JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは77【今さら聞けない営農情報】第196回2023年4月15日
前回まで、肥料原料の価格の高騰に対応した、政府の肥料価格高騰対策事業の支援を受けるための化学肥料低減取組メニューの内容についてご紹介してきました。その中で、今後の農業の発展・維持のためにも国内の肥料資源を活用する必要があり、そのためには、堆肥、汚泥肥料、食品残渣、有機質肥料、緑肥作物といった有機質資材の活用が重要になります。そこで前回より、有機質資材を有効活用するために必要な知識についてご紹介しています。
前回より「化学性の改善」について紹介していますが、土壌の化学性を知ることは施肥の基礎知識としては重要なのであと何回かにわけてご紹介していきます。
前回がpHの矯正について紹介しましたが、pHは実は作物の養分吸収によって酸性側に傾いていきます。なぜかというと、作物が土壌中の栄養(陽イオン)を吸収するとき、根が有機酸(陽イオンである水素イオン)を放出して、その代わりに土壌に吸着していたカリウムなどの陽イオンを吸収するからです。
つまり、作物は、土壌に吸着している栄養(陽イオン)を水素イオンと交換することで栄養を得ていますので、作物が栄養を吸収するたびに土壌中に水素イオンが増えていくことになります。ここで一つpHのことを思い出して下さい。pHとは土壌中の水素イオン濃度を示しており、水素イオン濃度が濃くなるほど酸性の度合が高まります。つまり、作物が栄養である陽イオンを吸収するたびに水素イオンが土壌に放出され、土壌は酸性に向かっていくことになります。
もちろん、前回ご紹介したように雨水等でも酸性が高まってきますが、実は作物をつくり続けることでも酸性度は高まっていくのです。ですので、耕作地では定期的にpHの矯正が必要になるのです。
土壌中の陽イオン=栄養という話が出ましたので、土壌の保肥力についてもご紹介しておきます。土壌の成分の1つである粘土はマイナスに帯電しており、作物の栄養となるカリウムイオンなどの陽イオンを吸着する能力を持っています。吸着できる陽イオンの量は土壌の種類によって異なり、その吸着できる量の大小を表すのが陽イオン交換容量といって、CECと略されます。このCECの大きさは、乾土100グラム当りに保持することのできる陽イオンの数で示されており、meqという単位で示されます。このCECの値が大きい土壌ほど作物の栄養となる陽イオンをたくさん保持することができますので、そういった土壌を肥沃な土壌とか、保肥力の大きな土壌とかいっています。この保肥力を高めるのには腐植を施用することが有効で、腐植土壌を多く含む堆肥を定期的に施用すると肥沃な土壌になるというのはそのためです。
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