「受託拒否の禁止」維持を-政府・与党で卸売市場法議論2017年11月9日
卸売市場法の改正をめぐり政府の規制改革推進会議と与党・自民党は11月に入り関係者からヒアリングを行い議論を本格化させた。それぞれの会合では立場によって改革の方向性に違いがあることも示され、公的な市場のあり方として、食料の安定供給と農業者の所得向上などに向け時間をかけた十分な検討が必要になっている。
◆生活支える卸売市場
11月1日には内閣府の規制改革推進会議農林WGと未来投資会議の合同会合が開かれ関係者からのヒアリングを行った。
卸会社の長野県連合青果(株)、堀雄一社長は市場の価格形成力がかつてより弱まり、指し値委託による相対取引が増加しており、今後は産地からの情報により先を見越した数量と需要を予測した価格形成が市場の機能として求められていることなどを指摘した。ただ、荷受け拒否ができないことが過剰時には卸にとって損失を被ることになっているとした。
(株)大田花きの磯村信夫社長は、誰もがいつでも量の多少に関わらず出荷できて、さらに全量が販売されることによって生産に専念にできることや、誰もが必要なだけ仕入れられるために小売業の寡占度が低く、それが消費者のメリットにもなっていることなどを説明した。また、消費者が生産者から毎日直接購入するコストもかからず、大量輸送が可能な市場は輸送コストも安いなど、「卸売市場があるからコストがかかり価格が高くなる」は間違いだと強調した。
そのうえで卸売業者自らが生産者の委託出荷品を受け入れることができる自由化や、早期代金決済機能の強化、需要量に合わせて供給量を変える需給調整機能などの改正点を指摘した。
名古屋市の仲卸、丸進青果(株)の西脇正導社長は生産者にとって現行の卸売市場は自由に出荷できるメリットがあるほか、卸、仲卸などさまざまな業態が市場を形成していることが調達や取引の手間とコストを省き「リスク分散」になっていることなどを強調した。
また、西脇氏は提出した資料で、卸売市場は農家の収入をより高くするシステムであり農家が安心して生産できる必要不可欠な存在と指摘し、加工商品の増加や、情報インフラの発達による市場外流通が増えてはいるものの、「しっかり活用され続けているのが卸売市場。卸売市場という『スタジアム』は必要で市場外を理由に市場も自由にするのは大変危険」、「農家のため国民のため、安心・安全な生鮮青果物の流通を維持することは必要不可欠」としている。
委員との意見交換では農家にとって受託拒否の禁止事項は残すべきとの主張が出た一方、商物一致の原則や、第3者販売禁止(卸から仲卸への販売に限定)については見直しを求める意見も出たという。内閣府の合同会合は引き続きヒアリングを行う。
◆自由化に多様な意見
自民党は11月6日の農林・食料戦略調査会・農林部会合同会議で関係者のヒアリングを行い、卸売市場法改正問題を主導していく方針で臨む。
(一社)全国中央市場青果卸売協会の川田一光会長は「卸売市場は残して市場のルールを変えていくと聞き安心した」と話し、物流効率化、コスト削減の観点から「第三者販売と商物分離は進めてもらいたい」と話した。
ただ、受託拒否の禁止、差別的取り扱いの禁止、早期の代金決済については「公的関与がある卸売市場としては引き続き行うべきだ」と強調した。
全国青果卸売市場協会の月田求仁敬会長も「卸売市場は残すと聞いて安心した」と述べ、多種多様な生産物を集荷し配送をしている卸売市場の機能を重視するよう求めた。
日本花き卸売市場協会の磯村信夫会長は第三者販売は実態として進んでいることから規制緩和を進めるべきで、また、「九州で荷を卸すことができるのに大田市場に持ってこなけばいけない」として商物分離も進めるよう求めた。磯村会長は受託拒否の禁止、差別的取り扱いの禁止、早期の代金決済以外は規制はなくすべきとの考えを示した。
生産者で意見を述べたのは農事組合法人ながさき南部生産組合会の近藤一海会長。宅配やネット通販等の集荷・分荷施設としての卸売市場の有効活用や、空車情報をオープンにして積載率向上による物流効率化を進めるべきなどの意見を述べた。
また、委託手数料の原資は生産者負担となっており、出荷奨励金や完納奨励金をなくして手数料率を引き下げれば所得向上につながると指摘したほか、価格形成や取引が歪められないよう優越的地位の濫用を監視すべきだとした。
なお、JAグループは11月9日の全中理事会で「卸売市場法の見直しにかかるJAグループの基本的考え方」を決め公表し政府・与党に働きかけていく。
(関連記事)
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