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中国TPP参加意志の「深謀遠慮」――米国との貿易「新冷戦」は新局面【クローズアップ:TPPと中国】2020年12月9日

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年明け以降も米中対立が収まりそうにない。米国の政権移行のもたつきを尻目に、中国は次々と手を打ってくる。東アジア中心のメガFTAである地域的包括経済連携(RCEP)に続く、環太平洋連携協定(TPP)参加の検討を習近平主席自ら公言した。米国の揺さぶりとともに、中国の市場拡大に向けた本気度を示した。そこには習政権のドス黒い「深謀遠慮」が潜む。

天安門

韓国にも波及の動き

中国の「深謀遠慮」を探る前に、新たな関連ニュースが飛び込んできた。韓国の文在寅大統領が8日、「TPP参加も検討していく」と初めて明らかにした。中国の習主席の前向き発言に触発されたものと受け止められている。韓国としては、地域的な広域経済連携(RCEP)合意に続くもので、激化する米中対立の貿易リスク軽減を念頭に置いた。今後の具体的な動きに注目が集まる。

台湾封じ込めへ牽制球

「鬼の居ぬ間に」と言うことかもしれない。米国の存在感が希薄になる中で、中国は相次ぎ「次の手」を打っている。もしかすると、今後の中国問題でキーワードになるのは香港と台湾が大きく絡んでくる。

香港は毎週のようにニュースで報じられるが、民主派弾圧は収まるところを知らない。海外でも著名な活動家を拘束することは、中国の方針の下でしか香港の自由はあり得ないことを国内外に示すことにつながる。あまりの香港の自由抑圧は国際的な反発を招く。そこは織り込み済みだろう。「香港は中国の国内問題」と繰りかえすが、活動家の亡命が相次ぐ様相は中国にとって好都合だ。米国が新政権となって中国の香港問題に関わるにはまだ時間がかかる。その間に、一定の勝負をつけてしまう作戦だろう。習近平政権にとって共産党一党支配を揺るがす自由化、民主化要求などあってはならない問題だからだ。

さて、突然の習主席自らのTPP参加の検討表明の〈真意〉について。習主席は11月20日、21の国・地域によるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にオンラインで出席しTPP11の参加を「積極的に考える」と述べた。習氏がTPP参加検討を明らかにするのは初めて。その5日前、15日にはメガFTAのRCEPの大筋合意をまとめ上げたばかり。改めてトップの市場開放姿勢に驚きと疑心暗鬼の見方が広がっている。TPPは自由化度が極めて高く、国有企業などの制限など中国の経済政策の基本に関わる問題をとてもクリアできないとの見方が一般的だからだ。国立大学の受験を目指し、全国共通試験で基準の点数を全く達していないようなものだ。つまり、今のままでは中国はとてもTPPに入る水準に達していない。

ではなぜ今言い出したのか。ポイントはAPECの場というのに注目したい。この国際会議は台湾が出席できる数少ない場だ。ハイテク産業が柱の台湾はかねてからTPP参加を望んでいる。台湾代表がいる目の前でTPPの3文字をあえて唱え台湾の加盟意欲を萎(な)えさせ、台湾加盟に理解を示す関係国を牽制(けんせい)したのではないか。例えば国連の世界保健機関(WHO)。新型コロナウイルス対応で台湾は効果的な防疫を徹底し世界的な注目を集めた。だが中国はWHO総会への台湾の出席を徹底的に妨害した。もし、中国がTPP参加となれば、台湾の加盟の芽は摘まれる。国際舞台からの台湾の徹底的な締め出しと孤立化は、習政権の基本戦略だ。

米国の〈間隙〉突く戦狼外交

米国の政権はトランプからバイデンへ。この流れを中国はどう見ているのか。トランプと習は、当初の友好ムードから一転し後半は激しい対立を繰り広げた。トランプは自らを「タリフマン」、すなわち関税男を称し報復関税を乱発した。国際貿易の流れは、関税削減で自由貿易を進めることこそが世界経済全体にとってプラスに働くとしていた。その潮流に真っ向から反対する形で、相手国の市場を無理矢理こじ開けるための〈脅し〉を押し通した。通商ルールの番人世界貿易機関(WTO)の警告などは無視だ。こんなことが強行できる国は地球上で米国以外にあり得ない。トランプの自国主義は、表面上は米国有利と見えたが、グローバル経済の元では回り回って米国の経済にも打撃を与えてくる。
世界が米国の同盟国も含め、対トランプで右往左往している間に中国は次々と手を打つ。つまりは暴走トランプ米国とは別の道を明らかにした。孤立無援ともなった毛沢東時代のスローガン「自力更生」を習がしきりに唱えだした。14億という世界一の巨大人口で内需を喚起しつつ、米国以外のサプライチェーンを形成する方向だ。米国の〈間隙〉を突きながら、新型コロナウイルスの逆境を逆手に、マスク外交なども繰り広げた。

