TPP交渉参加にはあくまで反対 JA全中会長が首相、農相に申し入れ2013年3月1日
JA全中の萬歳章会長らJAグループトップは3月1日、安倍首相、林農相と自民、公明両党に前日に決めた「TPP交渉参加におけるJAグループの考え方に対する申し入れ」書を渡し、改めて交渉参加反対を訴えた。
申し入れ文書で強調しているのは、日米共同声明は「TPPの特徴である『聖域なき関税撤廃』を前提にしたものとしか理解できない」こと、と「重要品目の除外が担保されていない」こと。文書では「こうしたわれわれの認識と『聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった』という認識では、明らかに異なっている」とした。
1日夕に林農相に要請した萬歳章会長は「昨日、緊急理事会と全国会長会議を開催し、日米首脳会談の共同声明の意見をいただいた。まさに日本全国の会長から、あの内容では不安が消えないという思いが表明された。再度、JAグループとして考え方を整理した。ご理解を」と伝えた。
これに対して林農相は火曜日の閣議で安倍首相に対して「農産物にセンシティビティがあるとしたことは一定の評価をします」と伝えたうえで、「他方でこの問題は政治的に非常にセンシティブ、くれぐれも慎重に丁寧にやっていただきたいということと、とくに農業界は政権交代にあたって大きな原動力になっていただいているから、やはり公約との関係で何か裏切られた、みたいなことにならないようにしていただきたいということを申し上げた」と話した。
また「仮に交渉参加するという表明をする場合でも、農業者のみなさんが、中長期的にいろいろなことを考えられるとき重要品目がきちんと守れるという安心感があって、これをやるんだということがいちばん大事になると思うと申し上げ、たとえばそれを表明していだくことが大事なことだとこの立場としてはお願いしたいという趣旨のことは申し上げた。総理もそれは重々分かっていますということだった」と話した。
さらに「ここからは推測だが、もう今週中にも、という報道があったが、もう少し時間をかけて丁寧にということで、党内のみなさんとも総理自らお会いになることも含め、そのプロセスは守っていただけると、私としては引き続きその立場でしっかりと臨んでいきたい。今後とも緊密に連絡をとらしていただきたい」と萬歳会長らに話した。
要請後、会長は記者団に対して「われわれは過激なTPPには断固反対というのは2年半にわたってやってきた。それは変わらない。共同声明のなかに(重要品目が)除外できるかのごとくの話があったが確約できておりません。まさにやるかやらないか(=参加するかしないか)の話。条件闘争に入っているものではない」と強調した。
要請には村上光雄・JA全中副会長、安田舜一郎・JA共済連会長、成清一臣・JA全農理事長、河野良雄・農林中央金庫理事長、冨士重夫・JA全中専務理事、馬場利彦・JA全中参事も出席した。
(写真)
林農相に「TPP交渉参加におけるJAグループの考え方に対する申し入れ」書を手渡す萬歳全中会長
TPP交渉参加におけるJAグループの考え方に関する申し入れ
○2月28日に本会理事会およびJA都道府県・全国機関会長会議を急きょ開催し、下記の考え方を改めて確認した。よって、政府は、真摯にこれを受け止めるよう強く申し入れる。
◆ ◆
我々としては、共同声明は、TPPの特徴である「聖域なき関税撤廃」を前提にしたものとしか理解できない。また、重要品目の除外が担保されていない。こうした我々の認識と、「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないことが明確になった」という認識では、明らかに異なっている。
政府が、「聖域なき関税撤廃が前提ではない」という認識に立つのであれば、米、麦、牛肉、乳製品、甘味資源作物など我が国農業における重要品目の除外を必ず実現しなければならない。
TPP交渉は、農業問題だけではなく、ISD、食の安全・安心、医療、保険など、国のかたちを変える重要な内容を含むものであり、政権公約としての6項目すべてが遵守されない限り、国民の信頼を得ることにならない。
政府は、我々の主張や自民党の方針を踏まえた方針を明確に確立しなければならない。こうした対応や進め方をしなければ、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対する」など6項目の政権公約を遵守したことにならない。以上
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