人口減少を支える 新しい社会保障を 社人研がセミナー2015年12月16日
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は12月15日、東京都文京区の東京大学で厚生政策セミナーを開き、人口の減少と社会保障の在り方について講演とパネル討論を行った。総体として日本の人口減少は大きいが、都市・農村によってその進行状況には違いがあり、それに沿ったさまざまな対処方法を探った。
基調講演で社人研の森田朗所長は、日本の人口の構成の変化を、戦後期を「人口ボーナス」(人口構成の変化が経済にプラスに作用)としラッキーな時としてとらえ、今はマイナスに作用する「人口オーナス」の状態にあると分析。
また、日本人口の歴史的推移をみると、19世紀末から今日までが異常な時期であり、今後急激に減少し、22世紀には元の推移に戻ると指摘し、「それにあわせて発想を切り変え、社会・経済の在り方を模索するべきだ」と話した。
地方の人口減少に対する地域の在り方としては、「元気な高齢者が生涯をすごす拠点をどうつくるか。全国レベルで人口配置を考える中で、きめ細かい計画が必要だ」と指摘した。
現地報告として、島根県中山間地域研センターの藤山浩・研究統括監は、島根県の市町村の取り組みから、地方創生の「処方箋」を紹介した。同氏は島根県の中山間地域227エリア(小学校区・公民館区)、平均規模1370人、504世帯をもとにカルテを作成。その結果、33.4%で4歳以下の子どもが増加し、維持を含めると4割強だった。
それも、29歳以下の人の増減は、最寄りの市役所や役場までの距離と関係なかった。このことから同氏は、最近の〝田園回帰〟は、単に農村ではなく、「田舎の田舎」へ定住を望む人が増えていると指摘し、暮らしに関する価値観の変化をその背景に挙げる。
こうした実態を分析し、「人口の1%を取り戻すことで、地域を維持できる」と指摘。そのための
シミュレーションシステムを開発した。必要なデータを打ち込むと、エリアに必要な年齢層と数が算出できる「処方箋」だ。
地方における急激な人口減少は、高齢者福祉の在り方をも問いかける。明治大学の園田眞理子教授は、高い高齢率と介護保険総給付費の大きい奈良県十津川村が、介護保険総給付費の3割を村外のサービス利用に支出していることに対して、「この支出を村内に留める仕組みが必要」と指摘する。
その上で、半径3~5kmの日常生活県内で小規模多機能型居宅介護拠点を多くつくることを提案。つまり施設入所ではなく、身近な地域での持続的な暮らしを保障することが大事だという。
セミナーではこのほか、同研究所の小池司朗・人口構造研究部室長、川越雅弘・社会保障基礎理論研究部長が、地域人口研究の方向、市町村の地域マネジメントの在り方で報告。米国カンサス州立大学のラースロー・クルチャー教授が米国、ヨーロッパ、日本の人口減少を比較・分析した。
なお、このセミナーは社人研が毎年、テーマを定めて開いているもので、今回で20回目。
(写真)地域人口の減少による影響で意見交換する社人研のセミナー
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