JAの活動:農協改革を乗り越えて -農業協同組合に生きる 明日への挑戦―
【神出元一・JA全農代表理事理事長】生産者が実感できる「改革」実行(後半)2017年10月30日
チャレンジ精神で持続可能な農業を実現
これから生産年齢人口が減少し、人口も減って消費も減るような社会になっても、食と農は大事であり、安全・安心で美味しいものを食べたいと思い、6~7割の人は国産を支持してくれています。そのなかで私たちの事業はどこに狙いを定め、何を重点にするかを、改革プラン策定時にかなり議論しました。
--先ほども若干お話がありましたが、販売についてはかなり思い切った提案をしていますね。
いろいろな手法を駆使し、実需者との事業連携や出資、川下では低温・冷凍施設やカット野菜工場を設置するなどのインフラ整備を進めていきます。こうした取り組みができる取引先を今まで以上に増やしていけば、販売計画の達成はおのずと見えてくると確信します。
--しかし消費は必ずしも伸びていません...。
量販店などの小売店は競争が激しく、eコマースにも侵食され淘汰されるなど、リテールの世界は確実に変化すると思われます。そのことは全農にとって大きなチャンスだといえます。これからは農畜産物を持って売場を直接リードし、消費者に支持されて量販店や食品スーパーが生き残るためにはどういう商品を揃えてどう売るかという提案をしていく。そして安売り・モノ売りではなく「コト売り」に徹し、一定の価格も維持していく。米や野菜に限定するのではなく、品目を超えた総合的な提案をすることが営業開発部の仕事になります。
--輸出も大きなテーマですが...。
長い目でみれば、国内消費は縮小していきますから、海外のマーケットに日本の農畜産物を認め、買ってもらえるよう、相手先国の嗜好や販売チャネル、検疫とか通関や為替の問題について知ることが中長期的戦略です。
輸出で最大の問題は、日本の農畜産物は品質が良く美味しいというのは、こちらの"独りよがり"で、相手国の人の嗜好や食文化に合わせたものにしなければいけないということです。物流問題もあるので、ターゲットを決め、ほ場も決めて生産しないといけないので、そうしたことの研究をしています。
--輸出問題との関連ではGAPもありますね。
GAPには、全農としても専門体制を設置して取り組んでいます。単にGAPが販売につながるということだけではなく、工程管理や業務の標準化にも役立つ取り組みと考えています。また、部会など集団認証に取りくむことで、全体的な品質向上につながると思います。2020年のオリンピック・パラリンピック大会の食材調達をきっかけに間違いなくそうした機運が高まっていくことと思いますので、守りではなく"攻め"の姿勢で取り組みます。
◆深刻な労働力不足問題に 取り組む
--かなり現場に行かれていると聞きましたが、現場で感じることは何ですか?
現場をまわって一番心配になってきたことは、人手・労働力問題で、これは深刻ですし、すぐにでも取り組まなければいけない問題です。
「プロダクトアウトからマーケットインへ」といわれますが、労働力がなくなりプロダクトが出てこなくなります。必要な野菜や米、畜産物などの生産基盤をどれだけ維持するかを考えると、労働力不足問題は深刻な課題を提示しています。重量野菜や施設園芸の収穫作業は労働力を確保するとか、省力化をしなければ大変なことになると感じています。
--具体的には...。
一部の地域で動き出していますが、定植や収穫などの農作業支援とか、畜産ではすでに始まっていますが、ICTやAIを活用したドローンやロボット農機などを駆使して、できるだけ人手をかけない労働軽減や省力化です。すでにそうした取り組みでうまく回転している地域は栽培面積も増えていますから...。
外国人技能実習生も法律が変わり、選果場とか加工場でも従事できるようになりましたから、それも活用できます。さらに農機レンタルとか、ドローンの技術体制を整備し、農家の営農支援をする事業体をつくることに一歩踏み出さなければいけないと考え、農機のシェアリングなどを組み込んだ現場対応型の仕組みを検討していますし、JAと協力して実現していきます。
◆面白く楽しく 農業ができるように
--最後にJAの役職員そして全農の職員の皆さんへのメッセージを...。
全農は悪しき所は改革し、新しいチャレンジの気持ちで変わります。私たちの目線は、新しい若手の担い手ですし、JAのTACがどんどん育ってきていますから、彼らとしっかりスクラムを組んで、労働力問題も含めて現場の諸問題に本格的に取り組まなければいけないと考えています。女性にも入っていただいて、面白く楽しく、日本の農業が持続可能で、そこにしっかりしたリーダーがいて、インフラ整備ができ、生産者の労力軽減ができ、楽しく農業ができるように変えたいと思います。
それは地域の生産振興から組み立てていくことです。"ヒト・モノ・カネ"の投資は惜しみませんので、大いに連帯して日本農業を一緒に発展させていきましょう。
※前半へのリンクはコチラ
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