【TPP】全品目 関税撤廃対象-市民団体が協定分析2016年2月9日
2月4日の署名式によって確定したTPP協定文には全面的な関税撤廃に進んでいく仕組みが盛り込まれていることが分かった。市民団体が分析し、その問題点を報告する会合を2月5日に東京都内で開いた。
TPP協定の第2章が農産物市場アクセス関係の文書になっている。市民団体による「TPP協定の全体像と問題点」ではテキスト分析チームの岡崎衆史・農民連国際部副部長がこの章を分析している。
TPP合意による日本の関税撤廃率は95.1%。日本が結んだ貿易協定で過去最高の関税撤廃率だった日豪EPAの89%を上回った。
それでもTPP合意について安倍総理は「米などの重要品目については、関税撤廃の例外を確保し厳しい交渉のなかで国益にかなう最善の結果を得ることができた」と国会で答弁している。
しかし、分析によってTPP協定には「除外」規定は存在しないことが分かった。
日豪EPAでは関税の撤廃や削減の対象にしない「除外」と、扱いを将来に先送りする「再協議」という規定がある。「除外」は米、落花生油、トウモロコシ油などで、食糧用小麦、バター、脱脂粉乳などが「再協議」の対象とされている。その他、日本が結んだEPAにもこの規定がある。 米国が結んだFTAにも除外規定はある。米韓FTAでは韓国の米と米調製品が「除外」された。 WTO(世界貿易機関)協定でも第20条で農業の多面的機能など「非貿易的関心事項」に配慮して、農業保護政策や関税などを削減するよう義務づけている。
しかし、TPP協定では第2・4条で「関税撤廃」を明記し「いずれの締約国も...現行の関税を引き上げ、または新たな関税を採用してはならない」、「各締約国は...漸進的に関税を撤廃する」とだけ記されている。除外や再協議についての規定はない。
岡崎氏によると米国USTRの「貿易のための農業諮問委員会」の報告ではTPP協定文について昨年12月「われわれはどの物品も除外されなかったことに留意し、TPPの適用範囲を称賛する」としているという。
すなわち、TPPは全品目を関税撤廃の対象とするものであって、そもそもTPPの思想には「除外」という考え自体が除外されているのではないか。それを安倍総理は「例外」と言い換えて国会決議を守ったと主張しているに過ぎないといえる。
また、発効後に関税撤廃時期の繰り上げについての協議が協定文に明記され(第2・4条3項)、日本は付属書(付属書2-D)で発行7年後の見直しが義務づけられている。それも豪州、カナダ、チリ、NZ、米国と5か国からの要請で行われることになっている。岡崎氏によると農産物の関税撤廃率が日本についで低いカナダ(94.1%)も含め「日本のように複数国の見直し要請に応じることを約束している国は他に存在しない」という。
その見直し協議も関税、関税割当、セーフガードまで含まれる全面的なものになる。当然、見直し協議で日本はさらなる農産物の関税撤廃を迫られることになり、岡崎氏は「TPPは、日本を後戻りできない関税撤廃への道に進ませる」と警告した。
(写真)2月5日に行われたTPP協定の全体像と問題点の報告会
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