積が1割を超え、すでに一般的な技術となっている。新たな水田農業を展開してうえで水稲直播栽培は中核技術として期待される。
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