一方で、世界が中国への依存度を強める中で〈戦狼外交〉で牙をむき始めた。〈せんろう〉と読む〈戦狼〉とは中国版ランボーの人気番組で、五星紅旗をはためかせ敵を次々と撃破していくアクションドラマ。戦狼さながらに攻撃的な外交を進める。典型は対豪州への対応だ。中国のやり方に異を唱えると牛肉、大麦に輸入制限、追加関税などを行った。〈戦狼通商〉と言った方が正確かもしれない。脅しと貿易がセットで相手に譲歩を迫る手法だ。TPP参加云々以前のルール無視の姿勢こそ問われなければならないだろう。

バイデンに警戒心

中国にとってトランプでもバイデンでもやっかいな相手であることに変わりはないだろう。いずれも中国警戒論を説く。トランプ路線はある意味でわかりやすい。全てが自分の支持者向け、人気取りに行き着く場当たり政策だからだ。報復関税を振りかざして脅しながら、相手国に穀物やその他の選挙地盤の要求するものを買わせようとする。その意味では、トウモロコシ、大豆などをある程度購入すればいったんは収まる。ただ、突然、他の要求も叫び出す予測不能なところは閉口しただろうが。一方でイデオロギー対立とは違う。つまりは対立の根っこは浅い。

一方で1月20日の就任式を終え民主党バイデン政権に代わればどうなるのか。伝統的な政策展開に回帰するとの見方が強い。表向きは自由と民主主義を掲げ、内実は自国主義の通商政策を仕掛けてくるやり方だ。安全保障面ではより欧州、日豪など同盟国との協調路線を求めてくる。中国にとって最も嫌うのは民主化要求だ。人権外交を掲げるバイデン民主党はそれを主張していくはずだ。その前にまずは、香港を中国の手中に完全に収める。習政権のそんな戦略が透けて見える。

包囲網打破へ日本接近

TPPは対中包囲網の側面もある。元々シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの環太平洋(パシフィック)の貿易立国4カ国(P4)で進めてていたに過ぎない通商協定をオバマ前大統領が米国を含めたメガFTAに格上げした。経済進出を加速する中国に対抗し新たな貿易ルールを目指した。だが「自国第一」で当選したトランプ大統領は就任と同時に公約通りTPPから離脱し、米国抜きのTPP11で協定が発効した。中国が参加検討を表明したのは米国不在という側面が大きい。米国がいない協定はRCEPと同じ。世界2位の経済力の地位を生かし主導権を握る作戦だ。RCEPの今後、協定の内容を詰める段階で日中の争いが表面化するだろう。

もう一つ。コロナ禍で世界から孤立した中国は日本へ秋波を送る。先の王毅外相の訪日はその伏線だ。日米関係に何とかくさびを打ち対中包囲網のほころびを誘う。背景には、コロナ禍でも独裁的な国家資本主義でいち早く景気回復を見せつつある強大な経済力の存在がある日本にとっても対中関係改善は経済面を考えればプラス。TPP参加表明を糸口にトップレベルの日中経済対話も出来る。そんな狙いもあるだろう。

TPP「黒船」で国内改革

習発言の真の狙いは国内向きとの見方も強い。東洋学園大学の朱建栄教授は6日付の日本農業新聞へのインタビューで「外圧を利用し改革を強行するのが狙い」と分析した。朱氏はほぼ中国政府のスポークスマンとみられる人物で、米中関係でも楽観論に終始し、発言は割り引いて考える必要がある。バイデン新政権での新冷戦の可能性も「ない」と断言しているが、イデオロギー対立ばかりでない貿易ルール、関税、知的財産権などが絡み合う「複合新冷戦」は十分あり得ると見た方がいい。米中対立は米新政権で〈新局面〉に入る。

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