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農協業務のデジタル化を急げ【コロナ対策に学ぶ(5)】2020年9月4日
農協業務のデジタル化を急げ
新型コロナウイルス感染症に関する緊急アンケートでは、「農協内業務のデジタル化への取り組みの進捗状況」について聞いた。結果は、「必要だと思うが今は考えていない」42.6%、「検討を始めたばかりで、これから取り組む」36.2%であった。合わると78.7%の農協で、農協の内部業務のデジタル化(電子化)ができていないことが分かった。
また、コロナ禍第2波・3波に対する長期化への備えでは、「組織・事業のあり方、仕組み・進め方を見直す必要がある」が71.7%と、多くの農協が認識している。
デジタル化の後進国
コロナ過でデジタル化の必要性を指摘されているのは、農協だけではない。日本のデジタル化が、「世界でも相当に遅れている」ことが判明している。それは、(1)新型コロナウイルス感染症緊急経済対策での全国民1人10万円給付でオンライン申請を受け付けない自治体も現れたこと、(2)保健所での感染者数の報告をFAXでやりとりしている事など、わが国では想像以上にデジタル化が遅れている。
一方、3年連続EU内でもっともデジタル化が進んでいる国に選ばれたデンマークでは、日本のマイナンバーカードにあたるCPRナンバーは人が生まれてすぐ付与され、銀行口座開設、免許取得、クレジットカード作成、病院診察、図書館利用、交通系ICカード購入、携帯電話契約等、個人を特定するサービスを受けるときには必ずCPRナンバーカードの提示を求められるという。
その結果、デンマークでは、児童手当等が申請しなくても3か月後に母親の口座に振り込まれる。2010年以降には国のあらゆる分野で電子政府システムの構築を始め、18年には「デジタル化のフロントランナーになる」との国家戦略を発表。CPRナンバーは同時にE-BOXというメールボックスが作られ、さまざまな通知がそこに届く。デンマークのインターネットユーザーは全国民の95.72%。住所変更も幼稚園や学校の入園・入学手続きも全てオンライン。郵便物はほぼゼロで、お知らせはすべてメールだというから、国を挙げてのデジタル化に驚く。
全国的な運営の仕組みを
今回の調査でも、農協からFAXで報告してもらったため、膨大な作業が必要となった。まさに、農協でのデジタル化の遅れを証明した結果となった。
また、アンケート調査での「コロナ禍から得た教訓」「コロナ禍で考えさせられた農協の役割」では、(1)組織・事業の在り方・仕組みで必ず必要となるデジタル化の早期構築、(2)今回はさまざまな事業の分野でデジタル化の遅れを認識した、(3)急速なデジタル化が進むと考えられることから農協においてもデジタル化を進めていくべきである、(4)今まで当然であった対面での対応や来店方式の営業を見直すチャンスとなる、(5)ウェブ会議やキャッシュレス決済等と農協も検討すべき点が多くあることに改めて気づいた、(6)デジタル化で業務効率化して生み出された時間を対面での営業や出向く体制を進め、人と人の交流を強化することが必要などの回答があった。
ただし、こうした農協内業務のデジタル化は、個々の農協で実施すると多額のコスト・労力・時間・仕組みの無駄などが危惧されるので、全国の農協・全国連が参加する「全国的な組織・事業のあり方、仕組み・進め方」を検討して、「全国的な組織・事業デジタル化開発・運営機構」の立ち上げなど、全国的な「長期化への備え」が必要だと考える。また、デンマークのように「国家戦略としてのデジタル化」の実現が求められる。
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