JAの活動:JA全農改革実践レポート
【JA全農自己改革実践レポート】第2回 イチゴ選別VFへ委託2019年3月19日
JA全農グループは自己改革の柱として、園芸事業では実需者への直接販売の拡大を促進するためのインフラ整備を進めている。福岡県本部では平成21年から県内の各産地から青果物を荷受けして包装・加工し実需者へ直販するVF(ベジタブル・フルーツ)事業に取り組んできたが、昨年11月から八女郡広川町に新たな広域集出荷施設「県南VFステーション」を稼働させ、さらなる生産振興と直販事業の強化に取り組んでいる。
◆多品目経営にメリット
同県では高齢化と農家人口の減少が続くなか、イチゴ「あまおう」をはじめ果樹のオリジナルブランド品づくりやアスパラガス等の需要の高い野菜への転換で農業生産額を伸ばしてきた。
ただ、イチゴのパック詰め作業は労力がかかる。そのためこれまでJAがパッケージセンター等を設置し、希望する生産者からの出荷を受け入れる事業を展開してきたが、規模拡大意欲の高まりや高齢化の進展で希望者はさらに増えてきた。これに応えるために設置したのが県南VFステーションであり、広域の集出荷機能と選果・選別・包装加工機能、さらに買取直販機能を備える。
昨年11月の稼働開始からはイチゴについてJAくるめ、JAみづま、JAふくおか八女の3JA管内の出荷希望者から荷受し、等階級評価、パッケージ、出荷作業までの業務を担っている。
JAふくおか八女パッケージセンター広川地区代表の稲員英治さん(55)はイチゴとブドウ、米を栽培している。5年前からJAのパッケージセンターを利用してきたが、11月からはこの県南VFステーションに出荷している。
「繁忙期はイチゴの収穫からパック詰め作業が朝から夜中の2時までかかっていましたが、パッケージセンターを利用するようになって昼間に作物の手入れ作業が十分できるようになりました。本当に助かっています」と稲員英治さん(写真上から2番目)。
イチゴ栽培は3月の育苗管理から始まり9月に定植、11月から5月までが収穫期と1年以上かかるため、繁忙期の3月から5月はもともと翌シーズンの準備と作業が重なる。さらに稲員さんにとって8月の盆前出荷をめざす無加温のブドウ栽培は5月が生育の大事な時期で手入れが重要になる。
このように多忙を極めるため「5月に収穫するイチゴは加工用として出荷していました」という。それがパッケージセンターを利用することによって評価、選別されて商品化されるため無駄に加工用になることもなくなった。また、1日の時間と体力に余裕ができて手入れに注力できるため「ブドウの品質もよくなった」と話す。
「高齢化が進むなか、こうした施設を利用することでイチゴ経営が続けられるメドがついたと話す生産者もいますし、若い人たちには規模拡大の意欲も出てきています」とパッケージセンターの設置効果がうかがえる。
(写真)あまおうの出荷作業
(写真)県南VFステーション
JA全農ふくれん営農開発部次長で県南VFステーションの黒瀬克之場長は「多品目経営では農作業が重なるピーク時期をどう解決するかが課題。パッケージセンターへの委託料はかかるものの、経営全体の改善を支援できる。生産を拡大しブランド力を高めるためステーションの機能をいっそう発揮していきたい」と話す。
県南VFステーションでは、市場価格等で生産者からJAを通じて農産物を買い取り、販売先のニーズに応じた包装加工を行う。販売先は生協、量販店、業務・加工・輸出など県本部が直接販売する。
パッケージする品目はイチゴを中心として夏秋期には他品目を取り扱う予定で、効率的な周年稼働体制の実現をめざすとともに、販売先の開拓を課題としている。
本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
(関連記事)
・JA全農の取扱高4兆6382億円 平成29年度の取扱高実績(18.07.30)
・今年度の全農自己改革の重点的課題(18.07.30)
・全農の販売事業改革着実に【岩城晴哉・JA全農代表理事専務】(18.06.05)
・実需に基づき園芸産地づくり【酒井 肇・JA全農園芸部次長】(18.06.04)
・【山崎周二JA全農代表理事専務に聞く】農家手取り確保のため さらなる「自己改革」を(18.02.19)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日
-
キウイブラザーズ新CM「ラクに栄養アゲリシャス」篇公開 ゼスプリ2025年4月30日
-
インドの綿農家と子どもたちを支援「PEACE BY PEACE COTTON PROJECT」に協賛 日本生協連2025年4月30日