JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと
第30回 「カット野菜ビジネスを通じた成長戦略」【林正二((株)旭物産代表取締役社長】2017年9月30日
超多忙な日程を割いて(株)旭物産社長の林正二氏に「カット野菜ビジネス」にかかわるこれまでの活動の御経験と成果、そして今後の目標と目指す方向について最初の講義をしていただいた。
まず、その核心を簡潔に紹介しておこう。
「需要のますます増えるカット野菜の製造・販売でわが社は業績を伸ばしてきた。仕入れは茨城県内の契約栽培が主力であり、徹底して品質にこだわり、HACCP、FSSC22000など国際的な品質保証認証も取得している。また、残渣の堆肥化にも徹底して取り組んでいる。
食の安心・安全、環境、消費者の要望に合わせた商品づくりなどが基本課題であると心に誓い多面的に学んできている」。
以上のような基本姿勢のうえで、先ず概要を紹介された。要点のみ記しておこう。
〔会社概要〕
社名 株式会社 旭物産
創業 1971年5月
資本金 2000万円
事業内容 もやしの生産、野菜加工品9品目にわたる製造
従業員数 690名(正社員180名)
仕入先 国内各産地契約農家ほか、主力は茨城県内
販売先 スーパー、コンビニ等の大手量販店
売上高 125億600万円(2016年9月期)
以上のような概要を示されたうえで、旭物産の常にめざしている目標として次の3つを掲げている。
(1)旭物産は健康創造企業
(2)野菜を通じて人々を健康にし、幸せにする
(3)世の中の役に立つこと
この3か条をモットーにして、3つの工場でフル生産を行っている。
(1)小美玉工場(茨城県小美玉市、敷地面積は5.0ha)で、もやしの生産および加熱調理用カット野菜の生産。
(2)鉾田工場(茨城県鉾田市、敷地面積は3.3ha)で、大根のツマの製造、促成小物の仕分け工場。
(3)本社工場(茨城県水戸市、敷地面積7.3ha)では、生食用カット野菜の製造、
などを行っている。
〔売上高の推移〕
売上高は、第1図に示したように年々着実に伸び2017年9月(予定)には140億円に迫る勢いで伸びてきている。
しかし、その伸びも、次の第2図に示したように、生食用カット野菜の伸びが2012年以降急激に伸びてきて、最近では売り上げの半ば近くを占めている。これは、本社工場で生産している野菜サラダ用の製品や薬味用のネギということであった。もちろん、第2図にあるように、もやしや加熱用カット野菜、大根ツマなども伸びてはいるものの、その伸びは相対的に小さく、この5年間で見るかぎり野菜サラダを中心にした生食用カット野菜の伸びは大きく、林社長によると、この傾向は今後さらに強まる、つまり、野菜サラダ用の生食カット野菜の需要がさらに伸びていくのではないかと、予測をたてていた。
〔主な販売先〕
旭物産の主な販売先について林社長の示した資料を整理し10位まで順位別に並べると、(1)西友、(2)マルエツ、(3)オーケー、(4)カスミ、(5)ファミリーマート、(6)マルイチ産商、(7)原信、(8)パルシステム、(9)エコス、(10)マルト、となっており、有力な東京都を中心にした全国展開のスーパーが上位にあり、県内のスーパーもあるが、パルシステムという生協系列の業者もいて実に多彩である。
〔原料確保・調達の重要性〕
さて、原料となる野菜は多岐にわたるが、その内訳を10位まで示しておけば、次のようになっている。
旭物産が原料として使用した野菜は合計34品目にわたり実に3万4,922トンとなるが、その内訳は第3図に示したようになり、大根、キャベツは実に1万トンをはるかに超え、葉菜、根菜も多岐にわたっていることは第3図に示した通りである。
さらに、第4図に主要品目の県別集荷比率を示しておいたが、大根、キャベツ、レタスともに茨城県が1位を占めており、野菜の生産県である茨城県に旭物産が立地している優位性はこれらのデータからみて判然とすることである。
もちろん、このセミナーに参加している府県のJAもこの旭物産に出荷しているかも知れないので、帰って是非とも調べてほしいと私はこの林社長の話を聞きながら考えた。
さらに、林社長は人間の食を預かる産業として、(1)社員教育の徹底、(2)社員の福利厚生施設の充実(3)社員のしつけの重要性などを話されたが、食品加工産業としては基本中の基本であることをつけ加えておいて、ここでは省略させていただく。
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